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【計装】現場指示計はどこに設置するべき?設置基準について解説

今回は現場指示計(現場計器/現場型計器)の設置基準について解説します。

現場指示計は現場計器とも呼ばれ、発信機と共に設置される計器ですが、圧力・温度・液面・流量などの運転パラメータを現場で計測・表示するために設置されます。

しかし、現場指示計の設置基準については明確になっていないことも多く、担当者によって基準が変わってしまうこともあります。

プラント設計において、重要度が低く、検討の優先度が低くなりがちな現場指示計ですが、プラントの安定運転のためには重要な計器の一つです。

そこで、今回の記事では現場指示計はどこに設置するべきか、設置基準について解説します。

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圧力計(Pressure Gauge)

圧力計の現場指示計(Pressure Gauge)はプラントで最も多く使用される計器の一つです。

主な設置場所について解説します。

圧力発信機のバックアップ

圧力発信機(Pressure Transmitter)から信号を受け取り、DCSやPLCで圧力を監視する場合、発信機の故障や指示異常を考慮し、現場でも圧力が確認できるよう、現場指示計が必要となります。

もちろん、発信機には現場でも指示が確認できるものもありますが、発信機の指示値異常があれば、現場指示もDCS表示も同じ信号元なので異常を検知できないことになります。

そのため、圧力測定源が違う現場指示計があれば、その指示値と発信機の指示値を比較することで、故障、指示異常を早めに検知することが可能です。

特に、発信機は定期的なゼロ点調整を実施しないと、指示が狂ってくることがあるため、その調整のためにも圧力計の現場指示計を設置することはプラントの安定運転に繋がります。

ポンプの吸込圧、吐出圧確認

ポンプを起動する前は、吸込側の通液確認、吐出側のガス抜き、所定の吸込圧(NPSH)が確保されているかの確認が必要です。

ポンプのような回転機の起動は基本的に現場起動(プラントの思想によっては遠隔起動を認める場合もあり)なので、これらの確認のためには吸込側に圧力計の現場指示計が必要となります。特に、上流側が加圧条件で運転され、その圧力が下がればNPSHが足らなくなる可能性がある場合は必須です。

また、ポンプの吐出圧やモーターの電流値を現場で確認して、正常な運転状態を維持するためにも、吐出側にも現場指示計は必要です。

機器・配管の窒素パージ

プラントを停止した後や起動する前は、系内の窒素パージを行うことが一般的です。

窒素パージは非定常操作で、現場で操作して実施されることほとんどですが、機器・配管に適切に窒素が供給されているか、現場指示計の指示値を確認しながらバルブを操作します。

特に、機器・配管の設計圧力より窒素の供給圧力が高い場合は、操作を誤ると設計圧力を超過してしまうため、現場指示計の設置は必須です。

機器・配管の洗浄

プロセス流体が汚れやすい、あるいは機器・配管を閉塞させやすい性状を有している場合は、定期的な洗浄操作が行われます。

洗浄では蒸気を供給し、熱や蒸気の勢いで汚れや閉塞物を除去することが多いですが、特に閉塞物の除去においては除去確認のために圧力の現場指示計を見て判断することがあります。

バッテリーリミット取り合い

バッテリーリミット(Battery Limit)については、圧力発信機を設置してDCSやPLCで常時監視している場合はそのバックアップで現場指示計が必要となります。

発信機が設置されていない場合は、取り合い条件の定期確認のため、現場指示計を設置することが多いです。圧力の現場指示計については、プロセス流体の他、蒸気・水・計装空気・窒素などのほとんどのユーティリティの取り合い部に設置が必要です。

温度計(Temperature Gauge)

温度計(Temperature Gauge)もよく使用される現場指示計の一つです。

主な設置場所について解説します。

熱交換器周りの配管

熱交換器の前後配管には温度計を設置することで、運転状態の確認、あるいは熱交換器の性能確認を行います。

温度計の発信機を設置する場合は現場指示計の設置は不要とすることが多いですが、温度監視の重要度やプラントの建設コストとの兼ね合いで発信機を設置しない場合は現場指示計の設置が必要となります。

冷却水を用いる熱交換器の場合は、冷却水の入側の配管は運転状態によらずほぼ一定なので、冷却水ヘッダーの温度を測定していれば、熱交換器行きの個別配管の温度計の設置は省略することもできます。

運転状温度管理が必要な場所

温度が重要な運転パラメータの場合(フラッシュドラム・反応器などの機器周り、異なる温度の流体の合流部など)、温度補正が必要な流量計が設置されている場合、ESD/自動制御に関わるもの、法規上必要な場合などについては、温度計の発信機を設置することがほとんどです。

ただし、重要度や全体コストとの兼ね合いで発信機を設置しないこともあり、そのような場合は現場指示計の設置が必要となります。

バッテリーリミット取り合い

圧力計同様、バッテリーリミット(Battery Limit)について、温度計の現場指示計が必要となる場合があります。

ユーティリティ配管でも温度管理が重要な流体(蒸気、水)に対しては取り合い部に設置が必要です。逆に温度管理がそれほど重要でない窒素や計装空気については、取り合い部への設置を省略することができます。

液面計(Level Gauge)

液面計(Level Gauge)は気液を取り扱うドラム、タンクに設置される現場指示計です。

HAZOP studyやSIL studyなどのプラントのプロセス安全設計の観点から考えると、液面計を設置する場合は、同一の種類ではいくら多重化しても故障リスクを低減できないため、原則としてタイプが違う液面計を少なくとも2台設置することが要求されます。

基本的には液面計の発信機+現場指示計の組み合わせとなります。

現場指示計のレンジは発信機のレンジをカバーするようにノズル位置を決定します。

現場指示計と発信機のノズル位置の考え方についてはこちらの記事を参照下さい。

流量計(Flow Gauge)

流量計(Flow Gauge)は他の現場指示計と比較して設置することは少ないですが、流量計の現場指示計の主な設置場所について解説します。

微調整が不要なライン

プロセスの特性により、運転モードによって流量の変動が大きく、一つの調節弁では制御範囲を超えてしまうような場合があります。

そのような場合はCv値の異なる2台の調節弁を並列に設置することが通常ですが、細かい制御が不要の場合は現場指示計+グローブ弁の組み合わせで対応することもあります。

流れさえ確認すれば良いライン

熱交換器の冷却水配管など、流れていることが現場で確認できるだけで良いラインについては、発信機の代わりに流量計の現場指示計を設置します。このような流量計はフローサイト(Flow Sight)と呼ばれることもあります。

まとめ

今回は現場指示計(現場計器/現場型計器)の設置基準について解説しました。

現場指示計は現場計器とも呼ばれ、発信機と共に設置される計器ですが、圧力・温度・液面・流量などの運転パラメータを現場で計測・表示するために設置されます。しかし、現場指示計の設置基準については明確になっていないことも多く、担当者によって基準が変わってしまうこともあります。

プラント設計において、重要度が低く、検討の優先度が低くなりがちな現場指示計ですが、プラントの安定運転のためには重要な計器の一つです。

今回の記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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