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【材質】配管の材質はどうやって決まる?配管材料選定の留意点について解説

こんにちは。Toshi@プラントエンジニアのおどりばです。

今回の記事では、配管材料選定の留意点について解説します。プラントの新設や改造プロジェクトでは、取り扱う流体に対して、どのような配管材料を用いるか規定しておく配管材料基準書が作成されます。

補足:配管材料基準書はプロジェクトスペックの一つです。各プロジェクトスペックについてはこちらの記事を参照ください。

最適な配管材料を選定するためには、取り扱う流体の性状、使用条件を把握するだけでなく、入手性や経済性も考慮しなければなりません。

そこで本記事では、プラントでよく使用される流体や材料について、材料選定の留意点を解説します。選定の詳細については各規格を読み込んだ上で検討が必要となりますが、検討の出発点となれば幸いです。

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設計温度

配管材料によって使用可能な温度範囲が決まっているため、設計温度は材料選定に大きく影響します。

各配管材料(配管材料やフランジ材料)の使用温度範囲は以下の規格で記載されています。

主な規格

・ ASME B31.3
・ ASME B16.34
・ ASME B16.5
・ JPI-7S-77
・ JPI-7S-65

次項から、主な配管材料の使用可能な温度範囲について解説します。

ただし、バルブの部品材質により最高温度が制限される場合もあり、無条件でそれぞれの温度範囲に対応しているわけではありませんので、材料選定の際はかならず上記の規格を確認するようにして下さい。

炭素鋼

主にAPI5L-B、A106、A672-B65が該当します。

これらの材料は、-29℃~425℃の範囲で使用可能です。

ただし、炭素鋼の中でも、API5L-X60やX65などの高強度炭素鋼の場合は最高温度204℃までしか使用できません。

また、材料によっては、低温側においては肉厚により衝撃試験が要求されることもあります。例えば、よく使用されるAPI5L-B、A106、A672-C65、A234-WPBは、肉厚が12.7mmを超えると最低使用可能温度が-29℃よりも高くなるため、最低使用可能温度よりも低い温度を設計温度とする場合は個別に衝撃試験を実施する必要が生じます。

 

■衝撃試験が不要な炭素鋼の最低温度

■出典:ASME B31.3

低温用炭素鋼

主にA333-6、A671-CC65などが該当します。

これらの材料は、-46℃~345℃の範囲で使用可能です。

これらの材料は元々規格によって衝撃試験の実施が求められているので、入手性、経済性の観点から、低温プロセスに適用される配管材料(炭素鋼)として、この材料を選定することが一般的です。

ただし、この材料は最高使用可能温度が345℃と通常の炭素鋼と比較して低いので注意して下さい。

クロムモリブデン鋼

主にクロムやモリブデンを含む合金で、それらの元素の含有率で最高使用可能温度が変わります。

炭素鋼よりも高い温度域で使用可能なので、設計温度が425℃よりも高い場合の配管材料として選定されます。

<Cr-1/2Mo低合金鋼>

主にA335-P1、A672-L70などが該当します。

これらの材料は、-29℃~450℃の範囲で使用可能です。

<Cr-Mo低合金鋼>

主にA335-P11、A691-1.25Crなどが該当します。

これらの材料は、-29℃~593℃の範囲で使用可能です。

ステンレス鋼

設計温度の観点では、ステンレス鋼は極低温のプロセスに使用可能です。

例えば、深冷分離で窒素や酸素を生産する空気分離装置では、炭素鋼を使われることはなく、ステンレス鋼が使用されます。

極低温領域の配管材料としてステンレス鋼を用いる場合、炭素含有率0.10%を超えるか、固溶化熱処理されていない母材については衝撃試験が必要です。SUS304(L)やSUS316(L)などの低炭素ステンレス鋼は炭素含有率0.10未満ですが、衝撃試験を回避するためには、別途固溶化熱処理を実施する必要があります。

また、ステンレス鋼の種類により最高使用可能温度が変わります。

<ステンレス鋼>

主にA312-TP304(L)、A358-304(L)、A312-TP316(L)、A358-316(L)などが該当します。
(所謂SUS304LやSUS316Lなどが該当)

