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【配管】プラントの配管設計における一般的な留意事項について解説

今回の記事ではプラントの配管設計における一般的な留意事項について解説します。

プラントの配管設計では、プロセス要求を満足し運転しやすいこと、安全性を考慮し万一の事故でも被害を最小限にすること、機器のメンテナンスしやすいこと、これらを満足しつつ建設費をできるだけ低減することが求められます。

このような配管設計を行うためには、配管設計担当者・土建設計担当者だけでなく、P&IDを作成するプロセスエンジニアにおいても配管設計における留意事項を知っておく必要があります。

一般事項

原則としてプラント内の配管は、水系統は下水配管とし、その他のものは地下配管とせず地上配管とします。このとき、配管ルートはそれぞれの配管が出来るだけ短く、かつポケット構造ができないようにします。またパイプラックなどで複数の配管が並列になる場合は操作性、メンテナンス性を考慮して、幅は20%程度の余裕をみておくことが必要です。

さらに、電気計装のためのケーブルを通すためのスペースを確保することも忘れてはなりません。特にレシプロ圧縮機の吐出配管は振動トラブルのリスクがあることから、パイプラックに乗せる場合はできるだけ単独配置とすることが推奨されます。

配管サポート

プラント内の配管は東西に走るものと南北に走る配管とが交錯しており、東西に走っている配管が南北の方向に曲る場合もあるので、配管の方向変更があっても干渉を防ぐために、高さを配管サポートで調節する必要があります。高さの差は0.6m~1mが一般的ですが、このとき出来るだけポケット構造にならないようにします。どうしてもポケット構造が出来てしまう場合は、液ポケットにはドレン抜き、ガスポケットにはベント抜きを設置します。

保温材が巻かれた配管については、パイプシューを設置して高さを調節します。ただし、この場合は配管の管壁とパイプシューとの間に働く熱応力が管材の許容応用を越えないように注意が必要です。

冷却水配管など、地下配管とする場合は深さは0.6m程度が一般的です。ポンプ室や建家内で、床より低く配管を設置する場合はトレンチ(溝)を設けて、トレンチの床から50mm程度上に配管を設置し、トレンチにはグレーチングで蓋をすることが一般的です。

ドレン、ベント

プラント機器ノズルの高さ関係の違いなどの配管レイアウトの制約により、どうしても液ポケットやガスポケットができてしまうことがありますが、このようなポケット部にはドレン弁、ベント弁を設置する必要があります。これらは液抜き、空気抜きに使用され、サイズは0.75インチで十分なことが多いですが、配管・機器の構造上、液・ガスのボリュームが多いときは大きめのサイズにする方が便利です。

また、ドレン弁、ベント弁は操作しやすい場所に設置することも忘れないようにします。

バルブのタイプはゲート弁が一般的ですが、グローブ弁の方が低コストの場合はグローブ弁を採用することがあります。

ドレン弁、ゲート弁は通常は大気開放ですが、プロセス流体が危険物の場合は、クローズな系(液であれば地下タンクなどのブローダウンシステム、ガスであればフレアー系統)に接続することを検討します。

配管の熱膨張

プラント内の配管は運転中に高温となるものも多くあるため、熱膨脹(熱伸び)を考慮した設計にすることが重要です。対象となる配管は通常運転で高温となる配管はもちろんのこと、通常運転では常温でも非定常操作(蒸気パージなど)で高温になり得る配管に対しても考慮することが必要です。

熱膨張に対する配管設計で最も一般的なのは、熱膨脹による配管長の伸びを逃がすような配管レイアウトとすることです。具体的には、配管を方向変換すること、つまり配管ループや曲げ構造とすることで熱膨張による応力(熱応力)を吸収できるように設計することです。

熟膨脹の計算を行う時は、固定点を設け熱応力が接続機器に悪影響を与えないように注意します。特に、蒸留塔のような機器は塔自体も周囲配管も高温となり、それぞれの機器、配管で熱伸びがあるので、充分に検討してから固定支持点の条件を決める必要がります。また、配管の伸びによって配管が跳び上らいように、適切なガイドをつける必要があります。

スペースの制約によってループ構造、曲げ構造にできない場合や、熱応力が接続されている機器ノズルに伝わってしまい許容応力を超えてしまう場合等には、伸縮接手(エキスパンションジョイント)の適用を検討します。ただし配管接手によってはプロセス流体の漏れリスク増大や、建設費増大につながるので、配管接手の採用については配管エンジニアとプロセスエンジニアがよく協議して要否を決定する必要があります。

