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オルト水素、パラ水素とは?液化水素プラントの設計で知っておくべき物性について

こんにちは。Toshi@プラントエンジニアのおどりばです。

今回の記事ではオルト水素、パラ水素の物性及び液化水素を扱うプラントへの影響について解説します。

水素は他の流体では見られないような物性を有している流体です。例えば、水素を減圧して断熱膨張(等エンタルピー膨張/ジュールトムソン膨張)させる温度が上昇するという特徴を有しています。

減圧による温度上昇についてこちらの記事を参照ください。

上記の他に、水素を取り扱う上で無視できない重要な特徴の一つがオルト水素、パラ水素の物性です。これらの水素は極低温領域(-100℃以下)で液化水素を扱うプラントで登場してくる水素です。

 

クリーンエネルギーとして水素が注目されている時代、水素を効率的に運転・貯蔵するために水素を液化するプラントの需要は高まっています。オルト水素、パラ水素は、これらプラントを設計・運転する上では必ず知っておかなければなりません。

次項からオルト水素、パラ水素の解説、プラント設計・運転における対応について解説していきます。

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オルト水素、パラ水素とは?

左側:オルト水素
右側:パラ水素

出典:LibreTexts

オルト水素、パラ水素は水素の核スピン異性体です。核スピン異性体は分子の中の核スピン修飾が「対称か反対称か」による違いを表す異性体ですが、核スピン異性体そのものについての解説は本記事では省略します。

プラントエンジニアにおいては、水素は核スピン異性体を有しており、通常の水素とは異なる物性であることを把握することが重要です。

通常、常温以上でガスとして取り扱う水素は「オルト水素:パラ水素=3:1」の比率で存在します。そのため、文献等に記載されている水素の物性値は、実はオルト水素とパラ水素の混合物としての物性値です。ただし、この比率は常温以上で取り扱う場合は一定なので、この混合物を「通常の水素」として扱う分には全く問題ありません。

温度依存性

オルト水素とパラ水素の平衡比率は温度依存性があります。

-100℃以下の極低温領域で水素を扱う場合は、オルト水素、パラ水素の平衡比率が大きく変わり、水素の沸点近く(絶対零度近く)ではほぼ100%がパラ水素になります。

■パラ水素の平衡比率の温度依存性

縦軸:パラ水素の平衡比率
横軸:温度 [K]

出典:Reserchgate



物性値の違い

通常の水素(オルト:パラ=3:1)とパラ水素は異なる物性値を有しています。それぞれの物性値は下表のようになります。

まずは、水素ガスの物性値を記します。

水素ガスの各物性値

 

続いて、液化水素の物性値を記します。各物性値は沸点における液化水素の値です。

水素ガスとは異なりますので、混同しないように気をつけてください。

液化水素の各物性値

出典:水素エネルギーシステム vol.27 (2002) 水素の物性

物性の種類にもよりますが、意外と大きな差異があることが分かります。極低温で液化水素を扱うプラントでは、この物性値の差異が大きく影響します。

このようなプラントの設計で、この物性値の差異を十分に把握しておく必要があります。

オルト-パラ転移

上述した通り、水素が液化するような極低温(約-250℃)におけるオルト、パラ平衡比率は、ほぼ100%パラ水素です。

しかし、オルト水素からパラ水素からの転移速度は大きくなく、水素を液化温度まで冷却したとしても、すぐに100%パラ水素になるわけではありません

言い方と変えると、通常の水素(オルト:パラ=3:1)を冷却して液化したとしても、得られたばかりの液化水素のオルト、パラ比率は通常の水素と同じということになります。

時間が経過することで、オルト-パラ転移が起こり100%パラ水素に近づいていく(概ね数日かかる)のですが、オルト-パラ転移の際に転移熱が発生するため、その発熱により液化水素が蒸発してしまう、という問題が発生します。

補足:これは上記の物性値表のエンタルピーの項でも確認することができます。通常の水素よりもパラ水素の方がエンタルピーが小さいため、転移する時にエンタルピーの差分の熱量が転移熱として放出されることを意味します。

これは、水素プラント設計・運転、特に液化水素タンクでは問題となる現象です。せっかく液化した水素が転移熱により蒸発してしまうため、プラントの効率の悪化、タンク内圧力上昇による設計圧力超過の原因となります。



プラント設計、運転における対応

上記から、極低温の水素プラント設計、運転において問題となる特徴は、「オルト水素、パラ水素の比率が通常の水素(オルト:パラ=3:1)と異なるために、物性値が異なること」と「オルト-パラ転移による発熱が生じること」です。

そのため、特にプラント設計ではこれらの特徴を把握した上で設計に反映させなければなりません。

プラント設計のポイント

・ オルト水素、パラ水素の比率が通常の水素と異なるため、物性値が異なる
・ オルト-パラ転移による発熱

物性値については、プラント設計者(プロセスエンジニア)がその物性を適切に把握、プラント設計に反映することで対応可能です。

一方、オルト-パラ転移による発熱については、ハード面での対応をプラント設計に反映させなければなりません。

一般的な対応としては、異性化触媒反応器に水素を流通させて予めパラ水素に変換させることが挙げられます。

触媒反応により、瞬時にパラ水素に変換することが出来るため、転移熱による蒸発損失を抑制することが可能です。こちらの文献によると、触媒として鉄系、クロム系の常磁性物質が用いられることが多いです。

また、水素の液化装置の最大手のLinde社が出願している特許(特表2004-529307/水素液化方法及び装置)では、触媒反応器を用いてオルト-パラ水素比率を調整するシステムの提案がなされています。



まとめ

今回の記事ではオルト水素、パラ水素の物性及びプラントへの影響について解説しました。

他の流体では見られない、水素の重要な特徴の一つがオルト水素、パラ水素の物性です。これらの水素は通常の水素とは異なる物性を有しておるため、特に極低温で液化水素を扱うプラントの設計・運転において大きな影響を及ぼします。

特に「オルト水素、パラ水素の比率が通常の水素(オルト:パラ=3:1)と異なるために、物性値が異なること」と「オルト-パラ転移による発熱が生じること」この二つの特徴は必ずプラント設計に反映させなければなりません。

プラント設計のポイント

・ オルト水素、パラ水素の比率が通常の水素と異なるため、物性値が異なる
・ オルト-パラ転移による発熱

この記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

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  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在120記事、月1.8万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有/投資による資産形成もブログで報告。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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