今回はプロジェクトスペック(Project Specification)について解説します。
プロジェクトスペックはプラント機器、配管、電気・計装、土建の詳細設計のために、その設計のベースとなる図書(設計基準書)のことです。
機器、配管、電気・計装、土建などのそれぞれのカテゴリ毎に設計基準書として詳細に規定がなされ、各エンジニアはこれを基準として詳細設計を進めていきます。
基本設計条項はエンジニアリング会社の社内設計(プロセス設計など)のために使用されることが多いのに対し、プロジェクトスペックは上記カテゴリの各エンジニアの詳細設計のために使用されることを想定しています。
一般に基本設計条項の記載内容はプロジェクトスペックに含まれるため、小規模のプロジェクトであれば基本設計条項とプロジェクトスペックをまとめて一つの図書として扱うこともあります。
基本設計条項については下記の記事を参照ください。
このブロックフロー図を見てもわかる通り、プロジェクトスペックは多くの設計業務と密接に関わりあっているため、基本設計条項同様に作成が必須です。
これが変更されると、設計工程へのインパクト大ですので、プロジェクトスペック自体を変更することは極力避けなければなりません。
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プロジェクトスペックの分類
作成されるプロジェクトスペックの項目を大まかに分類すると以下の通りです。
主なプロジェクトスペック項目
①General
②配管
③電気・計装
④HSE
⑤土建
⑥回転機
⑦静機器
⑧その他機器・設備
①General
ここではプラント建設プロジェクトで共通する基準を定めます。具体例として挙げられる共通項目は以下の通りです。
主なプロジェクトスペックの共通項目
Project Design Data
採番基準
工務関係の要求事項
品質保証に関する要求事項
凍結対策に対する要求事項
Project Design Dataは基本設計条項と内容は重複するのですが、もっと細かい設計に関する項目をまとめたものです。
(例:ドレン弁のサイズの規定など)
採番基準は配管・機器・計器のLine No., Item No.やTag No.に関する取り決めです。
これを作成することで、各設計部門で採番したNo,が重複してしまうことを防ぎます。
工務関係の要求事項の例として、梱包に関する要求や輸送に関する要求です。
ここをしっかり決めておかないと、輸送時の機器破損などの問題時に責任の所在は分からなくなるので、建設コスト悪化につながります。
品質保証に関しては、発注品の検査方法を要求したり、工場検査レポートの提出を求める、といった品質保証に関する要求事項を定めておきます。
凍結対策は、国内プロジェクトではあまり意識されませんが、海外では最低気温が非常に低い土地もあるので、ここで規定しておきます。
②配管
ここでは配管の詳細設計(配管レイアウトも含む)に関する基準を規定します。
一例を挙げると以下の通りです。
配管詳細設計に関する主な項目
配管設計基準
配管材料基準書(Piping Material Specification)
蒸気トレース設計基準
配管部品購入基準
特に配管材料基準書は重要で、内部流体によって適用する配管材料(例えば炭素鋼なのかSUS304なのか、など)を定める図書なので、P&IDを作成するためにはこの図書が必須です。そのため優先的に作成されます。
③電気・計装
ここでは電気・計装の詳細設計に関する基準を規定します。
電気・計装詳細設計に関する主な項目
電源設備、電動機類設計基準
照明設備設計基準
設置計画、電気配線計画基準
計器、調節弁設計基準
プラント制御、監視システム(DCSなど)設計基準
計装配線計画基準
配置計画にも影響する電源設備基準や、P&ID作成、データシート作成にも影響する計器、調節弁設計基準は優先度が高いです。
④HSE
HSEとは、Health(健康)、Safety(安全)、Environment(環境)の頭文字からなる略称で、衛生・労働安全・環境を指します。
ここではこれらに関わる基準を規定します。
例えばノイズの抑制に関する要求や、建設、試運転時のHSE関する要求事項を記載します。
HSEに関するプロジェクトスペックは、遵守しなければならない最重要の基準なので、優先的に作成されます。
⑤土建
ここでは土建設計に関する基準を規定します。
土建設計に関する主な項目
コンクリート基礎設計基準
鉄骨、建屋設計基準
地下埋設物設計基準
などが該当します。
土建設計はプラント建設にあたり、最初に完了しなければならないので、これらの基準を優先的に作成されます。
⑥回転機
回転機(ポンプ、コンプレッサーなど)の設計に関する基準を規定します。
購入基準書から型式、材質、揚程、NPSHの基準や、検査項目、駆動源(motorか蒸気かなど)についてもここで規定します。
⑦静機器
塔槽類、熱交の設計に関する基準を規定します。
こちらも、設計基準書から、寸法(内径、高さ、スカート高さ、トレイ間隔)や、材質、適用法規、ノズルやマンホールのサイズに関する基準を規定します。
熱交においては熱負荷やShell、Tubeの材質に関してもここで規定します。また、スケッチ図も添付されます。
⑧その他機器・設備
上記以外の機器・設備(例えば加熱炉、撹拌機、ろ過機やその他Package品)がプラント内に設置する計画であれば、それぞれの機器・設備に関する基準を規定します。
まとめ
プロジェクトスペックも基本設計条項同様、はプラント設計でベースとなる最重要の図書です。
基本設計条項を作成した後(或いは作成しながら)は、まずプロジェクトスペックを作成しなければなりません。
といってもゼロから作成するのは大変なので、多くは過去のプラント建設プロジェクトのものを流用します。
しかし、法規・規格が当時と変わっており、そのまま流用できないこともありますので、最低限、適用法規・規格は問題ないか、設計基準自体が古くなっていないかチェックする方が良いと思います。
今回はプラント設計概要説明シリーズの第二回として、プロジェクトスペックについて解説しました。
第三回はプロセスフロー図(PFD)、マテリアルバランスについて解説しています。
この記事が役に立てば幸いです、では他の記事でお会いしましょう。