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【タービン】化学プラントで使用される蒸気タービンの種類と特徴の解説

今回の記事では化学プラントで使用される蒸気タービンの種類と特徴について解説します。

化学プラントでは、蒸気タービンは発電機駆動用途だけではなく、ポンプ送風機、圧縮機の駆動機として使用されることが多いです。

もちろん、モーター駆動のポンプや圧縮機も多くありますが、蒸気タービン駆動を採用する最も大きな理由は、プラントの廃熱を利用したボイラーで生じた蒸気を使用することができるため、エネルギーの回収を効率良く利用することが出来るためです。

また、モーター駆動とは異なり、電力を消失しても蒸気が存在する限り運転を継続することができるため、プラント停電のような事態でも、安全に停止するだけの駆動力を確保することが出来るのも大きな理由です。

蒸気タービンの出力は様々で、ポンプ駆動用のような数十kWからエチレンプラントの圧縮機駆動用のような数十MWまで、様々な出力のものもあります。

また、化学プラントで使用される蒸気タービンは、可変速駆動機として使用されることが多く、回転数は1000rpm程度から15000rpm以上と幅広い速度範囲で使用され,、被駆動機側の様々な運転要求に柔軟に対応できるように設計されます。

 

蒸気タービンの設計についてはこちらの記事で解説しています。

 

駆動源となる蒸気の条件も様々なものがあり、例えばエチレンプラントの圧縮機駆動用タービンのような高出力タービンでは、数十MPa/500℃以上の高圧蒸気が使用されます。一般的な出力のタービンの蒸気では、数MPa/400℃程度の蒸気が使用されます。

化学プラントで使用される主な蒸気タービンの種類は次の通りになります。

主な蒸気タービン

・ 復水タービン(Condensing Turbine)
・ 背圧タービン(Back pressure Turbine)
・ 抽気タービン(Extraction Turbine)
・ 単段タービン(Single Stage Turbine)
・ 多段タービン(Multi Stage Turbine)
・ 単弁式タービン(Single Valve Turbine)
・ 多弁式タービン(Multi Valve Turbine)

それぞれ、プロセス条件から要求される出力やプラントの蒸気バランスの最適化によってタイプが決まります。

次項からそれぞれのタイプについて解説していきます。

復水タービン(Condensing Turbine)

出典:Research Gate

 

復水タービンは、タービンの排気圧力が大気圧以下になるようなタービンです。

タービンの排気は大気圧以下の蒸気ですが、この蒸気は温度、圧力が低いため使いみちがなく、復水器(Condenser)で冷却されて水に戻されます。この水はポンプにより昇圧され、ボイラ給水として再利用されます。

復水タービンは供給される蒸気が持っているエネルギーを最大限利用することができるため、出力が同じ他のタイプのタービンと比べて、蒸気消費量が少なくなります。

しかし、タービンの排気蒸気を冷却して水に戻すために、潜熱が捨てられてしまうため、他のタイプよりプラント全体の熱効率は低くなります。

また、蒸気圧力が低くなると、蒸気の体積が大きくなるため、インペラの大型化や排気フランジの大型化も必要となるので、タービン自体も大型になります。さらに、空気の混入を防ぐために、シール蒸気を供給するための蒸気ユニットが必要となることもあります。

一般に、復水タービンは大きな出力を要する大型の蒸気タービンで使用されることが多いです。

背圧タービン(Back pressure Turbine)

出典:science direct

背圧タービンは、タービンの排気圧力が大気圧を超えているタービンです。

排気蒸気はプラント内の別のユーザーに供給することが出来ます。一般的には排気蒸気は数気圧の「低圧蒸気(Low Pressure Steam(LP Steam))」となるため、蒸留塔リボイラの熱源や蒸気トレースに使用されることが多いです。

化学プラントの「低圧蒸気」は中圧、高圧蒸気を減圧弁によって減圧することで供給されますが、このような供給方法は熱効率が悪いため、背圧タービンの排気蒸気を「低圧蒸気」として使用することで、高い効率で「低圧蒸気」を得ることができます。

そのため、プラント全体の熱効率は復水タービンよりも高くなります。

しかし、タービン排気が比較的高い圧力、温度をもつために、タービン供給蒸気のエネルギーを最大限利用することができず、一定の出力を得るための必要蒸気消費量は復水タービンに比べて多くなります。

抽気タービン(Extraction Turbine)

