プラントエンジニアリング プラント設計基礎

【プラント設計基礎①】基本設計条項(Design Basis)

こんにちは。Toshi@プラントエンジニアのおどりばです。

今回の記事では基本設計条項について解説します。

プラント設計・建設業務の大まかな流れについては、下記の記事で解説しました。

今回はEPC業務のE、特に基本設計業務の一つである基本設計条項(Design Basis)について解説したいと思います。

基本設計条項とは

基本設計条項とは別名Dasign Basisとも呼ばれ、プラント設計業務においてベースとなる図書のことです。

プラント建設プロジェクトでは、一人のプラントエンジニアが設計することはあり得ず、プロセス担当、機器担当、配管担当、土建担当、電気計装担当、など多くの部門が関わりあって一つのプロジェクトを進めるため、設計基準となる図書が必要です。

これがないと、各担当の設計ベースがあやふやになり、建設・試運転時のトラブルを引き起こし、最悪の場合性能未達になります。

そのため、建設プロジェクトが開始されたら真っ先に作成、共有しなければならない重要な図書です。

具体的に記載される項目は以下の通りです。

見出し(全角15文字)

①設備条件
②気象条件
③法規
④規格
⑤原料、製品スペック
⑥ユーティリティ条件
⑦排水、排ガス、その他廃棄物条件


それぞれ詳細を説明していきます。

設備条件

プラントの能力(xx万 t/yearなど)
年間稼働時間 (例えば、連続プラントであれば8000時間/年など)
最低運転負荷

大まかにプラント設備を説明する項目ですが、最低運転負荷は機器設計にも影響があるので、ここできっちり決めておく必要があります。

気象条件

記載する主な気象条件

最高気温
最低気温
湿度
風速
降雨量
降雪量
凍結深度
地盤条件
地震荷重
騒音

最高気温、最低気温は機器、計器の設計に大きく影響します。

特に最低気温の影響は大きく、凍結防止対策要否、配管熱応力、機器設計温度に影響があります。

 

風速、降雪量などについては機器の設計に大きく影響します。

凍結震度、地盤条件、地震荷重は土建基礎の設計に大きく影響します。

騒音については、一般的には85dBがよく使われます。この基準も機器(特に回転機)の設計に大きく影響します。

いずれも項目も後から取り返しがつかない項目なので、必ず規定しておかなければならず、基本的に変更することはありません。

法規

プラント設計にあたり遵守しなければならない法規をここで挙げます。

規定しなくても遵守しなければなりませんが、設計時に抜けを防ぐ意味合いも込めて項目として挙げる必要があります。

国内のプラント設計で該当する主な法規は以下の通りです。

主な表記

高圧ガス保安法
電気事業法
消防法
労働安全衛生法
建築基準法
公害対策基本法
大気汚染防止法
騒音規制法
水質汚濁防止法
毒物及び劇物取締法
振動防止法
悪臭防止法

海外では日本国内のような法規ではなく、API, ASTM, ASME, ANSIといった規格に準拠することを記載しますが、プラントを建設する国によっては特有の法規(norm)が定められている場合があるので、事前によく調査しておく必要があります。

規格

機器、配管、計器等を手配するときに適用する規格をここで規定します。

日本国内ではJISやJPI、海外だとASME、APIなどが該当します。

記載しなくても当たり前の項目ですが、例えば、国内案件なのに海外メーカーから購入した機器してしまい、そのメーカーがJISやJPIに対応してない、あるいはその逆が発生することもあるので、認識を共有するためにもここで挙げておく必要があります。

原料、製品スペック

原料の性状や製品の保証項目をこの項目に記載します。

情報は客先から入手しますが、プロセス設計担当のエンジニア(プロセスエンジニア)はこの情報をもとにフローシートやマテリアルバランスを作成するため、必ず記載しておかなければなりません。

フローシート(PFD)やマテリアルバランスについて解説した記事はこちら↓

ユーティリティ条件

プラント設計に必要なユーティリティ(用役)の条件をここで記載します。

主なユーティリティ条件

蒸気(高圧、低圧)
水(冷却水、純水、工水、市水など)
空気(計装空気、一般用空気)
窒素
電力

例えば、蒸気であれば圧力区分、温度(飽和蒸気なのか過熱蒸気なのか)、凝縮水回収有無を定めたり、水であれば圧力、温度の他に水質や消費量も記載します。

空気や窒素は圧力、温度の他に露点を規定します。電力であれば、動力、照明、計器用電力の出夏、周波数区分や危険場所の分類(防爆設計)を指定します。

それぞれユーティリティ設備(冷却塔、ボイラー、水処理設備、窒素発生設備など)の設計に大きく影響します。

排水、排ガス、その他廃棄物条件

廃棄物の条件をこの項目で定めます。

排水、排ガス(NOx、SOxなど)は法規を遵守しなければならないし、建設地の条例でより厳しい条件が定められている場合もあします。

そのため、プラント設計前に条件をよく確認しておく必要があります。

また、廃棄物の条件も機器設計に大きく影響する項目です。

まとめ

基本設計条項(Design Basis)はプラント設計でベースとなる最重要の図書です。

プロジェクトが発足したら、まずこの基本設計条項を作成しなければなりません。

もし参加したプロジェクトに基本設計条項がなければ、かならずプロジェクト取りまとめ担当に作成を依頼して下さい。
(逆に作成を指示されるかもしれませんが...)

今回はプラント設計概要説明シリーズの第一回として、基本設計条項について解説しました。

第二回はこちらプロジェクトスペックについて解説しました。

この記事が役に立てば幸いです、では他の記事でお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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