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【配管】制限オリフィス孔径の計算手順の解説

今回の記事では制限オリフィスの孔径の計算手順について解説します。

制限オリフィス(restriction orifice)は高圧の流体を減圧する際、流量を調節したい場合に用いられ、制御弁と組み合わせて用いたり、コスト面から制御弁の代わりに用いることもあります。特にガスや蒸気の配管で多く用いられる傾向にあります。

本記事ではガス、蒸気配管における制限オリフィスの孔径の計算手順に焦点を当てて解説します。

液配管における制限オリフィス孔径の計算手順についてはこちらの記事を参照ください。

また、オリフィスの流量係数についてはこちらの記事を参照下さい。

計算手順は以下の通りです。

制限オリフィス孔径の計算手順

① 配管径、流量、圧力(減圧前、減圧後)を指定する。
② 配管流速 v [m/s]を計算する
③ 抵抗係数 Kを計算する。
④ 絞り直径比β(オリフィス孔径/配管径)を計算する。
⑤ オリフィス孔径を計算する。

制限オリフィスの孔径の計算手順は様々な方法がありますが、この計算手順は電卓のみ計算可能な方法です。

この計算手順において難しいのは③、④の手順です。次項からこれらの手順について詳細を解説します。

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抵抗係数Kの計算

JIS Z 8762より、制限オリフィス前後の差圧ΔPと流量Qの関係式は以下の通りです。

$$Q=CYA_d\sqrt{\frac{2ρΔP}{1-β^4}}$$

Q:流量 [kg/s]
ΔP:差圧[Pa]
C:流出係数
Y:膨張係数
Ad:オリフィス孔面積 [m2]
ρ:上流側の流体密度 [kg/m3]
β:絞り直径比(オリフィス孔径 d [m] / 配管径 D [m]

ここで、

$$C_k=\frac{C}{\sqrt{1-β^4}}$$

とおいて整理すると、

$$ΔP=\frac{Q^2}{2ρY^2{A_d}^2}\frac{1}{{C_k}^2}$$

Q:流量 [kg/s]
ΔP:差圧[Pa]
Ck:流量係数
Y:膨張係数
Ad:オリフィス孔面積 [m2]
ρ:上流側の流体密度 [kg/m3]
β:絞り直径比(オリフィス孔径 d [m] / 配管径 D [m]

となります。

さらに流量Q[kg/s]を配管流速v [m/s]で表すと

$$Q=vAρ$$

さらに、

$$\frac{A_d}{A}=\frac{d^2}{D^2}=β^2$$

より、AをAdとβを使って表すと、

$$Q=vρ\frac{A_d}{β^2}$$

Q:流量 [kg/s]
v:配管流速 [m/s]
A:配管断面積 [m2]
Ad:オリフィス孔面積 [m2]
d:オリフィス孔径 [m]
D:配管径 [m]
ρ:上流側の流体密度 [kg/m3]

となります。これを上式に代入して、

$$ΔP=\frac{v^2ρ^2{A_d}^2}{β^4}\frac{1}{2ρY^2{A_d}^2}\frac{1}{{C_k}^2}$$

と表せられます。

$$K=\frac{1}{{C_k}^2Y^2β^4}$$

K:抵抗係数

と置いて約分すると

$$ΔP=\frac{1}{2}Kρv^2$$

変形して

$$K=\frac{2ΔP}{ρv^2}$$

となります。

これで、差圧、密度、配管流速から抵抗係数Kが計算できるようになりました。

絞り直径比βの計算

抵抗係数Kと絞り直径比βとの相関には以下のグラフのような関係成り立つことが知られています。

 

比熱比k=1.4の場合に成り立つ関係ですが、k=1.3でも概ね成り立つことが分かっており、通常使用するガスの比熱比k=1.3-1.4の範囲では適用可能です。

上記のグラフを数式で表すと以下の通りになります。

$$β=α_1{(\ln{K})}^2+α_2(\ln{K})+α_3$$

ただし

$$α_1=0.001322463t^2-0.00125t+0.006725$$

$$α_2=-0.025175422t^2+0.036595t-0.1649$$

$$α_3=0.119192281t^2-0.26158t+1.102177$$

t:圧力比 [P2/P1]
P1:オリフィス上流側圧力 [Pa]
P2:オリフィス下流側圧力 [Pa]

これで、抵抗係数Kから絞り直径比βが計算できるようになりました。

よって、オリフィス孔径dは

$$d=βD$$

D:配管径 [m]

の関係から配管径Dを用いることで計算されます。

計算例

ある蒸気配管を減圧する場合の制限オリフィス孔径を計算することを考えます。

前提条件は以下の通りとします。

前提条件

配管径D:6インチ(D=0.15m)
蒸気流量Q:1.5kg/s
密度ρ:2.5kg/m3
上流側圧力P1:450kPa
減圧後圧力P2:135kPa

まず、配管流速v [m/s]を計算すると、

$$v=\frac{Q}{ρA}=\frac{1.5}{2.5\times\frac{π}{4}\times0.15^2}=34$$

となります。

$$ΔP=P_1-P_2=315\times10^3$$

より、抵抗係数Kを計算すると、

$$K=\frac{2ΔP}{ρv^2}=\frac{2\times315\times10^3}{2.5\times34^2}=218$$

となります。

さらに、圧力比tは

$$t=\frac{P_2}{P_1}=0.3$$

なので、絞り直径比βを計算すると、

$$β=α_1{(\ln{218})}^2+α_2(\ln{218})+α_3=0.381$$

となります。

したがって、オリフィス孔径dは

$$d=βD=0.318\times0.15=0.057$$

より0.057mと求めることが出来ました。

まとめ

今回の記事では制限オリフィスの孔径の計算手順について解説しました。

制限オリフィスの孔径は以下の手順で求められます。

制限オリフィス孔径の計算手順

① 配管径、流量、圧力(減圧前、減圧後)を指定する。
② 配管流速 v [m/s]を計算する
③ 抵抗係数 Kを計算する。
④ 絞り直径比β(オリフィス孔径/配管径)を計算する。
⑤ オリフィス孔径を計算する。

この記事が参考になれば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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