今回の記事ではプラントで使用されるフレームアレスターの種類と選定時の留意点について解説します。
プラントで万一火災が発生した場合、消火を速やかに行うと共に、延焼を阻止することも重要です。特に可燃性流体を取り扱うプラントでは、配管やタンクに延焼することで壊滅的な被害を引き起こす可能性もあります。
そのため、このようなプラントでは、火災の延焼を防ぐ目的でタンクや配管にフレームアレスターを設置することが多くあります。
フレームアレスターは、国内では主に大気開放となっているベントスタックやタンクの通気管に設置することで、系内の可燃性流体に火炎、火の粉が侵入することを防ぐために使用されています。
消防法でも「第4塁の危険物の屋外貯蔵タンクに設ける通気管には、細目の銅網等による引火防止装置を設けること」定められています。
また、海外では配管内火災対応のために設置されることもあります。
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フレームアレスターの構造
フレームアレスターは、消炎素子と呼ばれるフィルターと、それを覆うボディから構成されます。
消炎素子の隙間は、ガスは通過するが火炎は通過できない大きさになっているため、万一火災が発生した場合でも、火炎が保護側(タンク内、配管内)に伝わることを防ぐ効果があります。
消炎素子には大きく分けて金網式とクリンプリボン式の二つがあります。
金網式
出典:焼結.com
金網式は国内で良く使用されるタイプです。
タンクの末端において、タンク内への火の粉の侵入を防ぐ消炎能力(火炎速度:数m/s程度)しかなく、後述する、デフラグレーション(火炎速度:数十m/s)やデトネーション(火炎速度:1000m/s以上)のような、非常早い火炎速度に対しては効果が薄いとされています。
クリンプリボン式
クリンプリボン式は、消炎素子が波状と平板の薄板を組み合わせた構造となっており、海外で良く使用されています。
また、クリンプリボン式よりもさらに堅牢な構造として、ステンレス板を一定の隙間を開けた積み上げたスリット式というタイプも存在します。
クリンプリボン式のフレームアレスターは配管内に設置され、金網式では対応できないデフラグレーションやデトネーションにも対応可能です。ただし、このタイプは相対的に圧力損失が大きく、配管内の固体分により目詰まりを起こすリスクがあるため注意が必要です。
ガスによるフレームアレスターの分類
火炎は、そのガス種によって、通過を阻止できる隙間の大きさが決まっており、フレームアレスターの消炎素子もガス種に応じて設計されます。
ISO16852では、フレームアレスターの性能試験や試験方法が定めれており、可燃性ガスを以下の表に分類し、それぞれによって適用する消炎素子の隙間の大きさが異なります。
爆発グループ | 主な可燃性ガス |
IIA | メタン、エタン、プロパン |
IIB1 | エタノール、アクリロニトリル |
IIB2 | シアン化水素、ジメチルエーテル |
IIB3 | エチレン、プロピレンオキシド |
IIB | エチレンオキシド、パラホルムアルデヒド |
IIC | 水素 |
燃焼区分とフレームアレスターの分類
火炎は、その火炎によってその形状が変化し、大きく「エンドオブライン」と「インライン」に二つに分けられます。
エンドオブライン
タンク上部や配管末端部で発生する火災のことです。
火炎速度が小さいので、上述の金網式のフレームアレスターでも十分消炎することが可能です。
インライン
火炎が配管内部まで伝播すると、配管内で加速することで、爆燃(デフラグレーション)と呼ばれる状態となり、さらに音速を超えると爆轟(デトネーション)と呼ばれる状態になります。
デフラグレーションやデトネーションに対しては、金網式では消炎効果が無くなるため、基本的にはクリンプリボン式が選定されます。
選定時の留意点
フレームアレスターは、その構造から、消炎機能が大きいほど、目詰まりを起こしやすくなります。特にクリンプリボン式は、いったん目詰まりが発生してしまうと、解消することが困難なので、消炎素子を交換することになってしまいます。
頻繁に消炎素子を交換してしまうと、プラントのランニングコストの増加につながるため、
・ 設置する前に配管を十分フラッシングする
・ フレームアレスターの手前にストレーナを設置する
といった対策が必要です。