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【保存版】輸入高圧ガス設備の申請と検査手順を徹底解説

今回の記事では輸入高圧ガス設備、特定設備の申請と検査手順について解説します。

海外製の高圧ガス設備(塔、槽、熱交換器、ポンプ、バルブなど)を日本に輸入して使用する場合、「高圧ガス保安法」に基づく厳格な検査と手続きが必要です。

「海外の規格で作ったから大丈夫」とはならず、日本の法律(技術基準)に適合していることを証明しなければなりません。

特に「特定設備」と「高圧ガス設備」という区分の違いや、「誰が・いつ」申請するかによって、手順が複雑に分岐します。

今回の記事では、複雑な輸入検査プロセスを実務レベルで理解できるよう解説します。

設備区分の特定

手続きを始める前に、輸入しようとしている設備が、法律上「特定設備」と「高圧ガス設備」のどちらの区分に該当するかを確認する必要があります。

区分によって、申請の種類や検査の流れが全く異なります

特定設備

災害防止のため、特に厳重な検査(設計、材料、製造工程)が必要とされる設備です。(法第56条の3より)

対象: 塔、反応器、貯槽、熱交換器などの圧力容器

条件: 以下のいずれにも該当しない容器

  • 設計圧力() 内容積() のもの

  • 内容積 以下で、かつ設計圧力 未満のもの

  • ポンプ、圧縮機、蓄圧機、流量計等の容器

範囲: 本体だけでなく、マンホールやノズルの「第1継手(フランジ面等)」までが含まれます(スカートやレグなどの支持構造物も耐震計算の対象として含む)

特定設備検査合格証があれば、交付を受けた日から3年以内のものであれば、完成検査において当該特定設備に係る検査は免除されます。(法第20条の2より)

高圧ガス設備

特定設備以外の、高圧ガスを扱う設備全般が該当し、「一般高圧ガス保安規則」が適用されます。

ただし、製造する高圧ガスが液化石油ガスの場合は「液化石油ガス保安規則」が適用され、特に定められた大規模事業所では「コンビナート等保安規則」が適用されることに注意が必要です。

対象: ポンプ、圧縮機、弁(バルブ)、ストレーナ、および上記の特定設備の除外規定(など)に当てはまる小型容器など

高圧ガス保安協会(KHK)による試験を受けて成績証明書を取得すると、証明書に記載された試験実施日から3年以内のものであれば、設置後の都道府県による完成検査が「書類審査のみ」で済み、スムーズになります。

補足:高圧ガス設備の製造メーカーが経済産業大臣の認定を受け、「大臣認定試験者」として自ら製造した高圧ガス設備について試験を行い、試験成績書を都道府県知事等に提出する場合は、試験実施日から3年以内のものであれば、同様に完成検査を「書類審査のみ」で済ますことができます。

特定設備の輸入・審査手順

特定設備を輸入する場合、通常は「輸入の特例という制度を利用します。(法第56条の3より)

これは、適当と認められる設計図、材料の品質及び溶接部についての機械試験の成績を示す図書などを提出し、適合することが確認された場合、一部の試験項目を省略することができる制度です。

輸入の特例に必要な資料

a) 設計書(強度計算書及び耐震計算書等)
b) 構造図(全体図及び詳細図)
c) 溶接要領書、及び溶接施工方法確認試験記録書
d) 検査記録及び特定則に定める検査成績表に検査結果を記録したもの

なお、申請書は日本語で作成する必要があります。申請書に添付する書類は日本語以外でも認められますが、和訳したものも合わせて添付する必要があります。

2種類の申請パターン

輸入の特例を適用する場合、「誰が・いつ」申請するかで以下の2つのルートがあります。

パターンA:「輸入をしようとする者」が申請

申請者: 設備を使用する予定の日本国内事業者(または代理人)

タイミング: 製造開始前(輸入前)