蒸気配管

蒸気をメイン配管から分岐させるときは蒸気ヘッダーを設けその上部から分岐配管を取り、分岐配管の立上り部より高い場所にバルブを設置します。バルブは分岐配管のメイン配管の近傍と、蒸気ユーザー機器の調節用の最低二か所に設置する必要があります。バルブは操作性、メンテナンス性を考慮した場所に設置することも忘れないようにします。

蒸気タービンに接続する場合は蒸気による配管の熱伸びがタービンのノズルに影響しないように特に注意して配管サポート設計を行うことが重要です。配管サポートによる対応が難しい場合は伸縮接手(エキスパンションジョイント)の適用を検討します。また、この配管は比較的大口径となることが多く、蒸気供給時はバルブの差圧が大きすぎて開けることが難しくなるため、1インチ程度のバイパス弁(均圧弁)の設置も検討します。

蒸気トラップ

蒸気配管中の蒸気に凝縮水が発生してしまうと、蒸気のユーザーに対して悪影響(特に蒸気タービン対してはタービンブレードに破損につながる)があるため、凝縮水を除去するためのドレンポットと蒸気トラップの設置が必須となります。

ドレンポットは通常40-60mに1箇所程度の割合で設置し、ポットの側面から蒸気トラップに接続され、その蒸気トラップから凝縮水を除去します。ポットの底部から接続してしまうと、鉄さびなどの異物でトラップ行き配管が閉塞する可能性があるので、底面から接続することは避けるようにします。

蒸気トラップで回収された凝縮水は、その蒸気配管と同じ圧力を有しているため、その凝縮水を低圧蒸気ラインに接続し、低圧蒸気として再利用することを検討します。例えば、3MPaの高圧蒸気配管の蒸気トラップで回収された凝縮水を低圧蒸気配管(0.5MPa)に接続して低圧蒸気として用いることがあります。ただし、低圧蒸気配管からの距離が遠い場合は、経済性を考慮して凝縮水を大気に放出することもあります。このとき、必ずトレンチで放出する必要があります。

蒸気トレース

蒸気をヒートトレースの熱源として用いる場合は、0.5インチ~0.75インチ程度のチュービングと配管に沿わせる施工を行います(蒸気トレース)。蒸気トレースでも凝縮水が発生すると配管の保温効果が落ちるため、蒸気トラップを設けることが必要です。蒸気トラップは、0.5インチの蒸気トレースであれば30m程度、0.75インチであれば407m程度のスパンで設置することが一般的です。

その他ユーティリティ配管

水配管

大口径の冷却水配管のメイン配管は埋設配管とすることが一般的です。地上配管の場合、冬季に凍結を防ぐため、ヒートトレースを施工するか、底部にドレン弁を設置してプラント停止時に脱液できるように配慮します。

また、ガスポケットができないような配管レイアウトにすることが理想的ですが、どうしてもガスポケットが出来る場合は空気抜き弁を設置します。

ホースステーション

工水・圧縮空気・低圧蒸気などのユーティリティは、プロセス配管とは別にプラント内の雑用サービス(清掃、洗浄など)のためにホースステーションを設置することで供給できるようにします。一般的にホース長さは15m程度なので、ホース長さやプラント内の機器配置を考慮して、ホースステーションを配置を決定します。

これらのユーティリティのホース接続口は0.75インチが一般的です。

熱交換器周りの配管

熱交換器周りの配管は熱交換器を分解して内部清掃や点検作業を行うのに邪魔にならない様に配慮する必要があります。具体的には、多管式熱交換器であれば熱交換器の管板を取り外すスペースを確保したり、U字管型であればチューブバンドルを引き抜くためのスペースを確保するような配管レイアウトにします。

熱交換器をクーラーやコンデンサーとして使用する場合、冷却水は出来るだけ下から入れて上部から排出するようにし、冷却水流れが止まっても空にならないようにします。また、熱交換器内部の冷却水を脱液できるように、必ずドレン弁を設置します。

熱交換器のチューブ破損などによる漏洩を検知したい場合は冷却水配管にサンプリングのための口を設置することもあります。また、冷却水配管に安全弁破裂版を設置することもありますが、要否は熱交換器の設計圧力によって決まります。

圧縮機周りの配管

圧縮機にプロセス流体の凝縮水(コンデンセート)が入ってしまうと圧縮機の損傷につながってしまうので、必ず避けるように配管設計を行います。例えば、上流側にノックアウトドラムを設置し、気液分離を確実に行い、ガス配管に対しては保温やヒートトレースを施工するなどで凝縮水が発生しないようにします。空気圧縮機であればドレンポットやドレン弁をつけて、定期的にドレン抜きを行えるようにします。また、メイン配管から圧縮機行き配管に分岐させるときは、メイン配管の上部から分岐させることも必要です。

