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【配管】プラント配管で使用されるエキスパンションジョイントの種類と特徴の解説

今回の記事ではプラント配管で使用されるエキスパンションジョイントの種類と特徴について解説します。

エキスパンションジョイントは配管の熱膨張により発生する応力(熱応力)、変位を吸収するための配管継手です。伸縮継手、伸縮管継手、可とう継手、フレキシブルジョイントなどと呼ばれることもありますが、熱応力、変位を吸収するための継手という意味では同様のものです。石油・化学プラントの大口径配管についてはエキスパンションジョイント(Expansion Joint)と呼ばれることが多いです。

配管温度が上がると熱膨張は避けられないのですが、配管部門のエンジニアは、配管・機器ノズルなどに過大な応力がかからないようには配管レイアウトを工夫します。

しかし、運転温度、設計温度が非常に高い配管や空間的な制約があるなど、配管レイアウトの工夫だけでは熱応力を吸収できず、配管、機器ノズルの許容応力を超えてしまう場合があります。

そのような場合は、エキスパンションジョイントを配管に設置することで熱応力、熱変位を吸収することを検討します。

エキスパンションジョイント想定される熱変位の大きさ、方向、圧力区分によって様々な種類が使い分けられていますが、トラブルを防ぐためには適切なタイプを選定する必要があります。

次項からそれぞれの種類について解説します。

自由型(Free Type)

出典:南国フレキ工業

最も基本的な形式です。エキスパンションジョイントの中では、価格が最も安いので最も良く使用されるタイプです。

主に低圧配管(0.1MPa~0.3MPa)に使用され、軸方向・角方向の変位を吸収するために用いられます。

単式(Single)(画像左側)と複式(Double)(画像右側)があり、基本的には単式が用いられますが、変位量が大きく、単式で吸収できない場合には複式が用いられます。

外圧型(Single External Pressure Type)

出典:テクノフレックス

自由型はベローズの山数が大きくなると、ベローズの座屈や変形が起こる場合がありますが、外圧型はベローズ外面側から圧力が加わる構造となっているため。変形や座屈を防ぎ、安定した状態で作動するという特徴があります。

そのため、想定される熱変位が大きく、自由型 では吸収しきれない場合はこのタイプが選定されます。外圧型にも単式と複式があり、複式の場合はより大きな変位を吸収できるようになっています。

外圧型は主に低圧~中圧配管(0.2MPa~1.5MPa)に使用され、軸方向・角方向の変位を吸収するために用いられます。

ガイドボルト型(Guide Rod Type)

出典:テクノフレックス

ガイドボルト型は上図のように自由型にガイドボルトを取り付けて、伸縮による移動量の調整を可能にしたものです。これにより想定外の荷重を受け止めて、損傷しにくい構造になっています。

この型も単式と複式があり、変位量が大きい場合は複式が使用されます。

比較的中圧(<1.0MPag)の配管に使用され、自由型同様、軸方向・角方向の変位を吸収します。

調整リング型(Control Ring Type)

出典:テクノフレックス

ガイドボルト型 のベローズの谷部に調整リング(コントロールリング)を取り付けたものです。

この型も単式と複式があり、変位量が大きい場合は複式が使用されます。

主に高圧配管(1MPa以上)に使用され、自由型同様、軸方向・角方向の変位を吸収します。

ユニバーサル型(Universal Type)

出典:テクノフレックス

2つのベローズ間をタイロッドボルトで結ぶことで、軸の直角方向の変位を吸収できるようにしたものです。距離を長くすれば、より大きな変位を吸収できます。

ベローズの内圧推力はタイロッドで拘束されるので、配管の固定点にはベローズの変位反力しか加わらず、大きな固定点が不要という特徴があります。

他のタイプとは異なり、軸直角方向変位を吸収できるため、L 字型配管に使用されます。

使用圧力は低圧~中圧配管です。

ヒンジ型(Hinge Type)

出典:テクノフレックス

ヒンジ型はベローズの側面に設置されたヒンジアームで角方向の変位を吸収できるようにしたものです。ただし、ヒンジ型は1方向の変位にのみ対応可能です。

角変位を吸収できるため、L 字型配管に使用されます。

通常は複数と組み合わせたり、後述するジンバル型と組み合わせて使用し、軸方向変位、軸直角変位の吸収ができるようにすることが多いです。

低圧から高圧まで使用可能です。

ジンバル型(Gimbal Type)

出典:テクノフレックス

2組のヒンジプレートとピンを取付け、プレートの間にジンバルリングを入れて、取付位置をずらした構造です。そのため、ジンバル型は、全方向の角変位に対応可能です。

ヒンジ型同様、複数と組み合わせたり、ヒンジ型と組み合わせて使用し、軸方向変位、軸直角変位の吸収ができるようにすることが多いです。

このタイプも低圧から高圧まで使用可能です。

バランス型(Balanced Pressure Type)

バランス型は変位を吸収する際に生じる内圧推力を発生させないために考案された伸縮継です。

変位吸収用ベローズとバランスベローズを設け、内圧による推力を伸縮継手内で打ち消す構造となっています。

大口径、高圧力、配管設置場所などにより、十分な固定点が確保できない場合に使用されます。

S、T、L型があり、それぞれ変位の方向や寸法制限の有無で使い分けられています。

S型

出典:テクノフレックス

軸方向の変位を吸収するため、配管の直管部に使用されます。

T型

出典:テクノフレックス

他タイプと比べてコンパクトなため、寸法制限のある場所に適しています。

L型

出典:テクノフレックス

曲管部に使用され、軸方向・軸直角方向の変位を吸収します。

まとめ

今回の記事ではプラント配管で使用されるエキスパンションジョイントの種類と特徴について解説しました。

主なエキスパンションジョイント

・ 自由型
・ 外圧型
・ ガイドボルト型
・ 調整リング型
・ ユニバーサル型
・ ヒンジ型
・ ジンバル型
・ バランス型

エキスパンションジョイントは配管の熱膨張により発生する応力(熱応力)、変位を吸収するための配管継手で、配管レイアウトの工夫だけでは吸収しきれない熱変位を吸収する場合に用いられます。

エキスパンションジョイントは、想定される熱変位の大きさ、方向、圧力区分によって様々な種類が使い分けられていますが、トラブルを防ぐためには適切なタイプを選定する必要があります。

この記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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