パターンへの流れは以下の通りです。

パターンAの申請手順

  1. 申請 KHKによる設計検査

  2. 設計検査成績表の発行

  3. 海外で製造&第三者検査機関の立会い

  4. 輸入 検査記録の提出 合格証交付

設計段階でKHKの審査(設計検査)を受けるため、手戻りが少ないというメリットがあるため、こちらのパターンが推奨されます。

パターンB:「輸入をした者」が申請

申請者: すでに設備を輸入してしまった事業者

タイミング: 輸入後

こちらのパターンの場合、海外での製造時に、日本の基準(特定則)を満たす第三者機関の検査記録が完璧に残っていなければ合格できないため、非常にハイリスクとなります。

申請書に添付する書類

特定設備の申請書に添付する書類は以下の通りです。

申請書に添付する書類

(a) 検査希望年月日及び場所を記載した書面
(b) 内容積計算書
(c) 設計仕様書(設計温度・圧力、内容積、材質、放射線透過試験有無、溶接後熱処理の有無、など)
(d) 強度計算書
(e) 耐震計算書(耐震設計が適用される特定設備)
(f) 同等材料対比表(耐圧部分に同等材料(規格材料と化学的成分、機械的性質、試験方法などが近い材料)を使用する特定設備)
(g) 構造図
(h) 溶接要領書(WPS)
(i) 溶接施工方法確認試験記録書(PQR)

前項のパターンBの場合は、さらに第三者検査機関の中立性を示す資料や検査記録、検査成績表も必要となります。

上記の通り、申請時に求められる書類は膨大で、かつ海外メーカーから取り寄せる必要があるため、早めの準備が不可欠です。

審査の手順と具体的内容

KHKは以下の4段階で審査を行います。

審査の手順

① 設計の検査(書類審査)
② 材料・加工・溶接・構造の検査(記録確認)
③ 現品確認
④ 合格証の交付

設計の検査(書類審査)

強度計算書や図面が、日本の技術基準(特定則例示基準)に適合しているか確認します。

ASMEなどの海外規格で設計していても、日本国内の計算式(例示基準)で再計算し、安全率などが日本の基準を満たすか確認する必要があります。

材料・加工・溶接・構造の検査(記録確認)

海外で第三者検査機関(ASMEのAIAなど)が立ち会った記録を審査します。

以下の項目が必須です

検索区分 主な確認項目
材料 ミルシート(化学成分、機械的性質)、外観など
加工 切断、開先加工、鏡板の成形確認(厚さ、形状)など
溶接 溶接施工法(WPS/PQR)、開先合わせ、裏はつり、外観、非破壊試験(RT/UT/MT/PT)、機械試験、熱処理(PWHT)など
構造 寸法(真円度など)、耐圧試験気密試験

それぞれの確認項目においては、第三者機関の署名が必須です。

また、「耐圧試験」と「気密試験」は、第三者検査機関の立会いが必須であることに注意してください。

現品確認

輸入後、日本国内の設置場所などでKHK検査員が実物を確認します。確認項目は以下の通りです。

  • 機器番号(銘板)の照合

  • 輸送中の損傷有無

  • (必要な場合のみ)日本国内での気密試験

合格証の交付

すべてクリアすると、その設備専用の「特定設備検査合格証」が発行されます。

 高圧ガス設備の輸入・審査手順

特定設備以外の機器(ポンプ、圧縮機、バルブなど)の場合、「検査」ではなく「高圧ガス設備試験」という名称になります。

法律上、ユーザー(設備の使用者)は都道府県による「完成検査」を受ける義務があります。しかし、現場でポンプやバルブを分解して強度を確認するのは困難です。

そこで、事前にKHKの試験を受けて「成績証明書」を取得しておけば、完成検査時の試験が免除(書類確認のみ)となり、スムーズに設備を使用開始できます

試験の実施方法

高圧ガス設備試験は、高圧ガス設備が例示基準に適合していることを確認するために、申請に基づいて協会が実施する「高圧ガス設備の強度の確認」「耐圧試験」「気密試験」のことをいいます。

高圧ガス設備の強度確認:

高圧ガス設備の強度確認では、一般則例示基準に基づいて、高圧ガス設備の種類等に応じて以下のような強度の確認方法が定められています。

  • 使用材料が規格に適合すること
  • 板厚・溶接強度・許容応力が規則に適合すること
  • 温度・圧力条件に対して十分な安全率を確保していること
  • フランジ・ねじ接合は保安上必要な強度を有すること

ただし、規定が適用できないものについては、常用の圧力(設計圧力)の4倍の圧力をかける加圧試験(4倍耐圧)や抵抗線ひずみ計による応力の測定を行う必要があります。

耐圧試験:

