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【計装】プラントで使用されるオンライン分析計 設計時の留意点について解説

今回の記事ではプラントで使用されるオンライン分析計 設計時の留意点について解説します。

オンライン分析計(オンラインアナライザー)は計器本体だけでなく、様々な配管、ユニットから構成されています。そのため、分析計の手配、設置を検討する場合は分析器本体の仕様を設計するだけでは不十分です。

分析計の種類・特徴についてはこちらの記事を参照ください。

分析計の手配、設置を検討する場合は、サンプリングシステム、キャリアガス、リファレンスガス、校正用ガスの供給システム、廃棄物の処理方法、ユーティリティの検討の検討も必要となります。

分析計 設計時の留意点

・ サンプリングシステム
・ キャリアガス、リファレンスガス、校正用ガス供給システム
・ 廃棄物の処理方法
・ 分析計へのユーティリティ

次項からこれらの留意点について解説します。

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サンプリングシステム

測定しようとするプロセスのサンプル取出し点(サンプリングポイント)から分析計ヘサンプルを移送する部分は、一般にサンプリングシステムと呼ばれています。

サンプリングシステムは、サンプル採取部分サンプル移送部分サンプルコンディショニング部分から構成されています。

サンプル採取部分

サンプル採取部分は主にプロセス配管からサンプルを取り出す部分です。

サンプルの取り出し方法は、配管にノズルを立てる方法が一般的ですが、配管中にプローブを挿入することもあります。

このプロープは、高粘性流体や大口径配管など、サンプルを採取しようとするプロセス配管内部で流体の成分分布が均ーでない場合に使用されます。

プローブの構造は、差し込んだ配管の上流側の側面に、1個または複数個の穴をあけたもの、スリットを設けたものなど、様々なものがありますが、プロセス配管との接続はフランジ接続になっており、取外し取付けが容易にできるようになったものが多いです。

サンブル移送部分

分析計本体は、容積重量共にかなり大きく、保守点検の頻度も高いので地上に設置される例がほとんどです。

また、分析計本体は防爆仕様になっていない(非防爆)であることがあるため、危険物流体を取り扱うプラントではプロセス配管付近(危険場所)に設置できないこともあります。

そのため、サンプル採取部分と分析計本体は離れて設置されることになります。

サンプル採取部分とサンプルコンディショニング部分(分析計本体)はチュービングで接続されますが、ある程度この移送ラインは長くなってしまいます。

移送ライン(チュービング)の長さが長くなると、サンプル採取から分析まで時間も長くなるため、検出の遅れが発生し、運転管理上問題になる場合があります。

特に、分析計を複数台設置する場合は、分析計本体を一か所にまとめて設置することもありますが、その分移送ラインも長くなってしまいます。だからといって、分析計を複数個所に設置するとプラントの配置計画にも影響するため、どちらを優先するか、都度検討する必要があります。

サンプルコンディショニング部分

サンプルコンディショニング部分はサンプル前処理部分とも呼ばれ、プロセスから取出したサンプルの状態を分析計本体の分析部が要求する条件に整えるために設置されます。

サンプルコンディショニング部分はフィルター、除湿器、気化器、圧力調整器、温度調整器、流量調整器等から構成されますが、分析計本体とは別に組ま
れる場合と、分析計本体と同じケースに組付けられる場合があります。

一般的には、サンプルコンディショニング部分は、分析計とまとめて発注されることがほとんどですが、使用者にて設計、設置ける場合にはメンテナンスを容易に行えるように配慮する必要があります。

特に、フィルターは交換頻度が高いのでフィルターケース構造の選定およぴ取付位置の決定には十分な配慮が必要です。また、システム内においてデッドポリュームがないこと、移送遅れを極力小さくすることに対しても配慮が必要です。

分析計はサンプルの流量、圧力、温度の影響を受け易く、わずかな運転変動や直射日光でも分析計の指示が変動するので注意が必要です。

キャリアガス、リファレンスガス、校正用ガス供給システム

キャリアガス、リファレンスガス

分析計の中でも、ガスクロマトグラフィーなど、キャリアガスやリファレンスガス供給システムが必要なものがあります。

キャリアガスは、サンプルの移送用として、リファレンスガスは校正用のペースガスとして使用されます。これらのガスは高い純度が必要とされる、ボンベから供給されることがほとんどです。

そのため、これらのボンベを使用する場合はボンベ置きの場所も検討しなければなりません。

ポンベは分析計の近く設置する場合と、1箇所にまとめて設置する場合とがありますが、どちらの場合でも、常時供給が可能なようにポンペは複数本置き、切替えが可能なようにヘッダー配管を設ける必要があります。

さらに、ポンペは高圧ガスの容器則が適用されるため、直射日光をさけるように屋根等の覆いを設け、 また温度の上昇を避けるため、散水設備も検討しなければなりません。

目盛校正用ガス

前項のキャリアガス、リファレンスガスの他に、分析計目盛り校正用のガスも必要となる場合があります。

校正用ガスは分析計の校正のために定期的に使用されますが、濃度既知のガスである必要があるため、このガスもボンベからの供給となります。

キャリアガス、リファレンスガス同様ボンベ置き場の検討も必要となる他、校正用ガスは使用期限が短く、残量が十分でも定期交換が必要となることもあるので、交換しやすい構成にする必要があります。

廃棄物の処理

分析計からは分析の終ったサンプルが排出されますが、 ほとんどの場合は大気圧に近い圧力となるので、ガスであれば大気(フレアー)への放出、液であれば排水溝(廃液回収システム)へ流されます。

排出配管の注意点は次の通りです。

排出配管の注意点

・ 配管の閉塞を避けるため、できるだけ配管を太くする。
・ 排出管への液溜まりを考慮して、液も排出できるようにする。
・ 排出先はなるべく圧力変動の少ない箇所にする。
・ 大気放出する場合は雨水が入らないような構造にする。
・ サンプル流体が毒性を持つなどの有害な流体であれば除害設備を設置する。

排サンプルの処理方法は検討が不十分となることも多く、上記のような検討の結果、分析計のコストが大きく膨らむこともあるので、なるべく早めに検討する必要があります。

分析計へのユーティリティ

分析計本体、サンプルコンディショニング部分、サンプル移送部分に対しては、水、スチーム、空気がユーティリティとして必要となることが多いです。

特にスチームは重要で、温度低下により凝縮、固結してしまうようなプロセス流体をサンプリング、分析する場合は、サンプル移送ライン(チュービング)をスチームトレース仕様にすることや、サンプルコンディショニング部分への連続的なスチームの供給が必要となります。

また、サンプルを冷却するための冷却水供給配管に対しても、冬季の凍結が想定される場合はスチームトレースが必要となる場合もあります。

まとめ

今回の記事ではプラントで使用されるオンライン分析計 設計時の留意点について解説しました。

オンライン分析計(オンラインアナライザー)は計器本体だけでなく、様々な配管、ユニットから構成されています。そのため、分析計の手配、設置を検討する場合は分析器本体の仕様を設計するだけでは不十分です。

分析計の手配、設置を検討する場合は、サンプリングシステム、キャリアガス、リファレンスガス、校正用ガスの供給システム、廃棄物の処理方法、ユーティリティの検討の検討も必要となります。

分析計 設計時の留意点

・ サンプリングシステム
・ キャリアガス、リファレンスガス、校正用ガス供給システム
・ 廃棄物の処理方法
・ 分析計へのユーティリティ

分析計の設計、手配時の検討に役立てて頂ければ幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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