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【材質】極低温環境下における圧力容器に使用される材料選定について解説

こんにちは。Toshi@プラントエンジニアのおどりばです。

今回の記事では極低温環境下における圧力容器に使用される材料選定について解説します。

LNGや液化水素などの極低温の流体を取り扱うプラントやプラント建設地が極寒の立地(最低気温が-29℃を下回る地域)の場合、設計温度(MDMT)がマイナス数十度~マイナス数百度となり、低温脆性の考慮が必要となるため、機器、配管の材料選定においては特別な配慮が必要となります。

特にドラム、熱交換器蒸留塔などの圧力容器は、耐圧部の材料選定が重要となります。この材料選定は機器設計の根本的な思想に関わる項目なので非常に重要です。

次項から、このような環境で使用される圧力容器の低温用材料の選定の考え方について解説します。また、各材料の衝撃試験要否の考え方についても合わせて解説します。

基本的な考え方

材料選定の基準となる温度は、MDMT(Minimum Design Metal Temperature)が使用されます。

例えば、MDMTが-29℃以下では、耐圧部に対して通常の炭素鋼や低合金を使用できず、ASMEなどの規格において衝撃試験による靭性特性が保証された材料を使用する必要があります。

また、各材料、各温度(各MDMT)において使用可能な材料(ASME材)を下表に示します。なお、低温側に記載されている材料は高温側でも使用することは許容されます。逆に各MDMTに対する衝撃特性が確認された場合に限り、高温側の材料を低温側に使用することも認められます。

非耐圧部品の材料選定

非耐圧部品でも、圧力容器、配管の設計において重要な部品(耐圧部材に荷重を伝達する部品)や支持構造物については、耐圧部品同様、各MDMTにおける最適な材料を選定しなければなりません。

非耐圧部品(一例)

・ プラットホーム
・ トレイサポート
・ 配管、保温サポート
・ ラダー
・ 銘板座

ただし、機器スカート、レグ、サドルの下部など、耐圧部に直接溶接されず、かつ低温のプロセス流体の影響を受けない部品については、材質は炭素鋼で問題無い場合があります。(プラント建設地の最低気温が-29℃を下回るような極寒地の場合を除く)

衝撃試験要求事項

前項の通り、極低温環境で各鋼材を使用する場合は、衝撃試験による靭性特性が保証された材料が必要になることがあります。

基本的な要求事項や衝撃試験の免除項目はASME section Ⅷ Division1のUCS-66、UG-20、UG-84で規定されています。特に具体的な衝撃試験要領についてはUG-84にて規定されています。

それぞれの材料、部品における衝撃試験要否の考え方を次項から解説します。

炭素鋼、低合金鋼

炭素鋼、低合金鋼の圧力容器(その部品を含む)に対する要求事項はASME VIII-1のUCS-66(材料)、UCS-67(溶接施工法の認定)及びUCS-68(補足
要求事項)の規定に従う必要があります。

UCS-66 (a) はボルト材以外の「材質」、「支配的厚さ」、「MDMTによる免除曲線」の組合せによる衝撃試験の免除基準を規定していますが、 この基準は、
個々の構成部品、あるいは溶接で組み合わされた2つ以上の構成部品に適用可能です。

UCS-66 (b) はMDMT低減曲線と板厚比率に基づく衝撃試験免除温度の追加低減量が規定されています。MDMTが一定温度以上、板厚比率が一定値以下であれば衝撃試験は免除されます。

但し、会社によってはUCS-66(b)の適用を禁じている場合があるので、事前によく確認しておく必要があります。

その他、UCS-66(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)においても衝撃試験に対する種々の要求事項の記載があります。

UCS-67は溶接施工法の衝撃試験の要否について記載されていますが、例えば溶加材を使用有無について溶接部の免除条件が規定されています。

また、UCS-68は溶接接手の分類、継手形式、溶接後熱処理、許容応力値に関する「炭素鋼」及び「低合金鋼」への追加設計基準が規定されています。

高合金鋼(ステンレス鋼)

前項の表でも記載されている通り、極低温環境では高合金鋼(ステンレス鋼)が選定されることが多くなります。ただし、高合金鋼であっても、部品やMDMTによっては衝撃試験が必要となる場合があります。

基本的な要求事項はASME VIII-1のUHA-51に規定されています。

低温用ニッケル鋼

低温用ニッケル鋼も衝撃試験が必要となる場合がありますが、この材料についてはASME VIII-1のUHT-6, UHT-82(d), (e)にて衝撃試験の基本的要求事項が規定されています。

タンク

ASMEではなく、API規格に基づいて設計されるタンクなどの貯槽類につても、極低温環境における要求事項が規定されています。

例えば、材料に対する要求事項はAPI 650 Section 4.2.10及び4.5.4に規定されており、溶接施工法の認定に対する要求事項はAPI650 Section 9.2.2の規定されています。

まとめ

今回の記事では極低温環境下における圧力容器に使用される材料選定、及び各材料の衝撃試験要否の考え方について解説しました。

設計温度(MDMT)がマイナス数十度~マイナス数百度となるような極低温環境における機器、配管の材料選定や衝撃試験の要否について特別な配慮が必要となります。

極低温環境では一般的に圧力容器に使用される炭素鋼や低合金鋼が使用できないばかりか、部品やMDMTによって衝撃試験が必要になることもあります。このような材料選定は機器設計の根本的な思想に関わる項目なので非常に重要です。

今回の記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在150記事、月3.2万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有/投資による資産形成もブログで報告。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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