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【計装】プラントで使用される自力式調節弁の種類と特徴の解説

こんにちは。Toshi@プラントエンジニアのおどりばです。

今回の記事ではプラントで使用される自力式調節弁(自力式制御弁)の種類と特徴について解説します。

自力式調節弁(自力式制御弁)は、圧力を制御するという目的では一般的な調節弁と同じですが、バルブの駆動源として、外部駆動源(空気圧やモーターなど)が不要で、設置する配管内の圧力そのものを利用する(自圧を利用する)ことに大きな違いがあります。

最もよく見かける例として、ガスボンベに設置されているレギュレーターですが、これもボンベ内の気体を減圧して供給圧を一定にするという点では自力式調節弁の一種とみなすこともできます。

プラントでは「減圧弁」として使用されることが多く、例えばタンクの窒素シール用の窒素供給ラインや分析計に供給するためのサンプリングラインに設置されます。

また、外部の駆動源を必要としない点では安全弁とも似ていますが、安全弁は系内圧力を「開放(Relief)」して配管、機器の損傷を防ぐことが目的に対し、自力式調節弁は系内圧力を「制御(Control)」してプラント運転を安定させる点で異なります。

自力式調節弁は系内の圧力そのものを直接駆動源として利用するため、一般的な調節弁と比べて構造がシンプルかつ安価というメリットがありますが、圧力制御範囲が狭いというデメリットがあります。

<自力式調節弁のメリット、デメリット>
○ 構造がシンプルかつ安価
✕ 圧力制御範囲が狭い

自力式調節弁には内部導圧式と外部導圧式の2つの種類に分けることができますが、プロセス設計者(プロセスエンジニア)がP&IDを作成する際は、プロセスの目的に応じて設置するタイプを決定しなければなりません。

次項からそれぞれのタイプの特徴、および自力式調節弁の設置例について解説します。

内部導圧式

内部導圧式はバルブの弁体内部の導圧管があり、バルブ二次側の流体そのものが導圧管を経由し、直接バルブのバネやダイアフラムに作用することでバルブ開度が調節されます。

最大の特徴は圧力変動に対する応答性が良いことです。そのため、自力式調節弁のタイプを検討する場合は、まず内部導圧式を検討することが多いです。

ただし、制御性があまり良くない点や、閉塞性・凝固性のある流体には適用できない、というデメリットがあります。

内部導圧式のP&IDシンボルは上図のものが一般的に使用されます。

外部導圧式

外部導圧式は、バルブ本体の外部にパイロット弁(Pilot Valve)を有し、パイロット弁の開閉によって生じる圧力(Loading Pressure)で本体となる自力式調節弁の開度を調整します。

パイロット弁に対してはバルブ本体の上流側からも導圧管が接続されており、その上流側の圧力によってパイロット弁の開度が調整されます。

補足:外部導圧式は安全弁の「パイロット式安全弁」よく似たしくみです。こちらの記事も合わせて参照ください。

このようにバルブの上流側、下流側の圧力それぞれの変動を精度よくバルブ開度調整に反映できるため、内部導圧式よりも圧力制御性が良いという特徴があります。また、閉塞性や凝固性のある流体にも適用することができ、内部導圧式よりも大きな容量に対応することも可能です。

ただし、外部導圧式は部品点数が多く、導圧管も必要となるため、高価となってしまう他に、計装工事が必要であること、メンテナンスのためのスペースも考慮しなければならないことに注意を払う必要があります。

外部導圧式のP&IDシンボルは上図のものや、更にバルブ上流側からの導圧管を追記したものが使用されることが多いです。

このようにP&ID上に表記しておくことで、上流/下流側の配管に導圧管を取り出すためのノズルが必要であることを表現する必要があります。

自力式調節弁の設置例

上述の通り、自力式調節弁はプラントでは減圧弁として使用されることが多く、代表例としてはオンライン分析計へのサンプリングラインに設置される減圧弁です。

分析計はサンプリング流体を一定圧力で供給する必要があるため、プロセス配管の圧力が多少変動したとしても、減圧弁となる自力式調節弁で一定圧力に減圧します。

さらに分析計の必要圧力は数気圧程度と、低圧~微圧程度の圧力のため、プロセス配管の圧力が高圧であれば、上図のように多段階で減圧する必要があります。

このようなラインでは急減圧による流体温度の低下に注意しなければなりません。マイナス数十度を下回る温度になると特殊仕様の調節弁が必要となり、対応できるベンダーが少なく、コストアップの要因となってしまいます。

プロセスの制約上、減圧による温度低下が避けられない場合は、サンプリングラインにヒーターを設置することや、ヒートトレースを施工するなどの配慮が必要となります。

まとめ

プラントで使用される自力式調節弁(自力式制御弁)の種類と特徴について解説しました。

自力式調節弁(自力式制御弁)は、内部導圧式と外部導圧式の2つの種類に分けられ、圧力を制御するという目的では一般的な調節弁と同じですが、バルブの駆動源として外部駆動源が不要で、設置する配管内の圧力そのものを利用する(自圧を利用する)ことに大きな違いがあります。

プロセス設計者(プロセスエンジニア)がP&IDを作成する際は、プロセスの目的や、それぞれの調節弁の特徴に応じて設置するタイプを決定しなければなりません。

この記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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