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【圧縮機】コンプレッサーの設計の留意点について解説

今回の記事ではコンプレッサー(圧縮機)の設計の一般的な留意点について解説します。

コンプレッサー(圧縮機)は特にガスを取り扱うプラントでは最重要の機器で、長納期品でもあるため、プラント設計の中でもかなり早い段階で設計が始まります。また、大物機器であるがゆえに、一度仕様が決まってしまうと、その後の設計変更が非常に難しいため、慎重に設計しなければなりません。

そこで本記事ではコンプレッサーの設計、仕様決定をする上で留意しておくべき項目について解説します。

主な留意点

・ プロセス条件の確認
・ 機械設計条件の確認
・ 形式、台数選定
・ 駆動機の選定と運転制御方法の確認

次項からそれぞれの留意点について解説します。

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プロセス条件の確認

流量の確認

ガスが中心となるプロセスのマテリアルバランスDryベースの流量で記載されていることがありますが、これは水分を除いた流量なので、水分が存在するプロセスの場合、実際の流量は水分を含んだ、すなわちWetベースの流量となります。

コンプレッサーの仕様書にDryベースの流量を記載してしまうと、過小な流量で設計してしまうことになるので、型式選定ミス、フレーム選定ミスといった設計ミスの原因となります。コンプレッサーの設計時は流量がDryかWetか確認し、必ずWetベースの流量を記載する必要があります。

また、流量の単位にも要注意です。kg/h、m3/h、Nm3/hは混同しやすく、特に実体積流量のm3/hと標準体積流量のNm3/hは混同しやすいので注意する必要があります。

所要動力、所要ヘッド、吐出温度の確認

一般的に、遠心式を想定した場合は、体積流量からポリトロピック効率を仮定し吐出温度を把握、レシプロ式の場合は、断熱圧縮による温度変化を把握することが重要です。特に吐出温度によってガスの性状が大きく異なったり、好ましくない反応(重合など)が起こる場合は要注意です。

この確認、検討を行うことで、コンプレッサーの中間冷却(インタークーラー)要否や段数を把握することが出来ます。また、 この検討が所要動力に影響することもあり、基本設計における重要検討事項と言えます。

運転変動度合いの確認

吸込、吐出圧力の変動度合い、吸込温度、ガス分子量の変動の度合いを把握しておくことは重要です。

コンプレッサーの設計者はプラントの運転条件をしっかりと把握し、想定される上記の運転パラメータの変動に対応できるようににする必要があります。特にガス分子量の変動は見過ごされやすいので注意が必要です。

プラントの運転モードの把握

プラントはスタートアップ、触媒再生運転などの様々な運転モードがありますが、コンプレッサーはこれらの運転モードに対応できるような設計である必要があります。通常の運転モードと異なる場合、ガス組成、温度、圧力、流量レンジも大きくことなる場合があるため、このような運転モードでも対応できるのか事前に確認しておく必要があります。

例えば、プレコミッショニングで窒素を使って試運転するときに、全く異なる成分のガスで設計されたコンプレッサーの場合では、ガス分子量が大きく異なることで運転範囲を超過し、上手く試運転できないことがあります。

機械設計条件の確認

運転時の温度・圧力だけでなく、脱圧時の温度・圧力が機械設計に影響する場合があります。特に高圧の系の場合は急減圧により急激に温度が低下し、設計温度を下回る恐れがあります。

機械設計上は、吐出温度上限、吐出圧力上限(通常、安全弁が設置されるため設定圧力))が支配的になり、コンプレッサーの軸シールの設計条件に影響を及ばすことも多いです。場合によつては、機械設計の制約により、運転範囲が制限されてしまう場合もあります。

そのため、上述のプロセスの特性だけでなく、コンプレッサーの機械設計上の制約との相関を十分理解して、定格条件、運転範囲を決定する必要があります。

形式、台数選定

型式選定

コンプレッサーはまずは流量によってタイプが決定されますが、よく選定されるタイプと流量範囲は次の通りです。

遠心式:吸込流量ベースで200,000m3/h~300,000m3/h程度(メーカーによっては~400,000m3/h)、吐出流量ベースで200~300m3/h程度(メーカーによっては~200m3/h)

