今回はプラントエンジニアが海外出張に行く時、必携となる持ち物、準備について解説します。
海外プラントの建設プロジェクトに関わると、建設、試運転の対応で、エンジニアの海外出張は避けて通ることができません。
仕事で使うものから、日用品まで、詳細に解説していますので、プラントエンジニアリング業界、特に海外プラントを多く手掛けている会社への就職、転職に興味のある方は必見です。
出張時の業務内容については、こちらの記事も参照ください。
合わせて読みたい
・【プラント設計基礎①】基本設計条項(Design Basis)
・プロセスエンジニアって何をする仕事?
・横型タンクの内容量の計算方法の解説~タンクテーブルの作成~
・縦型タンクの内容量の計算方法、タンクテーブルの作成方法
・【配管】プラント建設後の配管はどうやって洗浄する?配管洗浄方法の解説
・【配管】ラインチェックとは?プラント配管施工時の確認項目について解説
・プレコミッショニングとは?プラント試運転準備作業について解説
・化学工学ってプラントエンジニアリングのどんな場面で使われる?
・化学メーカーとプラントエンジニアリング会社はどう違う?【就職・転職】
・【転職】(前編)化学メーカーからプラントエンジニアリング会社への転職で有利な点とは?
・【転職】(後編)化学メーカーからプラントエンジニアリング会社へ転職する時の留意点とは?
・プラントエンジニアが投資するべき3つの理由
・高給激務?プラントエンジニアが海外出張でお金が貯まる理由
・【副業】プラントエンジニアにお勧めする副業3選
・【副業】モニターせどりの具体的な手順の解説【プラントエンジニアお勧め】
前提条件
海外出張と言っても、国や場所によって環境は様々ですが、この記事では、プラント建設地の周りは何もなく、砂漠のような土地(寒暖差大)、宿泊場所はプラント併設の仮設住宅(食堂あり)、という場所に出張することを前提にしています。(そもそもプラントを建設するような場所は何も無いことが多いですが。)
これは実際に管理人が試運転で出張した時の試運転開始直前の写真です。見事に何も無いですね。
前提とする海外出張条件
・プラント建設地は砂漠の中(周りに何もない)
・インターネットは辛うじて接続可(速度は激遅)
・寒暖差大
・宿泊場所はプラント併設の仮設住宅(食堂アリ)
・出張期間は数か月以上の長期出張
それでは次項から詳細に解説していきます。
出張前の準備
最低限の準備や必要手続きについては会社から指示があると思いますが、これに加えて実施、準備しておいた方が良い項目を挙げます。
出張前の準備
・就労ビザ入手
・たびレジ登録、在留届の提出
・マイレージカード準備
・メールソフト受信容量制限設定
・VPNアプリのインストール
・吊りはかり
就労ビザ入手
短期出張であればパスポートだけで入国出来ますが、長期出張であればこれが無いと入国できません。国によっては短期間でもビザの提出が求められるので、必ず事前に準備しておかないといけません。
また、ビザの代わりにInvitation Letterを入手し、入国時にInvitation Letterを提示することでその場でVISAが発行されることもあります。
たびレジ登録、在留届の提出
登録や在留届の提出をしておくと、外務省からその国に関する情報を受け取ったり、緊急時には外務省の支援を受けることができます。
たびレジは出張期間によらず必要で、在留届は3か月以上の出張であれば必要です。
何も起こらないのが一番良いですが、万一の事態に備えて必ず登録、提出をしておきましょう。
マイレージカード準備
海外の航空会社を使った場合でもJALやANAのマイルを貯めることが可能です。
例えばJALはOne worldの加盟航空会社ですし、ANAはStar Allianceの加盟航空会社です。利用する航空会社がone worldかstar allianceに加盟していれば、その航空券でJAL、ANAのマイルとして貯められます。
場所にもよりますが、一回の海外出張で国内航空券の往復分のマイルを貯めることも可能です。
将来、海外出張があることが予想されるなら、JALとANAのマイレージカードを作っておきましょう。
なお、航空券さえあればマイルの事後登録は可能ですので、出張から帰ってきてから登録することも可能です。航空券は必ず捨てないようにして下さい。
メールソフト受信容量制限設定
インターネットのインフラが整っていない国、地域の場合、メールの添付を満足に受け取ることができず、大事なメールも受信できないリスクがあります。
受信容量制限をしておくことで、添付ファイルの受信優先度をつけることが出来ますので、事前に設定しておきましょう。
VPNアプリのインストール
日本にいる内に、スマホにVPNアプリをインストールしておきましょう。
国によってはSNSが規制されており、wifiだけの接続ではLINE、Twitter、Facebookなどに接続できないことがあります。
