今回は遠心コンプレッサーのサージングとその対策方法について解説します。
ガスを扱うプラントでかつ大規模なプラントであれば、必ずといっても良いほと遠心コンプレッサーが用いられます。遠心コンプレッサーの設計、運転ではサージングに対する考慮は無視することが出来ない重要な要素です。
コンプレッサーを設計する回転機エンジニアだけでなく、プラント全体を設計するプロセス設計エンジニア(プロセスエンジニア)にとってもサージングの知識は必須となっています。
次項からサージングとその対策について解説していきます。
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サージングとは
プラントで使用される各種コンプレッサーの中で、遠心コンプレッサーは、回転数が一定の場合は流量と吐出圧(ヘッド)の相関は右肩下がりの曲線になります。(性能曲線)
言い換えると、流量が大きくなると吐出圧が小さくなり、流量が小さくなると吐出圧が大きくなります。
これは遠心ポンプも同様の相関を示しますが、遠心ポンプは流量を0にすると締め切り状態にはなるものの、直ちに損傷に至ることはありません。
補足:遠心ポンプが締め切り状態になると締め切り圧力がかかるため、周囲配管はこの圧力に耐えるような設計圧力にしなければなりませんし、プラント運転に異常をきたしている状態には変わりないので、何らかの対策、措置は必要です。
一方、遠心コンプレッサーはある流量(サージング点)まで流量を下げると、流れが不安定になり、逆流を起こしたり、順流と逆流を繰り返す、といった現象を起こします。これがサージング(Surging)と呼ばれる現象です。
遠心コンプレッサーにサージングが発生すると、インペラやケーシングの破損といったコンプレッサー自体の故障、損傷を引き起こします。一般的なプラント設計ではコンプレッサーは予備機を持たないので、コンプレッサー自体の損傷はそのプラントが長期的に運転できないことに繋がりますので、なんとしても避けなければなりません。
そのため、万一サージング領域での運転となってしまうことがあれば、直ちにコンプレッサーをトリップさせてプラントを緊急シャットダウンすること、コンプレッサーを損傷から守ります。
サージングの対策
サージングを発生させないようにするための対策としては、アンチサージライン(Anti-Surge Line)と呼ばれるコンプレッサーのバイパスラインを設置し、アンチサージ制御を行うことが一般的です。
この図のようにコンプレッサーの流量や圧力(吸い込み側/吐出側)を読み取り、回転数制御とバイパス制御を組み合わせてアンチサージ制御を行うことが一般的です。
例えば、回転数制御では流量やヘッドを調整しやすく、下図のように、回線数を変更するとサージジング点が変わるため、これを制御することでサージングを回避することが可能です。この時、駆動源は蒸気・ガスタービンや可変速駆動モーターが使用されます。
また、それぞれの回転数に応じたサージング点を繋いだ線をサージライン(Surge Line)と呼ばれます。
バイパス制御においては、アンチサージコントローラーからの出力をアンチサージラインの調節弁(アンチサージバルブ)が受け取り、そのバルブが開くことで吐出側~吸い込み側の循環流量が確保されるので、サージ点から離れた所で運転を継続することが出来ます。
ただし、アンチサージバルブが開くということは、コンプレッサー上流側で何らかの異常が発生し、コンプレッサーへの流量が低下している状況であるため、決してこの状態を放置して良いのではなく、早期にその異常の解決が必要となります。
まとめ
今回は遠心コンプレッサーのサージングとその対策方法について解説しました。
ガスを扱うプラントでかつ大規模なプラントであれば、必ずといっても良いほと遠心コンプレッサーが用いられます。遠心コンプレッサーの設計、運転ではサージングに対する考慮は無視することが出来ない重要な要素です。
コンプレッサーは予備機を設置することはあまりないので、運転中の損傷はなんとしても避けなければなりません。そのため、
①サージングが発生しそうになれば直ちにトリップさせること
②サージングを発生させないようなシステムにすること
上記が遠心コンプレッサー設計の上で重要な要素になっています。
コンプレッサーを設計する回転機エンジニアだけでなく、プラント全体を設計するプロセス設計エンジニア(プロセスエンジニア)にとってもサージングの知識は必須となっています。
この記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。