出典:science direct

抽気タービンは背圧タービンの一種ですが、高圧蒸気が供給されたタービンの途中段から中圧蒸気を抽出して他のプロセスに使用されるタイプです。

抽出された中圧蒸気は一般的には数十気圧の過圧蒸気なので蒸気タービンの駆動源など、他のプロセスに利用することも可能です。

抽出されなかった方の蒸気はタービンの駆動源として利用され、大気圧以下の排気蒸気として排出されます。(復水タービンと同じ)

そのため、本来必要な出力に応じて蒸気を消費しつつ、他プロセスに必要な蒸気を必要な条件で供給することができるところに大きな特徴があります。

化学プラントでは蒸気バランスも複雑で、プロセスや機器の特徴に応じて様々な条件の蒸気が必要となるため、蒸気バランスの最適化のために抽気タービンが選定されることが多いです。

単段タービン(Single Stage Turbine)

出典:Research Gate

単段タービンは、供給される蒸気の熱エネルギーが小さい場合、常用でない場合、要求出力が小さく効率が重要でない場合などに使用されます。

化学プラントでは、油ポンプ、復水ポンプ等の補機駆動用として利用されることが多いです。また、高圧、中圧蒸気に余剰蒸気がある場合などは、小型の発電用タービンとして用いられ、プラント全体の熱効率改善を図ることもあります。

単弁単段タービンは比較的構造が単純なので、他のタイプと比べて取り扱いも容易である場合が多いす。

多段タービン(Multi Stage Turbine)

出典:EnviGen

多段タービンは、二段以上の段数を持つタービンなので、単段タービンと比較して大きな蒸気エネルギーを回収することができます。

化学プラントでは、中出力以上を求められる圧縮機や大型ポンプ、発電機などを駆動する蒸気タービンとして多段ビンが使用されます。

最適段数を用いることでタービンの効率を最大化することができますが、段数が多ければ多いほどロ―ターが長くなり、タービン全体の重量も重くなります。

多段タービンは、動翼のタイプにより衝動型のタービンと反動型のタービンに分けることができます。

衝動タービン

衝動タービンは動翼で蒸気の膨張を伴わない衝動翼を主体とするため、反動タービンと比べて少ない段数で慕気のエネルギーを回収することができます。

また、動翼で慕気の膨張を伴わないため、動翼の前後の圧力差が小さく、動翼先端における漏れは少ないという特徴があります。

反動タービン

反動タービンは、動翼で蒸気を膨張させた後、動翼出口において、蒸気の相対速度が上昇する反動翼を主体とするタービンです。

この蒸気の相対速度の上昇により反動力を生じることで、蒸気の流入による衝撃力を合わせて回転力に変換します。

力学的には、衝動タービンよりも反動タービンの方が効率が良い。

しかし、一段当たりのエネルギー回収量が小さいため、段数が多くなります。

また、動翼の前後の圧力差が大きく、翼先端からの漏れ量が多くなるため、運転やメンテナンスに注意が必要です。

単弁式タービン(Single Valve Turbine)

出典:Elliott

蒸気タービンは、タービン入口に設けられた蒸気加減弁にてタービンに流入する蒸気流量を調整し、タービンの回転数、出力を変化させますが、単体の加減弁のみで蒸気流量を調整するタイプが単弁式タービンです。

一般的にlよ効率が重要ではない機器や、運転点が一点しかない発電機駆動用などに用いらます。

 

単弁式タービンは、全負荷範囲において、一つの加減弁のみでタービンに流入する蒸気を制御します(絞り調速)。

運転点が単一である場合は、加減弁は全開付近で運転されるので損失が小さくなりますが、運転点が複数ある場合、中間開度で運転されることで、加減弁の絞りによる圧力損失は多弁式に比べて大きくなります。

多弁式タービン(Multi Valve Turbine)

出典:Linquip

多弁式タービンは、複数の加減弁を持ち、慕気流量を調整しているタービンです。

調速段ノズルをいくつかのセクションに分割し,その分割数と同じ数の加減弁を設置します(ノズル締切調速)。これにより、それぞれの運転点に必要な蒸気流量に従って、加激弁を順次開いていくことで蒸気流量を調整することができます。

単弁式タービンと比べて、部分負荷運転における加減弁全体の圧力損失を小さくすることが可能をです。

まとめ

今回の記事では化学プラントで使用される蒸気タービンの種類と特徴について解説しました。

プロセス条件から要求される出力やプラントの蒸気バランスの最適化によって様々なタイプがありますが、特に化学プラントでは、蒸気タービンは発電機駆動用途だけではなく、ポンプ送風機、圧縮機の駆動機として使用されることが多く、回転数は1000rpm程度から15000rpm以上と幅広い速度範囲で使用され,、被駆動機側の様々な運転要求に柔軟に対応できるように設計されます。

この記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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