無料のアプリはたくさんありますが、管理人は有料のアプリをオススメします。理由は有料アプリの方が、セキュリティがしっかりしており、VPNサーバーも世界中にあり、分散しているためです。
管理人はExpress VPNとAny connectを使用していました。
利用料金は1000円/月程度です。こちらから解約しない限り継続されてしまうので、出張から帰ってきたら解約することを忘れないようにして下さい。
吊りはかり
キャリーケースの重量調整に必要です。
所定の重量をオーバーすると超過料金が請求されるので、重さを計りながら荷物の量を調整しますが、この時は吊りはかりが非常に便利です。
帰国時も、ついでの荷物を持って帰るように頼まれることも多いので、吊りはかりも現地に持って行った方が便利です。
業務用品
現場の業務で必須だったりあると便利な業務用品について解説します。
P&ID、PFD、配置図の冊子
プロセス担当のプラントエンジニア(プロセスエンジニア)の三種の神器と言っても良いくらい重要な設計図書です。
他のプロセス設計図書は電子データでも問題ありませんが、ここに挙げた三種の設計図書は、製本して冊子として持っていくことを勧めます。
これらの設計図書は、建設・試運転時の現場に持って行き、その場で作業指示したり、メモを書き込んだりするので、どうしても紙の方が仕事がしやすくなってしまいます。
また、初めてプラントの建設サイトに来た時は、配置図を参照しながら現場を巡回すると、機器の場所を覚えやすいです。この時も冊子の方が便利です。
これらの図書の詳細については、こちらの記事も参照ください。
【プラント設計基礎③】プロセスフロー図(PFD)、マテリアルバランス
【プラント設計基礎⑤】P&ID~プラント建設プロジェクトにおける位置づけ~
【プラント設計基礎⑥】配置図(レイアウト、プロットプラン)~基礎知識と考え方~
制御弁データシートの冊子
制御弁のデータシートの冊子は特に試運転時に必要です。
試運転時、何らかのトラブルが発生して、設計通りに運転ができないことがあります。
イレギュラーな運転・操作をする際は、まずは制御弁のデータシートの最大流量を確認するのですが、電子データだとすぐに表示できないので、冊子の方がよく使われます。
(もちろん、現場作業の際は安全を最優先して作業します。)
この冊子は一人一冊準備するというよりは、計器室に一冊置いておき、エンジニアやオペレーターが参照したいときにいつでも見られるような、辞書的な使い方をします。
事務用品(クリップ、ホッチキス、バインダー)
普段の事務所勤務で使用するものですが、海外出張時に役にたったものです。
事務所勤務ではペーパーレスが進んでいますが、現場出張時は、紙が無いと現地オペレータへの指示や相談することが難しいです。
意外と資料を印刷することが多く、その印刷物を使って小ミーティング等を開くことも多いので、それを整理するためのクリップ(ダブルクリップ)、ホッチキス、バインダーは必須だと思います。
デイバッグ
上記で挙げた冊子や事務用品、パソコンを入れて、現場で持ち歩くために必要です。
現場内で移動する際はラダー(猿梯子)を昇り降りすることも多いので、両手はフリーにしておいた方が便利です。そのためトートバックのような入れ物よりは肩掛けバッグの方が便利です。
ただ、現場で使用すると砂、埃まみれになったり、汚れもつきますので、現場出張用の専用のデイバッグを準備しておくことをお勧めします。
ヘルメットインナー、フェイスマスク(ネックウォーマー)、耳栓
これらは自分の身を守るために必要なものです。
プラント建設地が砂漠であれば、夏季は非常に気温が上がりますので、現場に出ているときは汗だくになります。
ヘルメットは交換しないため、頭皮を清潔に保つためにもヘルメットインナーを着けて毎日交換した方が良いでしょう。
1着だけ持って行って、毎日手洗いして部屋干しでも良いですが、複数持っていくことお勧めします。
また、夏季は日差しが非常に強くて、砂塵も舞うこともあるので、日焼けや砂の吸い込みを防ぐためのフェイスマスクは必須です。冬であれば防寒も兼ねることが出来るネックウォーマーでも良いでしょう。
ただし、フェイスマスクやネックウォーマーは静電気の発生源にもなりかねないので、プラントの試運転が開始された後は十分に気を付けて下さい。
耳栓については、騒音が大きい機器(コンプレッサーなどの回転機)まわりで作業する際は必須です。
生活用品
生活用品について、必須なもの、あったら便利なものを挙げていきます。
なお、上述の通り、ホテル泊ではなく、プラント併設の仮設住宅のような宿泊施設で寝泊まりすることを前提にしています。
業務用品
・電源アダプタ(全世界対応)、延長コード
・置時計
・水筒
・アメニティグッズ(ボディソープ、シャンプー、洗顔クリーム、歯磨き粉・爪切り)
・バスタオル、ハンドタオル
・ハンガー、洗濯ばさみ
・コップ
・1Lペットボトルの水
・非常食、割りばし
・スリッパ
・足ふきマット
・下着、靴下
電源アダプタ(全世界対応)、延長コード
