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耐圧試験圧力を設計圧力の1.5倍とするのは間違い?各規格の試験圧力を解説

こんにちは。Toshi@プラントエンジニアのおどりばです。

今回の記事では配管、機器の耐圧試験圧力の決定方法について解説します。

耐圧試験は水圧試験気圧試験かのどちらかで行われ、一般的には以下の試験圧力で実施することになっています。

水圧試験の場合;

$$P_t = P_d\times1.5$$

気圧試験の場合;

$$P_t = P_d\times1.25$$

Pt:試験圧力
Pd:設計圧力(常用の圧力)

※規格や基準によっては常用の圧力を基準として試験圧力を計算するような表記がありますが、これは常用の圧力=設計圧力という考え方のためです。これは、基となる法規の記載があいまいで、しばしば常用の圧力=設計圧力と解釈されるためなので、どちらかが間違っていて、どちらかが正しい、というものではありません。詳しくはこちらの記事を参照ください。

しかし、実際には耐圧試験圧力は規格によって異なったり材質の許容応力の低下を考慮することもあるので、上記の計算式だけを用いるのは危険です。

そのため、耐圧試験をしようとしている機器、配管が何の規格に基づいて設計されているか、十分確認する必要があります。

機器や配管の設計に関わる方なら必見の記事となっています。

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各規格における耐圧試験圧力

機器(圧力容器)や配管設計でよく使用する規格で、耐圧試験について言及されているものは以下の通りです。

耐圧試験について言及されている規格

・JIS B 8265
・JIS B 8266
・ASME Section VIII div.1
・ASME Section VIII div.2
・ASME 31.3
・ASME 31.1

JIS B 8265 圧力容器の構造−一般事項

もともとJIS B 8270 圧力容器(基盤規格)だったものですが、ASME規格(アメリカ機械学会の圧力容器に関する規格)と整合をとるため、B 8265とB 8266に分けられました。

B 8265はASME規格の中ではASME Section VIII div.1相当にあたる規格です。(圧力区分は異なりますが)

JIS B 8265は設計圧力30MPa未満の圧力容器についての規定です。

耐圧試験圧力は以下の通りです。

水圧試験の場合;

$$P_t = P_d\times1.5\times\frac{σ_t}{σ_a}$$

気圧試験の場合;

$$P_t = P_d\times1.25\times\frac{σ_t}{σ_a}$$

Pt:試験圧力
Pd:設計圧力(常用の圧力)
σa:設計温度における材料の許容応力
σt:試験温度における材料の許容応力

許容応力に関する項が追加されています。こちらに関しては後述します。

JIS B 8266 圧力容器の構造−特定規格

B 8266はASME codeの中ではASME Section VIII div.2相当にあたる規格です。(圧力区分は異なりますが)

JIS B 8266は設計圧力100MPa未満の圧力容器についての規定です。

耐圧試験圧力は以下の通りです。

水圧試験の場合;

$$P_t = P_d\times1.25\times\frac{σ_t}{σ_a}$$

気圧試験の場合;

$$P_t = P_d\times1.15\times\frac{σ_t}{σ_a}$$

Pt:試験圧力
Pd:設計圧力(常用の圧力)
σa:設計温度における材料の許容応力
σt:試験温度における材料の許容応力

設計圧力の係数はJIS B 8265と異なります。また、こちらも許容応力に関する項が追加されています。(後述)



ASME Section VIII div.1

ASME (American Society of Mechanical Engineers/アメリカ機械学会)の中で圧力容器に関する規格がASME Section VIIIですが、主にdiv.1とdiv.2に分けられます。

最もよく使用されるのはdiv.1の方で、div.2とよく似ているのですが、細かいところで違いがあり、耐圧試験に関する規定も異なります。

JISだとJIS B 8265に相当する規格です。

耐圧試験圧力は以下の通りです。(ASME Section VIII div.1 UG-99より)

水圧試験の場合;

$$P_t = MAWP\times1.3\times\frac{S_t}{S}$$

気圧試験の場合;

$$P_t = MAWP\times1.11\times\frac{S_t}{S}$$

Pt:試験圧力
MAWP:Maximum Allowable Working Pressure(設計圧力)
S:設計温度における材料の許容応力
St:試験温度における材料の許容応力

設計圧力ではなく、MAWPという表現が出てきましたが、圧力容器の設計ではMAWP=設計圧力とすることも多いので、そのまま設計圧力と読み替えても問題ありません。

MAWPについては、こちらの記事を参照ください。

また、係数がこれまで計算式とは異なっていると思います。さらに、文字は違いますが、許容応力に関する項も登場しています。

 

ASME Section VIII div.2

JISだとJIS B 8266に相当する規格です。

耐圧試験圧力は以下の通りです。(ASME Section VIII div.2 8.2.1及び8.3.1より)

