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【ポンプ】ポンプ運転時の注意事項と保守について

今回の記事ではポンプを運転する時の注意事項と保守について解説します。

ポンプの種類と選定についてはこちらの記事を参照ください。

ポンプはプラント機器の中では回転機(Rotating Machinery)に分類され、運転時は絶えずインペラーが回転、あるいはシリンダーが摺動し続けていることから、熱交換器、ドラム、タンクなどの静機器と比較して、性能不良や故障が起きやすい機器です。

設計、調達、試運転においては、知識と経験が必要とされることもあって、エンジニアリング会社では、回転機専属のエンジニア(回転機エンジニア)を配置している所もあるほどです。

しかし、適切に運転、保守されていれば故障トラブルのリスクは限りなく低減することが可能です。

次項から、ポンプ運転時の注意事項と保守について解説していきます。

運転時の注意事項

ポンプ運転時の注意事項は以下の通りです。

ポンプ運転時の注意事項

・異音
・動力の過負荷(過少負荷)
・軸受け温度の異常
・圧力計の異常
・真空計の異常
・電流計の異常
・試運転時の注意事項

それぞれについて解説します。

異音

故障が発生し、運転継続不可能となる前は、必ず異音が生じます。そのため、見た目の運転(圧力、流量)に異常は無くても、異音が聞こえた場合は必ずどこかに故障(或いはその前触れ)が発生しています
(逆に言うと異音が発生していなければ、そのポンプは適切に運転されている。)。

代表的な異音の例としては、キャビテーションの発生、インペラーの損傷、異物や空気の噛みこみ、ベアリング不良などです。

これらの異音を異音と認識するためには、正常時の運転音を知らなければなりません。そのためには、定期的に現場を巡回して正常時の運転音を体で覚えることを心がけます。

ツールとして有名なのは聴診棒です。回転機の周りは相対的に騒音が大きいので、聴診棒を使って、ポンプの異音を確かめます。

最近ではスマート聴診棒と呼ばれるスマホアプリも登場しています。今後はこのようなアプリの進化に伴い、人間よりも正確な判定ができるようになるでしょう。

動力の過負荷(過少負荷)

ポンプでは決められた圧力、流量を設計点として、その時の効率が最も良くなるように設計されます。そのため、動力も適正な動力が決まっています。

動力が大き過ぎる(過負荷)、小さすぎる(過少負荷)状態で運転している場合は、ポンプのどこかに無理がある状態なので、故障の引き金となります。

過負荷と過小負荷の原因としてよく挙げられる項目は以下の通りです。

過負荷

過負荷の原因

・圧力過大(設計よりも高い圧力で運転。配管の閉塞。吐出側バルブ開け忘れ)
・流量過大(設計よりも多すぎる流量で運転。)
・機械的な損失(グランドパッキンの締めすぎなど)
ポンプ選定の誤り

過小負荷

過小負荷の原因

・インペラーへの異物付着、摩耗
・ケーシング詰まり
・シール不良
・キャビテーション(吸込側の圧損大。ストレーナー閉塞。吸込側バルブ開け忘れ)
・ポンプの空引き運転
・呼び水の不足
・逆回転

