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【ポンプ】遠心ポンプの締め切り圧力(Shut-off Pressure)とは?設計圧力との関係

今回は遠心ポンプ(Centrifugal Pump)の締め切り圧力(Shut-off Pressure)と設計圧力との関係について解説します。

なお、この記事で云う「設計圧力」とはポンプ前後配管やバルブの設計圧力のことを指します。

設計圧力については、こちらの記事も参照ください。

締め切り圧力(Shut-off Pressure)とは?

遠心ポンプは流量とヘッド(≒吐出圧)が逆相関関係にあり、流量が多くなるとヘッドが小さくなり、流量が少なくなるとヘッドが大きくなります。

これらの関係を図で表したものを性能曲線(Performance Curve)と呼び、ポンプを購入する場合は、必ずポンプのベンダーから受領するものです。

通常、ポンプの設計は効率が最もよくなる点を定格点(Rated Point)として設計されます。

この定格点からずれた領域で運転すればするほど、効率が悪くなり、プラントの運転コストの増加、トラブルの原因につながります。

 

定格点から流量が少なくなり、流量=0となった状態の運転を締め切り運転と呼び、この状態で配管、バルブにかかる圧力を締め切り圧力(Shut-off Pressure)と呼びます。

例えば、ポンプ運転中、吐出側のバルブを全閉してしまった場合、流量が0になりますから、締め切り運転になってしまいます。

実際は吐出側のバルブを締め切り運転にならないように、ミニフローラインが設置されます。ミニフローラインは吐出側~吸込側を繋げる小径配管で、ポンプが締め切り運転にならないよう、常に一定量流し続ける配管です。(通常は制限オリフィスを入れることが多いですが、ポンプ容量によってはミニフローラインに制御弁を置いて流量を制御することもあります。)
この記事では締め切り圧力を主眼に置いて説明しておりますので、ミニフローは考慮せずに解説しています。

性能曲線を見ても分かる通り、ポンプ廻りでは、締め切り圧力が最も大きい圧力になりますので、この圧力に耐えうる設計圧力でなければなりません。

 

なお、締め切り運転状態になると、圧力だけでなく、温度も上昇します。温度が上昇することで内部流体が気化し、空引き運転になりポンプの摺動部の焼き付き、破損に至りますので、締め切り圧力に耐える設計圧力だったとしても、この運転状態は回避しなければなりません。

締め切り圧力がかかる範囲

この図の中で着色した範囲すべてに締め切り圧力がかかると考えます。

吐出側

考え方としては、

・安全弁などによる圧力上昇の保護がされていない配管
・バルブを閉めることでポンプ吐出~そのバルブまで流量が0になる

この条件が当てはまれば、締め切り圧力がかかると考えます。

実際の運転でそのようなことになるのは考えにくいですが、設計上はどれだけ範囲が大きかろうと、締め切り運転になり得ると考えた方が自然と思います。

吸込側

考え方としては、

・ポンプが予備機を持っており、Stand-byのポンプがある。(例えば2機のポンプがあり、1機は運転、もう一機はStand-by)
・Stand-byのポンプが自動起動のため、吐出側のブロック弁が開

この条件があてはまれば、吸込側のブロック弁も締め切り圧力がかかると考えます。

例えば、予備機の吸込側ブロック弁を閉めてしまい、吐出側のどこかのバルブを閉めてしまうと、予備機の吸込側まで締め切り圧力がかかります。
(実際には運転中、そんな操作をすることは考えにくいですが)

設計圧力の決定方法は?

設計圧力は運転中に到達し得る最高の圧力(最高使用圧力)ですから、設計圧力=締め切り圧力としたくなりますが、実際にはポンプのインペラ許容製作誤差(Performance tolerance)を考慮する必要があります。

ポンプの能力(ヘッド)はインペラの大きさで決まりますが、インペラの大きさは必ずしも設計図面通りでなく、ある程度の製作誤差が認められています。

この製作誤差により、ポンプヘッドが性能曲線よりも大きくなり、締め切り圧力も大きくなる、という考え方です。

そのため、設計圧力を決める時は、性能曲線上の締め切りヘッド(締め切り圧力)にPerformance  tolerenceを考慮した係数をかけた数値を上乗せする必要があります。
(ただし、実測値の締め切り圧力が分かっている場合は設計圧力=締め切り圧力にしても問題ありません)

 

これらのPerdormance ToleranceはJISAPIで規定されており、一例を挙げると以下の通りです。

JIS B 8301_遠心ポンプ,斜流ポンプ及び軸流ポンプ―試験方法

一般のプロセスポンプ(2B等級):5%
ボイラ給水ポンプ、循環ポンプ、一部のISO13709に準拠するポンプ(1B等級):3%

API610_Centrifugal pumps for petroleum, petrochemical and natural gas industries

ポンプヘッドが;

0~75m:10%
75m~300m:8%
300以上:5%

従って、設計圧力を求めるときは、締め切り圧力に上記のPerdormance Toleranceをかけた数値をかけた数値を上乗せします。

ここで挙げたのは一部の規格ですので、実際の業務では対象としているポンプが何の規格に基づいて購入しているか確認し、その規格で規定されているPerformance toleranceを確認してください。

まとめ

遠心ポンプ(Centrifugal Pump)の締め切り圧力(Shut-off Pressure)と設計圧力との関係について解説しました。

ポンプベンダーから性能曲線を受領したら、

①締め切り圧力がかかる範囲を確認
②その範囲に対し、締め切り圧力にPerdormance Tolerance分を上乗せする

 

この手順で設計圧力を求めます。

しかし、通常の設計では性能曲線を受領する前に配管、バルブの設計圧力を決めていることも多いと思います。

基本的には性能曲線を受領した段階で設計圧力を変えてしまうと、プラント設計全体へのインパクトは避けられないので、できるだけ避けるべきです。

 

そのため、プラント設計初期段階でポンプ廻りの設計圧力を決める時は、特別に高めの設計圧力を設定しておき、後から変更されることを防ぐようにします。

この時の考え方(設計圧力の決め方)は別記事にて解説したいと思います。

この記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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