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【熱交換器】空冷式熱交換器の設計の留意点について解説

今回の記事では空冷式熱交換器の設計の留意点について解説します。

空冷式熱交換器は、冷却媒体として無尽蔵に存在する空気を用い、冷却水が不要であるために、水が貴重な地域に建設されるプラントで多用される熱交換器です。

ただし、他のタイプの熱交換器と比較して、設計上考慮しなければならい留意点があります。

主な留意点

・ 空気の設計温度、汚れ
・ 空気の再循環
・ 季節の影響
・ 漏れ発生時のリスク
・ 運営費(OPEX)
・ その他(接地面積、気流の配分)

空冷式熱交換器はファンなどの回転体を有しているため、設計においては熱交換器(静機器)だけでなく、回転機の知識も必要とされます。

次項から、それぞれの留意点について解説します。

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空気の設計温度、汚れ

経済的見地から、空冷式熱交換器の設計温度(最高)は設置場所の最高気温よりも5℃~10℃程度高くするのが一般的です。

基準となる最高気温は基本設計条項で定められた気象条件に従います。基本設計条項が無い場合は一年の中で最も暑い三ヶ月の毎日の最高気温の平均をとるか、その最高温度に5%程度程度余裕をみた温度を採用します。

空冷式熱交換器の設計においては、一般的に空気の汚れは無視して良いと言われています。

ただし、砂塵や昆虫などが熱交換器のフィンに付着して性能が落ちることがあるため、砂塵が多く発生する場所や昆虫が多い場所については、清掃を頻繁に行う、といった対策が必要です。

空気の再循環

排出された空気を循環させる方式を採用する場合は、空冷式熱交換器の周囲の気温は2℃~3℃程度上昇することが知られています。

そのため、このような方式を採用する場合は、この温度上昇を考慮して設計する必要があります。

また、熱交換器自身の排熱だけでなく、隣接する機器の排熱による熱風の影響も考慮しなければならないため、周囲の機器の配置条件も確認する必要があります。

なお、吸込み通風方式は押し込み通風方式よりも若干有利であると言われています。

季節の影響

冬季の運転では、プロセス流体が冷却されすぎて熱交換器の内部で凍結が発生したり、熱交換器のフィンで水分が凝結することがあります。

そうなると、適切な運転ができなくなり、故障や破損に繋がる恐れがあるため、ルーバーで通風量を調整したり、蒸気トレースで過度に冷却されることを防ぐ、といった対策が必要です。

また、夏季においても、強風や強雨が予想される場合は対策が必要になる場合もあります。

漏れ発生時のリスク

周囲環境への影響

熱交換器の破損(チューブラプチャー/Tube Rupture)等で、プロセス流体の漏れが発生した時、シェル&チューブ式熱交換器では、シェルかチューブのどちらかに流出し、系外には流出しないため、直ちに危険が発生することはありません。

補足:系外には流出しないものの、機器の破損という異常事態が発生していることには変わり無いため、そのような事態が発生したら直ちに対応が必要です。

一方、空冷式熱交換器では、プロセス流体の漏れが発生すると、漏洩物は空気中に飛散するため、火災や中毒のリスクが極めて高い状態となります。

そのため、万が一漏洩が発生した時を考慮して、装置はなるべく計器室から離れた場所に設置することを考慮する必要があります。

大気腐食

周囲の機器、配管からのガス抜きで、放出された腐食性のミストや蒸気が空冷式熱交換器に接触すると、これにより腐食することがあります。(大気腐食)

そのため、そのようなミスト、蒸気が接触しないように周囲の機器、配管のガス抜き箇所を決定する必要があります。

運用費(OPEX)

空冷式熱交換器は冷却水を使用しないため水冷のシェル&チューブ式熱交換器と比較して、30%~50%程度の維持費となります。

ただし、ファンの駆動のための動力費が必要となります。

その他

接地面積

空冷式熱交換器は水冷のシェル&チューブ式熱交換器と比較して大きな設置面積を必要とします。

プロセス条件が許せば、設置面積を節約するために、パイプラック上に設置することもありますが、空冷式熱交換器はシェル&チューブ式熱交換器よりも20%程度多い設置面積が必要です。

気流の配分

空冷式熱交換器のチューブバンドルを横切る空気の気流は不均一となります。特に大型の熱交換器となると、均一な気流となるように設計することは困難です。

そのため、実測値を基にスケールアップを行うような場合、熱伝達率は実測値よりも小さな値を用いて設計することが推奨されています。

また、なるべく気流を均等化するように、邪魔板を配置することも有効な対策となります。

まとめ

今回の記事では空冷式熱交換器の設計の留意点について解説しました。

空冷式熱交換器は、冷却媒体として無尽蔵に存在する空気を用い、冷却水が不要であるために、水が貴重な地域に建設されるプラントで多用される熱交換器ですが、他のタイプの熱交換器と比較して、設計上考慮しなければならい留意点があります。特に空冷式熱交換器は回転機の要素も有しているので熱交換器だけでなく回転機の知識も必要となります。

空冷式熱交換器を多用することで、プラント全体の冷却水使用量を抑えることができますが、その分ファンの駆動のための電力が多くなってしまうので、水と電気のどちらを優先させるか、顧客と協議して合意しておく必要があります。

この記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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