海外なので、当然ながら電源アダプタは必須です。宿泊施設には電源がありますが、その国のプラグタイプしか対応していなく、日本のプラグタイプ(Aタイプ)には対応していないことがほとんどです。
管理人はどんなタイプでも対応できる全世界型をお勧めします。
また、コンセントの場所が不便な場所にありますので、延長コードはある方が便利です。
置時計
残念ながら宿泊施設には時計がありません。
スマホの時計機能で時間は分かりますが、やはり目につくところに時計がある方が便利です。
管理人は小型の置時計を持っていくことをお勧めします。
水筒
夏季に出張する場合は、現場では喉が渇きますので、水筒がある方が便利です。
現場の売店等でペットボトルの水やジュースが手に入る場合はそちらでも問題ありません。
アメニティグッズ(ボディソープ、シャンプー、洗顔クリーム、歯磨き粉・爪切り)
宿泊施設にはホテルにあるようなアメニティグッズは一切ありません。
一応、現地で購入(週に一回の市街地への買い出し)できるため、人によっては不要かもしれません。
管理人は現地のものは使いたくなかったので、なるべくたくさんの量を日本から持っていき、どうしようもない場合は現地で購入していました。
バスタオル、ハンドタオル
洗濯は週2回
だったので、最低でも、それぞれ3枚程度持って行った方が良いでしょう。
タオルの使いまわしが平気な人は1,2枚でも十分かもしれません。
ハンガー、洗濯ばさみ
タオル類の部屋干しにハンガーや洗濯ばさみは必須です。
また、シャツやコートをクローゼットでかけておくためにも、ハンガーは必須です。2,3個あれば十分でしょう。
コップ
歯磨き
で使ったり、部屋でコーヒー、みそ汁を飲むときなど、何かとコップ(マグカップ)は必要です。
宿泊施設にもガラスコップが置いてありましたが、衛生面で不安があったので、使いませんでした。
1Lペットボトルの水
出張で移動し、宿泊施設に到着した直後は早朝や深夜になることがあります。そのような時間では売店もあいてないので、途中で飲み物が買えなかった時のために1Lのペットボトルの水があると安心できます。
1Lとした理由は、500mlだと少なすぎて、2Lだと多すぎてかさばるためです。
非常食、割りばし
管理人は何らかの理由で食堂が使えない場合に備えて、カロリーメイトや日本食が食べたくなった場合に備えてみそ汁を持っていきました。
できればカップ麺も持っていきたいですが、かさばるので持っていくのは難しいです。一応、現地の売店でカップ麺は購入可能ですが、日本人の口には合わないと思います。
また、管理人は胃腸が弱くて、たびたび胃腸をやられてしまうのですが、その時はポカリスエットなどのスポーツドリンクの粉があれば水分補給に役立ちます。
スリッパ
当然ながら、ホテルにあるようなスリッパは無いので、スリッパは必須です。
100均で売っているような安物で十分です。
足ふきマット
宿泊施設の各個室にはシャワールームはありますが、体をふく場所はありません。
これは我慢するしかないですが、足ふきマットが無いと床がびしょびしょになってしまいますので、足ふきマットは必須です。
下着、靴下
週に2回洗濯日があるので、一日一回履き替えるなら、3、4着あればよいですが、間違えられたり、無くされることも多いので、5、6着はある方が安心です。
その他
薬やゲームなど、その他の項目はここで解説します。
その他
・薬、体温計
・ゲーム、タブレット端末
薬、体温計
整腸薬、下痢止め、風邪薬は必須
です。衛生環境がよくない国に出張した時、ほとんどの人がお腹を壊します。(旅行者下痢症)
管理人は胃腸があまり強くないので、お腹を壊しただけでなく、熱を出して寝込んだ日もありました。
自分の体調管理のためにも、体温計もあった方がよいでしょう。
ゲーム、タブレット端末
現地は周りに何も無いため、休日(日曜日だけですが)は何もすることがありません。
PSP、PS VITA、switchなどの携帯ゲームを持っている人は現地に持ってきている人もいます。
宿泊施設の部屋にはテレビがあれば、据え置き機のゲームもプレイすることは可能です。(持っていくのが大変ですが)
また、iPADなどのタブレット端末があれば、電子書籍や動画を持っていくことで、かなりの暇つぶしになります。特に書籍類は、紙の本は荷物になるので、電子書籍は非常に便利です。
まとめ
今回はプラントエンジニアが海外出張に行く時、必携となる持ち物、準備について解説しました。
プラント建設地の周りは何もなく、砂漠のような土地(寒暖差大)、宿泊場所はプラント併設の仮設住宅(食堂あり)、という場所に出張する前提となっておりますが、各人で取捨選択して頂ければと思います。
なお、宿泊場所がホテルであれば、必要な準備物は幾分かは少なくて済みます。
プラントエンジニアリング業界、特に海外プラントを多く手掛けている会社への就職、転職に興味のある方にとって、この記事が参考になれば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。