これらの材料は、-196℃~425℃の範囲で使用可能です。

SUS304(L)やSUS316(L)はプラントでも使用頻度の高い材料ですが、最高使用可能温度が425℃と、あまり高くないので注意が必要です。
※これ以上の温度を設計温度とする場合は別途詳細検討が必要

<安定化ステンレス鋼>

主にA312-TP321、A358-321などが該当します。
(所謂SUS321が該当)

これらの材料は、-196℃~538℃の範囲で使用可能です。538℃以上の温度を設計温度とする場合は別途詳細検討が必要です。



水素配管

水素は石油精製プラントや化学プラントの他、最近では脱炭素の観点から水素ステーションの需要が高まっているため、今後も使用頻度が高くなることが予想されます。

水素配管では水素侵食(Hydrogen Attack)や水素脆性を考慮する必要があります。

水素配管の材質につてはこちらの記事で詳しく解説しています。

アミン溶液配管

石油精製設備、天然ガス生成設備では、含まれる酸性ガス(CO2やH2Sなど)の除去のために、酸性ガス吸収液としてアミン溶液が使用されます。

代表的なアミン溶液はMEA、DEA、MDEAなどです。アミン溶液は、排ガス中のCO2を除去するための吸収液(化学吸収法)としても用いられるため、脱炭素の観点からも、今後の使用頻度は高くなると予想されます。

CO2の分離回収法についてはこちらの記事で解説しています。

 

アミン溶液は、炭素鋼や低合金鋼(クロムモリブデン鋼)に対しては応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking/SCC)を発生させることが知られています。特に材料の引張残留応力がある部分で発生しやすいです。

■アミン溶液による応力腐食割れ

出典:API945

アミン溶液が比較的低流速であれば、溶接後熱処理(Post Weld Heat Treatment/PWHT)を実施することで炭素鋼でも使用可能ですが、一般的にはステンレス鋼が採用されます。



水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)配管

水酸化ナトリウム溶液は、プラントの水処理工程など広く使用されますが、濃度や温度によって応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking/SCC)を発生させることが知られています。(苛性割れとも言う。)

NACE SP 403では水酸化ナトリウムの濃度と温度でエリアA~Dに分類され、それぞれのエリアで推奨される配管材料が規定されています。

 

■水酸化ナトリウム溶液の配管材料選定チャート

出典:NACE SP 403

エリアA

工業用として一般的な48%水酸化ナトリウム溶液だと、設計温度が50℃程度以下の配管であればエリアAに該当します。

エリアAでは炭素鋼が使用可能です。

溶接後熱処理は不要ですが、蒸気トレースを実施している配管については必要となります。

エリアB

工業用として一般的な48%水酸化ナトリウム溶液だと、設計温度が約50℃~約75℃の配管であればエリアBに該当します。

エリアBでは炭素鋼が使用可能です。

ただし、全ての配管について溶接後熱処理が必要です。

また、バルブのトリム材質についてはニッケル合金が推奨されています。

エリアC

工業用として一般的な48%水酸化ナトリウム溶液だと、設計温度が約75℃以上の配管であればエリアCに該当します。

エリアCでは炭素鋼は使用できず、ニッケル合金が推奨されています。

エリアD

水酸化ナトリウム溶液の濃度が2~5%以下であれば、エリアDに該当し、特別な考慮は不要とされています。

この濃度の基準は各エンジニアリング会社の判断に任せられているので、水酸化ナトリウムを使用するプラントについては、基準となる濃度を何%にするか、プロジェクト初期にプロジェクトスペック(配管材料基準書)などで規定しておく必要があります。



硫化水素配管

硫化水素は石油精製プラントの接触分解、脱硫、水素化分解、ガス精製で発生し、取り扱う頻度が高いガスなので、配管材料の選定でも特別な配慮が必要です。

硫化水素は288℃以上の高温、または分圧が7kg/cm2G以上になると、炭素鋼、低合金鋼(クロムモリブデン鋼)を激しく腐食するため、これらの材料は使用できません。