軸受け温度の異常

軸受けはポンプの回転軸の荷重を受ける部分なので、必ず摩擦熱が発生します。

通常では周囲温度+40~50℃程度(JIS)が正常なので、ぎりぎり素手でも触れる温度が軸受け温度の正常な温度です。

運転時間にもよりますが、軸受け温度の異常の原因は以下の通りです。

軸受け温度異常の原因

・潤滑油(Lube Oil)の劣化、不足
・潤滑油の循環系統の不良
・ベアリングと軸のズレ、心出し不良

圧力計の異常

圧力計表示が高すぎる

原因は以下の通りです。

圧力高の原因

・吐出側バルブの締め切り運転
・吐出側配管の詰まり
・圧力計の不良
・安全弁の不良
・ポンプの選定、設計ミス

ポンプの締め切り運転と設計圧力の関係についてはこちらの記事でも解説しています。

圧力計表示が低すぎる原因は以下の通りです。

圧力低の原因

・回転速度の低下
・インペラーや吸込側の詰まり
・空引き運転
・ポンプの選定、設計ミス

圧力計の針が振れる場合は、キャビテーションの発生や空気の噛みこみを疑ってください。

真空計の異常

真空計表示が高すぎる

原因は以下の通りです。

真空度高の原因

・吸込側(井戸)の液レベル低下
・吸込側の詰まり
・冬季の油など、気温低下による粘度の上昇

真空計表示が低すぎる原因は以下の通りです。

真空度低の原因

・吸込側(井戸)の液レベル上昇
・インペラーやギヤの摩耗
・パッキンの破れ

真空計の針が振れる場合は、キャビテーションの発生や空気の噛みこみを疑ってください。

電流計の異常

電流計表示が高すぎる

原因は以下の通りです。

過大電流の原因

・電圧低下
・流量増加
・揚程(ヘッド)増大

電流計表示が低すぎる原因は以下の通りです。

過小電流の原因

・電圧上昇
・流量減少
・揚程(ヘッド)減少

試運転時の注意事項

プラントの改造、新設の案件で、ポンプを設置し、試運転を実施する際には、特に以下の項目に気を付けて下さい。

試運転時の注意事項

・空転をさせないこと
・回転方向を確認すること
・バルブ開閉の順番に注意すること
・圧力計、真空計、電流計を確認すること
・異音有無、振動、軸受け温度に注意すること
・試運転レポート(性能表)作成

特に間違えやすいのが、バルブ開閉の順番です。遠心ポンプとレシプロポンプでは順番が異なります。

遠心ポンプはバルブを締め切った状態で起動し、徐々にバルブを開けていきます。

一方、レシプロポンプはバルブ全開の状態で起動します。

ポンプの保守、管理

ポンプを長期間安定運転するために、代表的な点検項目を以下に挙げております。これは最低限の項目なので、対象となるポンプの要求に応じて、追加、削除して下さい。

特に、腐食性の流体やスラリー流体のように、腐食、摩耗のリスクが大きいポンプについては、定期的な全分解による、インペラーやケーシングの点検を注意深く行ってください。

代表的な点検項目

毎日の点検項目

・軸受け温度
・吸込、吐出圧力
・潤滑油温度、圧力
・漏れの発生有無(ポンプ本体か配管か)
・流量
・パッキンからの漏れ有無
・冷却水温度(入/出)
・ポンプと原動機(motor)軸受けの油面
・オイルリングの動き
・異音有無

毎月の点検項目

・軸受け温度
・ポンプと原動機の直結状況

季節毎の点検項目

・軸受けのすきま(クリアランス)のチェック
・グリースの変質有無

半年毎の点検項目

・グランドパッキンの劣化有無
・軸封(軸スリーブ)の状況
・潤滑油の変質有無、油面の確認
・配管の支持(配管サポート)の状況

1年毎の点検項目

・ポンプ全分解(オーバーホール)
※すべてのポンプが1年おきに分解する必要はない。
・インペラーウェアリング、ケースウェアリングのすきま(クリアランス)チェック
・計器類(圧力計、電流計、温度計など)の校正

消耗部品の管理

ポンプは長期間運転すると摺動部には必ず摩耗が生じます。

これにより、性能の低下、故障の原因となるため、定期的な消耗部品の交換が必要となります。

消耗部品の適切な交換タイミングを把握するためにも、所定の用紙に継続的な記録をとるなど、きめ細かな管理が必要です。交換部品はリスト化しておきましょう。

まとめ

この記事ではポンプ運転時の注意事項と、長期間安定運転するための保守、点検項目について解説しました。

ポンプはプラント機器の中では、比較的性能不良や故障が起きやすい機器ですが、適切に運転、保守されていれば故障トラブルのリスクは限りなく低減することが可能です。

ポンプの試運転や保守、点検計画の作成の際はぜひ参考にして下さい。

こちらの記事を合わせて参照ください。

この記事が役に立てば幸いです。それではまた他の記事でお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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