圧縮機の起動、停止時の操作をしやすくするため、圧縮機まわりのバルブ、計器はなるべくまとめて配置するようにします。また、吸込配管は施工時に内部清掃を十分に行うことの他、テンポラリーストレーナを設置することを検討します。このとき、ストレーナを取り外しやすいような配管レイアウトとする必要があります。

レシプロ圧縮機については振動によるトラブル発生のリスクが高いことから、配管の固定サポートを設置したり、圧縮機自体の基礎と配管の基礎を可能な限り分けるようにします。また、吐出配管を架空配管とせずに地上置きをすることもあります。

ポンプ周り配管

ボンプのような回転機はメンテナンス頻度が多いため、ポンプの分解点検のためのスペースや、吸い込み側に設置するストレーナを取り外しスペースも考慮必須です。

吸い込み配管

ボンプの吸い込み側配管はキャビテーションやガス嚙みこみが発生しないように最短距離かつガスポケットが出来ないような配管レイアウトにします。また、偏流を極力抑えるため、吸い込み配管のバルブたエルボから吸い込みノズルの必要直管長にも気を払う必要もあります。特にポンプが複数台の場合は必要直管長がとりずらい場合が多いので、より慎重な配管設計が必要です。

また、吸い込み配管の最も低い箇所にはドレンを設置して脱液できるようにします。

吐出配管

遠心ポンプやギヤポンプに対しては、ポンプ急停止時の逆流を防ぐため、吐出配管に逆止弁を設置します。また、吸い込み配管同様、脱液用のドレン弁を設置します。

吐出配管に対しては、ポンプの吐出圧を監視する目的で圧力計を設置することが一般的です。

加熱炉周り配管

加熱炉については、バーナーを炉から取り外ししやすいような配管レイアウトにします。また、加熱炉は覗き窓から燃焼状態を確かめるため、燃料調節用のバルブはできるだけ覗き窓の近くに設置します。

燃料ガスは各バーナーに均ーに流れる様にメイン配管からの分岐を考えます。また、ドレンが枝管に入らないように、メイン配管からの分岐は上部から取り出すようにします。ただし燃料が液体の場合は分岐配管は側部、下部から抜き出しても構いません。燃料油配管については行き止まり配管を避け、循環できるような配管レイアウトにします。

加熱炉の加熱管との接続配管は熱伸びの考慮が必須です。加熱炉出口の接続配管がコークなどで閉塞が懸念され、定期的な清掃が必要な場合、清掃しやすい配管レイアウトにします。清掃時などは過熱感の内部流体を抜かないといけないので、安全に抜けるよう、ブローダウンシステムへ接続することが望ましいとされています。

塔槽類周り配管

塔槽類の中でも特に蒸留塔の塔底液は沸騰状態になっているので、塔底液配管をポンプに接続する場合は有効NPSHがポンプ必要NPSHを上回るよう、高さ関係や圧力損失に注意を払って配管設計を行います。さらに、塔底液は高温になっていることも多いので、熱伸びなども考慮必須です。

塔槽廻りの配管で塔槽側に仕切弁をつける場合は出来るだけ塔槽に直接つけるようにします。ただし、蒸留塔の凝縮器に行く蒸気ラインやリボイラにつながる配管のバルブは例外です。

蒸留塔の供給配管や還流配管には逆止弁を設置することがありますが、仕切弁の手前の水平部に設置します。リボイラの戻り配管には逆止弁は不要です。また精溜塔の操作圧が0.1MPa以下の場合は逆止弁は設置しないことが多いです。

塔槽類まわりの垂直配管のサポートは直接塔槽からブラケットを取って固定する方が、ストラクチャーからサポートを取るよりも優れています。

地上置きの塔槽類にはスカートが設置されることがありますが、スカートがある塔槽類で底部からの抜出配管に仕切弁を設置する場合は、できるだけスカートの外の設置する必要があります。また、フランジもできるだけスカート内部は設置しないように配慮します。

一般に、塔槽類の周りには安全弁を設置することが多いですが、安全弁の二次側はフレアーに接続する場合と大気放出する場合があります。基本的に危険物や可燃性ガスはフレアーに送られますが、可燃性、毒性が低い流体の場合は大気放出にします。大気放出する場合は、適当な高さまで放出口を導き、放出立上り管の底部に6~10mm位のweep holeを設置します。(雨水の排水のため)

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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