また、水分や酸素と反応し、ポリチオン酸を生成するため、オーステナイト系ステンレス鋼に対して応力腐食割れを発生させる可能性があります。

そのため、SUS304やSUS316も使用できず、一般的にはSUS321などの安定化ステンレス鋼が使用されます。

硫酸配管

硫酸の腐食性は濃度に大きく依存します。

炭素鋼

NACE RP0391や硫酸ハンドブックによると、70%以上の濃硫酸に対しては炭素鋼が使用可能です。特に95%であれば、高温でも使用することができます。

逆に、70%未満の希硫酸に対しては、どのような温度域でも使用不可です。

クロムモリブデン鋼

合金材料としてよく用いられるクロムモリブデン鋼は、それぞれの元素を添加することにより耐酸性は向上します。ただし、添加量に対する向上性の効果はそれほど大きくありません。

ステンレス鋼

ステンレス鋼の中ではオーステナイト系ステンレス鋼が硫酸の耐食性が高く、特にSUS316は高い耐食性を持っています。

ただし、硫酸濃度60~70%の濃度領域では最も腐食性が高くなるので要注意です。

ニッケル合金

ニッケル合金は耐食性が高く、機械的性質が優れ、高温に対してもよく耐えます。また、溶接も容易であるので、良く使用されます。

高ケイ素鋳鉄

ケイ素を13%~15%程度含むため、高い耐食性があり、広く使用されますが、固くて脆いため、温度変化が大きいプロセスに対しては要注意です。

鉛合金

鉛は表面に不動態を形成するため、硫酸に対しては高い耐食性をもっています。

ただし、濃度70%以上の濃硫酸に対しては腐食速度が急激に増すため、濃硫酸に対しては使用不可です。

また、鉛は機械的強度が低いために耐用年数よりも早く亀裂が生じることがあります。これを回避するために銅や銀を添加した合金が主流になっています。

塩酸配管

塩酸は金属に対し最も腐食性の強い酸の一つのため、一般的な配管材料を適用することは不可能です。

40℃以下の温度範囲であれば、インコロイ825やインコネル625が良く使用されます。

それ以上の温度の場合は、ハステロイ系の材料やFRPやテフロンライニング管などの樹脂配管もよく使用されます。

次亜塩素酸ナトリウム配管

次亜塩素酸ナトリウムは海水殺菌によく使用される流体で、その濃度と温度によって材料が選定されます。

低濃度の場合はハステロイC-276が使用可能ですが、一般にはFRPやPVCなどの樹脂配管や、テフロンライニング管が使われることが多いです。



海水配管

沿岸部のプラントでは、豊富に存在する海水を、冷却水や消火用水用途で使用することが多いです。

しかし、海水は金属材料に姑して非常に強い腐食性があり、材料選定においては注意を要します。

炭素鋼は使用できず、SUS304やSUS316などのオーステナイト系ステンレス鋼も、応力腐食割れが発生するために使用できません。ただし、スーパーオーステナイト鋼(SS31254)やスーパー2相ステンレス鋼(SS32750等)は、条件によっては使用されることもある。

海水に対して良い耐食性を示すのは、モネルやハステロイなどのニッケル基合金やチタンで、大型プラントではこれらの材料が選定されることが多いです。しかし、これらの材料は値段が非常に高価のため、配管材料コストへの影響が大きいです。

一方、FRPやPVC、HDPEなどの樹脂配管やプラステック・ゴムなどを使用したライニング管、コンクリート管などの無機材料は、耐腐食性が優れており、かつ比較的安価です。しかし、施工性や耐熱性(太陽放射熱による高温)に難があつたり、低靭性、低強度であったりするので、使用場所については詳細な検討が必要です。



まとめ

こんにちは。Toshi@プラントエンジニアのおどりばです。

今回の記事では、配管材料選定の留意点について解説しました。

プラントの新設や改造プロジェクトでは、取り扱う流体に対して、どのような配管材料を用いるか規定しておく配管材料基準書が作成されます。最適な配管材料を選定するためには、取り扱う流体の性状、使用条件を把握するだけでなく、入手性や経済性も考慮しなければなりません。

材料選定で留意する項目

・ 設計温度
・ 水素配管
・ アミン溶液配管
・ 水酸化ナトリウム配管
・ 硫化水素配管
・ 硫酸配管
・ 塩酸配管
・ 次亜塩素酸ナトリウム配管
・ 海水配管

選定の詳細については各規格を読み込んだ上で検討が必要となりますが、検討の出発点となれば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

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  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在120記事、月1.8万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有/投資による資産形成もブログで報告。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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