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【蒸留塔】簡単に蒸留分離段数の目安を計算する方法の解説

こんにちは。Toshi@プラントエンジニアのおどりばです。

今回の記事では簡単に蒸留分離段数の目安を計算する方法について解説します。

蒸留塔の段数計算はMaCabe-Thiele法(マッケーブシール法)の階段作図による図解法などで手計算で求めることができますが、実際の業務では時間を要するため、手計算で段数計算を行うことはあまりありません。

手計算の代わりに用いられる手法としては、Aspen+やPRO/IIなどに代表されるプロセスシミュレーターで段数を計算することがほとんどです。

しかし、これらのプロセスシミュレーターは自動で段数計算を行ってくれるのではなく、あくまでユーザー側が入力した段数に基づいて、出口組成や温度分布などを計算し、目的の計算結果となるようにユーザーが段数を調整する、という手順になります。

そのため、初期インプットとしての分離段数がユーザー側で決定しなければなりませんが、これはユーザーの経験、類似プラントの情報、過去実績に基づいて決定されることが多いです。

そこで、今回の記事ではそのような情報がなくても、簡易的に蒸留分離段数を計算する方法について解説します。当然この計算方法はある程度の誤差を含んでおりますが、プロセスシミュレーションの初期インプットや蒸留塔の概略設計を行う上では十分な精度です。

さらに、目的成分の分離方法として蒸留が適当か否かの可否判定も行うことが出来るので、プロセスエンジニアとしては是非知っておきたい内容です。

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連続蒸留塔

連続蒸留塔の分離段数の目安は以下の計算式で求めることができます。

<連続蒸留塔>

$$N_a=\frac{1350}{ΔT}$$

Na:蒸留塔の実段数
ΔT:分離成分の沸点の差

計算例

計算例としてメタノール-水系を連続蒸留塔で分離する時の段数を計算してみます。

メタノールと水の沸点はそれぞれ以下の通りです。

沸点

メタノール:64.7℃
水:100℃

この情報を基に連続蒸留塔の実段数を計算します。

$$N_a=\frac{1350}{ΔT}=\frac{1350}{100-64.7}≒38.2$$

よって、メタノール-水の2成分系を連続蒸留塔で分離するために必要な実段数はおよそ38段程度になると予想されます。

 

この結果を初期段数としてプロセスシミュレーターで厳密に段数計算を行う場合は、理論段に変換する必要があります。

こちらの記事でも解説しておりますが、実段数=理論段÷0.7程度なので、

$$理論段=38\times0.7=26.6$$

理論段は26段~27段としてプロセスシミュレーターに入力すれば良いです。

蒸留分離の可否判定

なお、この計算方法を知っておけば、目的成分の沸点差さえ分かれば、蒸留塔による分離が妥当かどうか一瞬で判断できるようになります。

例えばある異性体(沸点差6℃)を分離したい場合、分離段数を計算すると以下の通りになります。

$$N_a=\frac{1350}{ΔT}=\frac{1350}{6}=225$$

蒸留塔で必要な分離段数は225段となり、あまりに段数が多すぎて非現実的となるため、蒸留による分離が不適切であることが分かります。

このように、文献を調査したりプロセスシミュレーターを使用しなくても、蒸留分離の可否判定が可能となります。

補足:この例で挙げた目的成分はパラジクロロベンゼンとオルトジクロロベンゼンです。実際には、これらの成分は晶析により分離されています。

注意点

注意点は以下の通りです。

注意点

・理論段数ではなく実段数の目安を計算する式であること。

・相対揮発度が大きい成分では精度が落ちること。

実際に業務で使用する際は上記を念頭に入れておいて下さい。



バッチ蒸留塔(回分蒸留塔)

バッチ蒸留塔の理論段数の目安はRoseの関係と呼ばれる計算式で求めることができます。

<バッチ蒸留塔>

$$N=\frac{2.85}{\log_{10}{α}}$$

N:理論段数
α:相対揮発度

バッチ蒸留のため、塔内の温度は経時的に変化し、相対揮発度も変化しますが、軽い成分の沸点と重い成分の沸点それぞれにおける相対揮発度の幾何平均を使用すれば問題ありません。

計算例

ベンゼン-トルエンの2成分系をバッチ蒸留で分離する時の分離段数を計算します。

なお、相対揮発度は以下の通りとします。

相対揮発度

80.2℃(ベンゼンの沸点):2.6
110.6℃(トルエンの沸点):2.32

まず相対揮発度の幾何平均を計算します。

$$α=\sqrt{2.6\times2.32}=2.46$$

続いて分離段数を計算すると以下の通りになります。

$$N=\frac{2.85}{\log_{10}{α}}=\frac{2.85}{\log_{10}{2.46}}≒7.29$$

よって、ベンゼン-トルエンの2成分系をバッチ蒸留塔で分離するために必要な理論段数はおよそ7段程度になると予想されます。

注意点

注意点は以下の通りです。

注意点

・理論段数の目安を計算する式であること

・原液の目的成分組成が10~90mol%であること

・算出された理論段数はオーバースペックになることが多いこと

こちらについても、実際に業務で使用する際は上記を念頭に入れておいて下さい。

まとめ

今回の記事では簡単に蒸留分離段数の目安を計算する方法について解説しました。

<連続蒸留塔>

$$N_a=\frac{1350}{ΔT}$$

Na:蒸留塔の実段数
ΔT:分離成分の沸点の差

<バッチ蒸留塔(Roseの関係)>

$$N=\frac{2.85}{\log_{10}{α}}$$

N:理論段数
α:相対揮発度

これらを知っておくと、沸点の差や相対揮発度といった容易に入手できる情報のみで、電卓だけで蒸留分離段数の目安を計算することが可能です。

また、目的成分の分離方法として蒸留分離が適当か否かの可否判定も瞬時に行うことができます。

プロセスの概念設計や蒸留塔のシミュレーション、概略設計を行う際では有用な手法となるので、役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

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  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在100記事達成。月1.6万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有/投資による資産形成もブログで報告。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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