軸流式:吸込流量ベースで400,000m3/h~700,000m3/h程度

レシプロ式(往復動式):吸込流量ベースで~12,000m3/h程度

スクリュー式:レシプロ式と遠心式の中間程度

圧力比については、各段の圧力比は3程度が、段数は3-4段が一般的です。吐出圧力は遠心式では~35MPa程度、レシプロ式では100MPa程度が上限となります。

上述で確認したプロセス仕様から、吸入体積流量、吐出体積流量、ヘッド、吐出温度、所要動力を推定し、ガス分子量変化、類似仕様における過去実績も参考にコンプレッサーの型式を選定します。

また、レシプロ式、スクリュー式を選定する場合は、オイルフリー(給油式)で問題ないか、無給油式を選定すべきか、プラントのプロセス要求を再確認する必要があります。吐出温度はオイルフリー式が150℃未満、無給油式が120℃未満が一般的です。

台数の選定

コンプレッサーの設計において、台数の選定、すなわち予備機の考え方はプラント建設費に大きく影響します。

予備機についてはこちらの記事を参照ください。

どんな機器に予備機は必要?プラント機器の予備機の考え方について解説

仕様の決定

タービン駆動を採用予定の場合は、そのタービン出力・最適回転数、モーター駆動を採用する場合は、モーターの出力に対応する回転数上限がコンプレッサーとの構成を決める主要因となります。

基本設計(FEED)といったプラント設計の初期では、次のような検討が実施されます。

・ 仮のコンプレッサー仕様条件(吸込、吐出温度、圧力など)から吸込体積流量とポリトロピックヘッドを計算して、コンプレッサ選定、(インペラ径を設定)して、所要動力と回転数を推定する。
・ インペラ流量係数、マッハ数、周速、段数を計算、想定したインペラ径で妥当なコンプレッサー型式が選定できるかをチェックする。
・ 駆動機の出力・回転数と上記コンプレッサー型式から妥当なコンプレッサー構成が可能か検討を行い、その結果をプロセス設計にフィードバックし、コンプレッサー仕様条件を調整する。

駆動機の選定と運転制御方法の確認

駆動機には大きく分けてタービン駆動とモーター駆動があります。

タービン駆動

出力は蒸気タービンの場合は最大50MW程度、小型機では1MWもあります。ガスタービンの場合は最大45MW程度、小型機では2MW程度です。蒸気タービンについてはコンプレッサーの定格動力の110%以上とすることが一般的です。

回転数は大型機では3000rpm~4000rpm程度、小型機では12000rpm~150rpm程度が一般的です。タービンには通常オーバースピードによるトリップ(緊急停止)が設置されますが、通常は最高運転回転速度の110%に設定します。

レシプロ式コンプレッサーをタービン駆動とする場合は、減速ギア、カップリングの選定も検討する必要があります。

また、蒸気タービンや機械駆動用2軸式ガスタービンを選定する場合は回転数制御を行うことが一般的ですが、吸込側にインレットガイドベーン(IGV)を設置して流量や吐出圧制御を行うこともあります。

モーター駆動

モーター駆動の場合、コンプレッサーとモーターのトレーン構成は一般的に次のようになります。

・ 遠心圧縮機、スクリュ圧縮機+増速ギア+電動機
・ 遠心圧縮機、スクリュ圧縮機+電動機(直結)
・ 往復動圧縮機+減速ギア+電動機(小型機のみ200KW未満)
・ 往復動圧縮機+多極電動機(直結)

出力によって次のようなモーターが選定されます。

・ 10MW未満:誘導モーター
・ 10MW~ 20MW:誘導モーター 或いは同期モーター
・ 20 MW以上:同期モータ~

回転数制御を行う場合はVFD(Variable Frequency Drive)モーター、可変速トルクコンバーターを設置します。また、回転数を固定し、吸込配管に制御弁を設置してその開度により流量制御を行うこともあります。

まとめ

今回の記事ではコンプレッサー(圧縮機)の設計の一般的な留意点について解説しました。

主な留意点

・ プロセス条件の確認
・ 機械設計条件の確認
・ 形式、台数選定
・ 駆動機の選定と運転制御方法の確認

本記事が参考になれば幸いです。では他の記事でお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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