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化学プラントにおける各機器の一般的な省エネルギー対策

 

今回の記事では化学プラントにおける一般的な省エネルギー対策について紹介します。

国内の石油、化学プラント業界では過去数十年に渡って継続的に省エネルギー対策が実施されてきました。今後も脱炭素の観点から、省エネルギー対策はますます重要になってきます。また、省エネルギーとは即ちプラント運転コスト(OPEX)の削減にもつながるため、省エネルギー対策はコストダウンの観点からも重要で施策になると言えます。

そこで本記事ではプラントを構成する主な機器(特にエネルギーを多く消費する機器)につて、一般的な省エネルギー対策事例について紹介します。

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ボイラ・加熱炉・フレアスタック

ボイラ、加熱炉フレアスタックについては以下の通りです。

設備・プロセス改善

・空気予熱器の設置
・バーナーを低過剰空気仕様に変更して空気比の低減
・スートブロアの設置、付着ダストの除去
・ダクトダンパーの操作性改善
・加熱管を裸管からフィン付きに変更
・炉内面キャスターのセラミックライニング
・制御用酸素濃度計の設置
・空気入口ダンパーの設置
保温材の交換、保温厚み増加
・製品冷却空気の燃焼利用
・エコノマイザーの設置
・廃熱ボイラ設置
・ボイラ蒸気のスーパーヒータ設置
・ボイラ給水に予熱器設置
・廃熱回収によるプロセス流体加熱、燃料予熱
・フレアーガスからの炭化水素回収
・フレアーガスの燃料利用
・炉壁の空気リーク防止
・耐火材の保守

運転管理改善

・過剰空気制御システム導入
・排ガス酸素濃度の目標値厳密化
・噴霧用スチームの流量、圧力低減
・燃料添加剤の適正利用
・燃料のLHV(発熱量)平準化
・ダンパーの開度適正化
・燃料のヒートトレースの適正化
・保全サイクルの適正化
・使用燃料の適正化
・ボイラ稼働台数の適正化

蒸留塔・吸収塔

蒸留塔、吸収塔などの各種の塔については以下の通りです。

設備・プロセス改善

・トレイを低圧力損失タイプに変更
・原料供給段の最適化
・フィード分配器の改善
・中間リボイラ、サイドリフラックス増設
・保温材、範囲、厚みの強化
・供給段にオーバーフラッシュモニター設置
・ホットチャージの採用
・リボイラ熱源に廃熱利用
・リボイラ熱源すりーむの圧力適正化
・ヒートポンプによる塔頂蒸気の潜熱利用
・エジェクターによる低圧スチームの昇圧熱の利用
・トレイ、充填物の汚れ除去

運転管理改善

・内部還流制御の導入
・還流量の低減
・操作圧力の適正化
・ストリッピング蒸気の削減
・吸収剤、抽出剤の低減、適正化
・オーバーフラッシュ量の低減
・製品構成、仕様の適正化
・保全サイクル適正化

反応器

反応器については以下の通りです。

設備・プロセス改善

・反応器の形式、段数適正化
・保温材、範囲、厚みの強化
・連続触媒再生の採用
・触媒再生ガスの廃熱利用
・付着カーボンの汚れ除去

運転管理改善

・反応条件最適制御システムの導入
・リサイクルガス比の低減
・反応温度、圧力の適正化
・触媒の種類、充填量の適正化
・反応生成物の要求仕様条件の適正化
・触媒再生サイクルの適正化

熱交換器

 

熱交換器については以下の通りです。

設備・プロセス改善

・廃熱回収熱交換器の新設、増設
・チューブの形式を裸管からフィン付きに変更
・チューブピッチの短縮
・チューブ配列の変更
・バッフルの変更
プレート式熱交換器の積極採用
・保温材、範囲、厚みの強化
・ヒートインテグレーションの採用
・熱回収の組み合わせ変更
・冷却水の直列利用
・チューブの汚れ除去

運転管理改善

・熱回収系の流量配分の適正化、制御システム導入
空冷式熱交換器の可変ピッチ導入による自動制御化
・汚れ防止剤の適正利用
・冷却水の出口温度適正化
・プロセス流体の出口温度適正化
・空冷式熱交換器のファンピッチ、ルーバー開度適正化
・冷却塔(クーリングタワー)の出口温度適正化
・保全サイクル適正化

回転機

ポンプ圧縮機タービンなどの回転機については以下の通りです。

設備・プロセス改善

・ポンプのインペラのカット
・ポンプ形式の適正化
・可変駆動モーター採用(VVVF制御)
・流体クラッチ採用
・ハイドロリックタービンによる動力エネルギー回収
・膨張タービンによる圧力孔恵右rぎー回収
・駆動媒体(モーター/タービン)変更
・タービン形式(背圧タービン、復水タービン)の適正化

運転管理改善

・回転数制御の導入
・稼働台数自動制御システムの導入
・圧縮機操作条件(温度、圧力、流量)の適正化
・タービン回転数の適正化
・タービン背圧の適正化
・稼働台数の適正化

真空設備

真空設備については以下の通りです

設備・プロセス改善

・真空方式(真空ポンプ/エジェクター)の適正化
・コンデンサーの形式適正化
・エジェクターの台数、段数適正化

運転管理改善

・サーフィスコンデンサーの汚れ除去、空気リーク防止
・エジェクターの清掃
・エジェクター蒸気の温度、圧力適正化
・運転圧力の適正化

ユーティリティ設備

その他ユーティリティ設備(用役設備)については以下の通りです。

真空設備については以下の通りです

設備・プロセス改善

・コジェネレーションシステムの最小
・低圧蒸気タービンの採用
・マイクロガスタービン発電の採用
・吸収式冷凍機の採用
・燃料電池の採用
・タンク、ダクト、配管における保温強化(範囲、保温材種類、厚み)
・スチームコンデンセートからのボイラ給水回収
・プロセス排水の再利用

運転管理改善

・保温状況の適切なメンテナンス
蒸気トラップの適切なメンテナンス
・ユーティリティバランス(蒸気バランス、水バランスなど)の適正化
・照明管理(範囲、照度)の適正化
・配管のヒートトレースの見直し、適正化
・タンク、ドラム保持温度の適正化
・設備稼働率の適正化

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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