設計圧力の1.5倍(水圧)または1.25倍(気圧)で漏れや変形がないか確認します。

耐圧試験についてはこちらの記事を合わせて参照ください。

気密試験:

空気や窒素など、危険性の小さい気体を使用して、常用の圧力(設計圧力)以上で漏れがないか確認します。

高圧ガス設備試験の立会について

高圧ガス設備試験の立会では以下の2つのパターンがあります。

パターンA:日本国内でKHKが立ち会う 

KHKは、申請された輸入高圧ガス設備が一般則例示基準に適合していることを確認するために、書類の確認及び立会による試験により、を行います。

パターンB:海外で第三者検査機関が立ち会う

特定設備と同様に、海外での製造時に第三者検査機関が立会い、その記録を提出してKHKが審査する方法です。

第三者検査機関が立ち会った試験の結果が、一般例示基準に適合していると判断された場合は、KHKによる立会試験を省略することができます。

申請書に添付する書類

高圧ガス設備の申請書に添付する書類は以下の通りです。

申請書に添付する書類

(a) 強度計算書
(b) 高圧ガス設備加圧試験/応力測定試験要領書(肉厚の算定式が適用できない形状がある場合)
(c) 構造図
(d) 同等材料対比表(特定則例示基準に定める同等材料を使用する場合)
(e) WPS(耐圧部分に溶接を施工する高圧ガス設備)
(f) PQR(耐圧部分に溶接を施工する高圧ガス設備)
(g) 気体耐圧試験の理由書(気体による耐圧試験を行う場合)
(h) 取扱説明書(ねじ継手で毒性ガス、特殊高圧ガス、圧縮水素スタンドに使用されるものなど)
(i) 高圧ガス設備試験申請書内容(原則として3つ以上の機器が組み合わされた複合機器)
(j) フローシート及び全体組立図(複合機器について)
(k) 高圧ガス設備試験申請書管類明細及び配管図
(l)  第三者検査機関等の中立性が担保されていること等を証明する資料
(m) 検査記録(材料試験成績書、加圧試験/応力試験記録など)

なお、前項のパターンBの場合(海外で第三者検査機関が立ち会う場合)は耐圧試験、気密試験記録も必要となります。

特定設備同様、申請時に求められる書類は膨大で、かつ海外メーカーから取り寄せる必要があるため、早めの準備が不可欠です。

試験の手順と具体的内容

高圧ガス設備の試験の手順は以下の通りです。

試験の手順

① 書類の確認
② 強度の確認、耐圧試験及び気密試験
③ 成績証明書の発行

書類の確認

KHKは、申請書及び申請書に添付する書類を用いて、全ての書類が確認されていること、それぞれの書類の記載内容に相違が無いこと、材質、構造や肉厚が一般則の例示基準に適合していることを確認します

強度の確認、耐圧試験及び気密試験

申請された高圧ガス設備が一般則例示基準に適合していると判断した場合は、申請書に記載の検査場所で、「強度の確認」「耐圧試験」「気密試験」をKHK立会の下で実施します。

なお、前項のパターンBの場合(海外で第三者検査機関が立ち会う場合)、申請書に記載した検査場所の現品確認を行います。現品確認での確認例は以下の通りです。

・ 現品の機器番号等と申請書、試験記録等に記載された機器番号等が一致していること。
・ 現品と構造図に相違がないこと。
・ 輸送中に生じた衝撃による打痕等がないこと。

成績証明書の発行

試験に合格すると、KHKから「高圧ガス設備試験成績証明書」が発行されます。 これをユーザーに渡すことで、ユーザーは都道府県の完成検査をスムーズにパスできます。

まとめ:スムーズな輸入のために

輸入高圧ガス設備の検査は、日本の高い安全基準をクリアするための重要なプロセスです。

  • 「特定設備」か「高圧ガス設備」かを正しく区分する。

  • 「特定設備」なら、海外製造中に第三者検査機関の立会いが必須。

  • 「高圧ガス設備」なら、KHKの試験を受けて成績証明書をもらうのが一般的。

  • 日本の基準(強度計算など)に適合しているか、設計段階でしっかり確認する。

手続きを間違えると、「輸入したのに日本で使えない」「検査のやり直しで莫大なコストがかかる」という事態になりかねません。

不安な点は、計画段階で早めに高圧ガス保安協会(KHK)に相談することをおすすめします。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 技術情報を200記事以上執筆、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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