水圧試験の場合;

$$P_t = MAWP\times1.43$$

or

$$P_t = MAWP\times1.25\times\frac{S_t}{S}$$

の大きい方を採用

気圧試験の場合;

$$P_t = MAWP\times1.15\times\frac{S_t}{S}$$

Pt:試験圧力
MAWP:Maximum Allowable Working Pressure(設計圧力)
S:設計温度における材料の許容応力
St:試験温度における材料の許容応力

MAWPについてはdiv.1と同じ考え方です。

登場する係数がこれまでのものとは別の数字になっていることが分かります。

ASME 31.3

ASME規格の中でも配管(一般プロセス配管)に関する規格です。海外プラントなら最もよく使われる規格です。

耐圧試験圧力は以下の通りです。(ASME 31.3 345.2及び345.4より)

水圧試験の場合;

$$P_t = P_d\times1.5\times\frac{S_t}{S}$$

気圧試験の場合;

$$P_t = P_d\times1.1$$

Pt:試験圧力
Pd:設計圧力
S:設計温度における材料の許容応力
St:試験温度における材料の許容応力

登場する係数がこれまでのものとは別の数字になっていることが分かります。

また、気密試験の場合は許容応力は考慮なれないことに特徴があります。

ASME 31.1

ASME規格の中でも配管(ボイラ配管)に関する規格です。海外プラントにおけるボイラ回りで使用される規格です。

耐圧試験圧力は以下の通りです。(ASME 31.1 137.4及び137.5より)

水圧試験の場合;

$$P_t = P_d\times1.5$$

気圧試験の場合;

$$P_t = P_d\times1.1$$

Pt:試験圧力
Pd:設計圧力
S:設計温度における材料の許容応力
St:試験温度における材料の許容応力

登場する係数はASME31.3と同じですが、水圧試験でも許容応力が考慮されないことに特徴があります。



許容応力について

上記で後述するとしていた許容応力の項について、こちらで解説します。

一般的に金属材料は温度が上がると許容応力は低下します。そのため、設計温度が高い機器、配管については、許容応力が低下する分を考慮して耐圧試験をしなければなりません。

理想論を言えば、設計温度の状態で耐圧試験をすれば良いですが、現実的にそれは不可能なので、耐圧試験時の温度(常温)における許容応力と設計温度における許容応力との比を取り、それを乗じることで対応する、という考え方です。

例:炭素鋼(Carbon steel)の許容応力

最も一般的な材質である炭素鋼についての許容応力を記載します。(ASME 31.3 Table A-1より抜粋)

なお、規格はASTM規格のA53(JIS規格のSGP)とします。

 

炭素鋼の場合、200℃程度まではほとんど許容応力は変わりませんが、300℃を超えたあたりから急激に低下することが分かります。

つまり、設計温度が300℃程度の場合は、許容応力低下による耐圧試験圧力への影響が大きくなることを意味します

計算例

計算例として配管の耐圧試験圧力について計算します。

前提条件

・水圧試験とする。
・材質は炭素鋼とする。
・設計圧力/設計温度=3.5 MPag / 260℃
・配管の規格はASME 31.3とする。
・試験温度は常温(=38℃とする)

試験温度における許容応力Stは

$$S_t = 138.1 $$

設計温度における許容応力Sは

$$S = 131.2 $$

ゆえにSt/Sは

$$\frac{S_t}{S} = 1.05 $$

従って、耐圧試験圧力Ptは

$$P_t = 3.5\times1.5\times1.05 = 5.6 $$

となる。(小数第二桁切り上げ)

許容応力を考慮しなければPt = 5.3 MPagとなるので、許容応力が試験圧力に影響を与えることが分かると思います。

なお、今回の計算例では簡単のために表に記載のある温度を設計温度としましたが、実際には表に記載の無い温度が設計温度になることがほとんどです。

その場合は、この許容応力の表を線形補間してそれぞれのプロット間を直線で近似することで、任意の温度における許容応力を求めれば問題ありません。



まとめ

プラントの機器、配管設計で良く用いられる以下の規格について、耐圧試験圧力の説明、許容応力について解説しました。

見出し(全角15文字)

・JIS B 8265
・JIS B 8266
・ASME Section VIII div.1
・ASME Section VIII div.2
・ASME 31.3
・ASME 31.1

設計温度が低ければ、一律、水圧で設計圧力の1.5倍、気圧で設計圧力の1.25倍としても問題ないと思いますが、規格に記載されている耐圧試験圧力の計算をよく見ると、許容応力を考慮する必要があることが分かります。そのため、設計温度次第では問題が発生することもあるかもしれません。

設計圧力や設計温度についてはこちらの記事でも解説しています。

機器、配管設計に関わりのある方の役に立てれば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

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  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在100記事達成。月1.6万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有/投資による資産形成もブログで報告。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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