今回の記事では流量計の温圧補正と設置上の留意点について解説します。
流量計には測定原理の違いにより体積流量を計測しているものと質量流量を計測しているものがあります。
<体積流量を計測するタイプ>
・ 差圧式流量計
・ 電磁流量計
・ 超音波流量計
・ カルマン渦式流量計
・ 面積式流量計
・ タービン式流量計
<質量流量を計測するタイプ>
・ コリオリ式流量計
・ 熱式流量計
流量計のタイプ選定や設計時は、各タイプの計測方法の原理から、流体のどんな流量を計測しているか意識する必要があります。
特にプラント運転監視に要求される実用流量に変換するためには流体密度を考慮することが重要です。例えば、体積を計測する流量計を用いて質量流量を表示させたい場合、流体密度のとりかたで流量の指示値が大きく変わってしまいます。
流体密度はプロセス流体の温度、圧力で変動するため、設計値と異なる温度、圧力で運転すると設計通りに流量を計測することが出来なくなります。
これに対応するための制御方式が流量計の温圧補正です。通常、温度、圧力によって密度が大きく変動するガスや蒸気の流量計測では多く用いられます。
次項から温圧補正と設置上の留意点について解説します。
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温圧補正とは?
温圧補正の上図のように流量を計測したい流体の温度、圧力も合わせて計測し、その結果をDCS内部の補正演算機能(上図の「FY」)に温度と圧力の計測値読み込ませ、補正演算を行うことで補正値が得られます。この機能は標準的なDCSであれば一般的に搭載されています。
補正演算にあたってはボイル・シャルルの法則が適用されます。
$$\frac{P_1V_1}{T_1}=\frac{P_2V_2}{T_2}={Const.}$$
補足:ボイル・シャルルの法則は理想気体で成り立つ法則ですが、実際の補正においては圧縮係数zが考慮されます。
なお、天然ガスの流量計測においては、「JIS M 8010 天然ガス計量方法」でも規定されています。
温圧補正の要否
一般論としては、温度、圧力による密度変化が小さい液体ラインについては温圧補正は不要です。
ただし、全てのガス、蒸気配管の流量計測で温圧補正が必要となるわけではありません。
前項のように温圧補正を行うためには流量計の他にも温度計、圧力計を設置せねばならず、全ての流量計に温圧補正を実施するとプラント設計コストが増加してしまいます。
そのため、流量計の設置目的やタイプに応じて温圧補正要否を判断する必要があります。
例えばプロセスの途中にある流量計で、それほど精度が必要でない場合や温度、圧力が安定しているラインであれば、温圧補正を不要とすることも可能です。また、質量流量を直接計測するコリオリ流量計を設置して質量流量を表示させる場合は、原理上温圧補正は不要となります。
設置上の留意点
適切に温圧補正を行うためには、温度計、圧力計の設置位置が非常に重要となります。
理想的には流量計と同じ位置に温度計、圧力計を設置したいですが、流量計は前後にある程度の直管長が必要となるので、少なくともその長さを開けて設置しなければなりません。
・【計装】流量計のタイプ選定、設計時の留意点について解説
・【計装】電磁流量計の設置上のポイントについて解説
・【計装】渦流量計の設置のポイントについて解説
特に温度計は流量計からの距離が長いと放熱(放冷)により温度が変わりやすいので、誤差が生じる原因となります。そのため、温度計はなるべく流量計に近い位置に設置せねばならず、流量計の必要直管長が短い流量計の下流側に設置することが一般的です。
圧力計については流量計のタイプによって設置位置が異なります。
差圧式流量計の場合は流量計の圧力損失を考慮して上流側に設置します。一方、カルマン渦式流量計の場合、圧力タップを上流側に設置すると誤差の原因となるため、下流側に設置する必要があります。
まとめ
今回の記事では流量計の温圧補正と設置上の留意点について解説しました。
流量計の計測値をプラント運転監視に要求される実用流量に単位変換する時の重要パラメータが流体密度ですが、流体密度はプロセス流体の温度、圧力で変動するため、設計値と異なる温度、圧力で運転すると流量のずれが大きくなってしまいます。
これに対応するための制御方式が流量計の温圧補正です。特に温度、圧力によって密度が大きく変動するガスや蒸気の流量計測では多く用いられます。
ただし、全てのガス、蒸気ラインの流量計測で温圧補正を行うと経済的ではなくなるので、流量計タイプや設置目的に応じて設置要否を考慮する必要があります。
この記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。