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【計装】リーククラスとは?バルブの締め切りについての要求事項を解説

こんにちは。Toshi@プラントエンジニアのおどりばです。

今回の記事ではバルブの締め切りについての要求事項を解説します。

マニュアル弁調節弁によらずバルブの主な目的の一つは流体の流れを調整、遮断することですが、遮断することを主目的にバルブを設置する場合は、バルブの締め切りについての要求事項がバルブ選定において重要な要素となります。

残念ながら100%完璧に流体を遮断するようなバルブは存在せず、どんな精巧なバルブを設置し、そのバルブを閉にしても流体の漏れは発生してしまいます。

ただし、バルブの「漏れの度合い(締め切り性能)」は「リーククラス(弁座漏洩量)」として定量化されており、バルブごとにリーククラスが定められています。

そのため、プラント設計においては流体の性状やプラント運転思想に応じた適切なのリーククラスのバルブを選定する必要があります。例えば、プラントの運転の安全に大きく影響する場所には高いリーククラスが要求されることがあります。

そこで今回の記事では、バルブのリーククラス及び締め切りの要求事項について解説します。

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リーククラス(弁座漏洩量)とは

試験方法1:試験圧力は300kPa(3bar)~ 400kPa(4bar)の問か、または最大運転差圧が350kPa以下ならば最大差圧の±5%以内
試験方法2:試験圧力は購入者の仕様書に示された最大差圧の±5%以内

※リーククラスⅥの漏れ係数は下表の通りです。

リーククラス(Leakage Class)とは弁座漏洩量とも言われ、定められた試験方法によって測定された最大弁座漏れ量で規定されるバルブの等級のことです。

試験方法及びリーククラスはJIS B2005(IEC 60534)で定められており、リーククラスはⅠ~Ⅵまで規定されています。また、リーククラスの数字が大きいほど漏れが小さい(締め切り性能が高い)バルブです。

実際のの漏れ容量の試験では、アクチュエータを指定された運転条件に合うよう調整し、空気圧、ばね加重、その他の方法によって閉上部品を閉の位置とし、さらに必要な閉止推力または回転力を与えて調節弁の入り口側に試験圧力を加えた後、出口側からの漏れ量を測定します。また、測定する漏れ量は、漏れが一定になった時に行われます。

一般的に要求されるバルブのリーククラスは以下の通りです。

一般的なリーククラス

オンオフ弁:クラスⅤ or Ⅵ
調節弁:クラスⅣ

一般的にオンオフ弁は遮断弁で使用されますから、高い締め切り性能が必要となるため高いリーククラスが必要となります。

また、マニュアル弁でも設置目的によっては高い締め切り性能が必要になる場合もあります。そのような場合はP&IDで上にTight Shut Off(TSO)と表記し、高いリーククラス(クラスⅤ以上)のマニュアル弁を購入することもあります。

なお、Tight Shut Offをマニュアル弁に要求する際はバルブのタイプに注意してください。例えばゲート弁やバタフライ弁は比較的漏れやすいため、高いリーククラスが確保できず、ボール弁への変更が必要になる場合があります。

また、設計温度も注意する必要があります。

PTFEなどのソフトシート材は、締め切り性が良いため極低温では硬化してしまい、また高温領域でも溶けてしまうため、使用できる温度範囲が限られます。 そのような場合はメタルタッチを用いることを検討する必要があります。

液封サービス

ここでは液封サービスにおけるバルブの締め切り性能について解説します。

上図のように液体ラインのバルブが直列に設置されている場合、これらのバルブが閉になると、バルブ間の空間は密閉状態になります。

このとき、バルブ間のプロセス流体が、外気温等により気化すると、配管内の圧力が上昇、最悪の場合は配管もしくはバルブにダメージを与える可能性があります。

このような個所には、圧力逃し弁を設置することで閉じ込められた空間の圧力が上昇しても問題が発生しないようにする必要があります。 圧力の逃がし先については、通常は上流側につなげる事が多いですが、その妥当性についてはプロセス的観点から確認を行う必要があります。

LNGなどの気化しやすい液体(膨張する恐れのある流体)で使用するバルブ(特にボール弁やゲート弁)は、バルブ内の液封による異常昇圧の防止の為に高圧側にディスクホールを設けることがあります。

逆圧サービス

ここでは逆圧サービスの締め切り性能について解説します。

逆圧サービスとは、通常運転状態とは異なる条件下でバルブの下流側の圧力が高くなり、流れ方向の逆方向に圧力がかかってしまう工程のことです。上図では、通常運転では青矢印の沿って流れますが、設計圧力はバルブ下流側の方が高く、特定定条件では上図バタフライ弁の下流側の圧力が高くなり、赤矢印の方向に圧力がかかってしまいます。

このようなサービスのバルブの締め切りを考慮する際、締め切り圧がどちら側から掛かるかを確認する必要があります。

特に、バタフライバルブを使用している場合には、高圧側を指定する必要があります。(上図ではバルブの右側が高圧側)

締め切り圧はアクチュエータのサイズにも影響し、シール性を保つためにバルブ自体の設計も変わる可能性があるため、プロセス上流側の圧力だけでなく、下流側の圧力も考慮にいれて確認する必要があります。

まとめ

今回の記事ではバルブの締め切りについての要求事項を解説しました。

マニュアル弁調節弁によらずバルブの主な目的の一つは流体の流れを調整、遮断することですが、遮断することを主目的にバルブを設置する場合は、バルブの締め切りについての要求事項がバルブ選定において重要な要素となります。

バルブの「漏れの度合い(締め切り性能)」は「リーククラス(弁座漏洩量)」として定量化されており、バルブごとにリーククラスが定められています。(JIS B2005やIEC 60534で規定)

そのため、プラント設計においては流体の性状やプラント運転思想に応じた適切なリーククラスのバルブを選定する必要があります。

この記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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