今回の記事ではプラントで使用されるポンプの種類と特徴について解説します。
ポンプはプラントでは必ずと言って良いほど用いられますが、普段はあまり意識しないかもしれません。
身の回りのポンプの種類の選定の背景を勉強してみたい方やポンプ選定・設計に悩んでいる方はぜひご一読下さい。
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プラントにおける代表的なポンプの種類は以下の通りです。
主なポンプの種類
①ターボ型ポンプ
- 遠心ポンプ
- 斜流ポンプ
- 軸流ポンプ
- 縦型ポンプ
②容積型ポンプ
- レシプロポンプ(往復式ポンプ)
- ロータリーポンプ(回転式ポンプ)
それぞれのポンプについての特徴、特に長所、短所について解説します。
ポンプの種類の選定にお悩みの方や、どのような種類があるか興味のある方は是非ご一読下さい。
ターボ型ポンプ
羽根車(インペラ/Impeller)を回転させることで、流体にエネルギーを与え昇圧する仕組みのポンプです。
ポンプの中では最も大流量に対応しており、幅広い吐出圧力に対応できるので、プラントの中では最もよく使用されているタイプのポンプです。
ターボ型ポンプの長所と短所は以下の通りです。
長所
・吐出圧が安定している
・スラリー液にも対応可能
・幅広い吐出圧に対応可能
・幅広い流量に対応可能。特に大流量に適する。
・回転数を高くすることができる。
・流量調整は吐出側のバルブ調整により容易
・遠心ポンプ、斜流ポンプであればわずかな期間の締め切り運転も可能
締め切り運転と設計圧力との関係については、こちらの記事を参照ください。
短所
・流体の粘度の影響を強く受け、粘度が高くなると(110cSt以上)ポンプ効率が著しく低下する。
・流量と吐出圧は性能曲線に従うので、吐出圧を大きくしようとすると流量が低下する。そのため、圧力変更範囲が狭い
・低流量では選定可能なモデルが限られる。
適用範囲
吸込側流量:~50,000 m3/h
吐出圧力:~50MPag
遠心ポンプでは、インペラ1枚あたりのヘッドは200~250m程度なので、これ以上のヘッドが必要となる場合はインペラの枚数を増やすことで対応します。
また、ターボ型ポンプは比速度によって、遠心ポンプ、斜流ポンプ、軸流ポンプが適用されます。
比速度とはポンプ流量Q、ポンプヘッド、回転数から算出できる速度で、これがタイプ選定の基準となります。
<比速度の算出式>
$$Ns=\frac{{n}\sqrt{Q}}{1.16H^{\frac{3}{4}}}$$
Q:ポンプ流量[m3/h]
H:ポンプヘッド[m]
n:回転数[rpm]
遠心ポンプ(渦巻ポンプ/Centrifugal Pump)
ケーシング(ポンプの外殻)内のインペラ(羽根車)に流体を流し、遠心力によって流体を昇圧するポンプを遠心ポンプと呼びます。
比速度が500~4200程度の場合は遠心ポンプが選定されます。
斜流ポンプ、軸流ポンプほどではないですが、幅広い流量に対応でき、吐出圧を高くできるので、プラントでは最も広く用いられます。
特徴
・性能曲線は比較的平坦である。
・短時間であれば締め切り運転が可能
・ポンプ流量と軸動力(shaft power)との相関は直線的
適用範囲
吸込側流量:~10,000 m3/h
吐出圧力:~50MPag
斜流ポンプ(Mixed flow Pump)
ポンプのインペラに対して、流体が斜め方向に流れる構造をしたポンプを斜流ポンプと呼びます。
遠心ポンプのようにインペラの遠心力を利用したものから、軸流ポンプのようにインペラの回転軸に沿って流れるものもあり、そのため遠心ポンプと軸流ポンプとの中間の特徴を持ったポンプです。
比速度が4200~9000程度の場合は遠心ポンプが選定されます。
遠心ポンプほど吐出圧を高くできないので、プラントでは排水処理などのO&U設備(Off site and Utility)で用いられます。
特徴
・性能曲線は遠心ポンプと比べてやや右下がりとなるが、軸流ポンプよりは平坦。
・短時間であれば締め切り運転が可能
・ポンプ流量と軸動力(shaft power)との相関は無く、軸動力はほぼ一定。
適用範囲
吸込側流量:~30,000 m3/h
吐出圧力:~0.5MPag程度
軸流ポンプ(Axial flow Pump)
インペラの回転軸に沿って流体が流れるポンプを軸流ポンプと呼びます。
比速度が9000~の場合は遠心ポンプが選定されます。
吐出圧は最も低いですが、大流量を流さないといけない、排水処理や発電所における川、湖からの水のくみ上げに用いられます。
イメージしやすいのは、池の水を全部抜いてみた番組で、水を抜く時のポンプでしょうか。
特徴
・性能曲線は最も右下がりになる。
・締め切り運転は負荷
・ポンプ流量と軸動力(shaft power)に対して軸動力は急こう配の右下がりで締め切り点付近では、軸動力も設計点の2倍程度になる。。
適用範囲
吸込側流量:~50,000 m3/h
吐出圧力:~0.3MPag程度
縦型ポンプ
遠心ポンプの運転で回避しなければならないのがキャビテーションですが、これを防ぐためにはNPSHA(ポンプ有効吸い込みヘッド)を高くしなければなりません。
キャビテーションとは
流体の蒸気圧が吸い込み側圧力よりも高くなって、気泡が発生する現象。これによりポンプの性能低下やエロージョンによる腐食、損傷が起こる。
通常は吸い込み側のタンク液面を高くするなどの対応で、十分なNPSHAを確保しますが、どうしてもNPSHAが十分に取れないときがあります。
その場合は縦型ポンプの採用を検討します。
縦型ポンプはポンプの吸込口が地面(接地面)より深い所にあるので、その分NPSHAを稼ぐことが可能です。
吸込側の圧力が低く、かつ流体の蒸気圧が高い工程で適用されることが多いです。
特徴
・設置面積が小さい
・メンテナンス時は、モーターを外してポンプを引き抜かねばならず、労力が大きい。
・ポンプシャフトを引き抜けるよう、上部に空間が必要でポンプ廻りの配管レイアウトが制限される。
・ポンプ自身のスラスト力(軸受け力)をモーター自身で受けなければならない。
容積型ポンプ
ポンプ内部の一定体積の空間に液を押し込んで行き、昇圧するポンプを容積型ポンプと呼びます。
液の押し込み方により大きく2種類に分類され、ピストンやプランジャーによる往復運動で押し込むポンプをレシプロポンプ(往復式ポンプ)、回転運動で押し込むポンプをロータリーポンプ(回転式ポンプ)と呼びます。
それぞれ、ターボ型ポンプでは対応ができない工程(特に流量小、吐出圧大)において適用されます。
レシプロポンプ(往復式ポンプ)
流量が小さすぎたり、吐出圧が高すぎて遠心ポンプでは対応できない場合はレシプロポンプを検討します。
プラントでは主にプロセスプラントで用いられますが、規模が比較的小さいプラントで多く用いられます。
レシプロポンプの長所と短所は以下の通りです。
長所
・流体の粘性による効率の低下が小さい
・幅広い吐出圧に対応可能
・吐出圧の調整範囲がしやすく、吐出圧が増加しても流量は変わらない。
短所
・脈動により吐出圧が変動するため、アキュムレータが必要となる場合がある。
・スラリーは使用不可
・大流量には適用できない。
・回転数は低回転数のみ。
・流量調整はバイパスラインの使用、回転数の調整、ストローク長さの変更など、やや複雑。
・締め切り運転になると、吐出圧が上昇し続けてしまい、機器損傷のリスクがあるため、安全弁必須。
適用範囲
吸込側流量:~1,000 m3/h
吐出圧力:~100MPag(理論上は上限なし)
ロータリーポンプ(回転式ポンプ)
レシプロポンプに適用される流量、圧力範囲で、レシプロポンプよりもメリットがある場合、あるいはデメリットが許容されないと判断される場合、ロータリーポンプが使用されます。
長所と短所は以下の通りです。
長所
・脈動を起こさず、吐出圧が安定している。
・流体の粘性による効率の低下が小さい。
・吐出圧の調整範囲がしやすく、吐出圧が増加しても流量は変わらない。
短所
・スラリーは使用不可
・大流量には適用できない。
・吐出圧をあまり高くできない。
・回転数は低回転数のみ。
・流量調整はバイパスラインの使用、回転数の調整など、やや複雑。
適用範囲
吸込側流量:~3,000 m3/h
吐出圧力:~20MPag程度
まとめ
代表的なポンプの種類について特徴、選定基準を解説しました。
主なポンプの種類
①ターボ型ポンプ
- 遠心ポンプ
- 斜流ポンプ
- 軸流ポンプ
- 縦型ポンプ
②容積型ポンプ
- レシプロポンプ(往復式ポンプ)
- ロータリーポンプ(回転式ポンプ)
ポンプの種類の選定にお悩みの方や興味のある方の参考になれば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。