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【配管】プラントの音響疲労破壊とは?音響レベルの計算方法と対策

こんにちは。Toshi@プラントエンジニアのおどりばです。

今回はプラントの音響疲労破壊について解説します。

音響疲労とは「Acoustically Induced Vibration(AIV)」とも呼ばれ、プラントの高差圧の機器・計器(特に安全弁)からから発生する音響エネルギー(Sound Power Level:SPL)によって配管が高周波数で振動を起こすことです。

この音響疲労により、短期間で配管が破損することが知られています。特にフレアヘッダーの枝管と母管との接続部は応力が集中しやすく、破壊が起きやすいと言われています。

音響疲労破壊が起こるリスクがあるかどうかは、計算音響エネルギー(Sound Power Level:SPL)が、許容音響エネルギー(Allowable SPL)を上回るかどうかで判断することが可能です。

音響疲労破壊リスクの有無

SPL<Allowable  SPL:音響疲労破壊のリスク無し
SPL≧Allowable  SPL:音響疲労破壊のリスク有り

詳細は後述しますが、配管の径が大きくなると、音響疲労破壊リスクは増加します。近年では、プラントが大型化し、それに伴い配管も大口径化する傾向にあるため、音響疲労破壊も増加傾向と言われています。

国内の既設プラントでは、音響疲労破壊のリスクがあるほど大口径の配管は少ないかもしれませんが、身近なプラントの安全弁や脱圧弁の二次側が音響疲労破壊のリスクがあるかどうか、ぜひ計算して確認して下さい。

一方、新規プラントの建設案件で、配管のサイジングや配管レイアウト設計をする際は、音響疲労破壊の対策は必須となりますのでご留意ください。

■音響により配管が振動している様子(シミュレーション)

■音響疲労により破壊された配管接続部

出典:Wood.のWeb siteより

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音響疲労破壊対策の対象配管

音響疲労破壊はガス配管の安全弁や高差圧弁二次側のヘッダー配管との接続部で発生することが多く報告されています。

そのため、基本的にはガス配管のみが音響疲労破壊対策が必要となり、液配管については対策不要です。

また、Technimont社の報告資料では、小口径の配管や大気開放の配管では音響疲労破壊のリスクは無いとして、6インチ以下の配管や大気開放配管は対策不要と報告しています。

したがって、音響疲労破壊対策の対象配管は以下の通りです。

対象配管

・8インチ(200A)以上の配管
・ガス配管
・フレアーヘッダーへ接続する安全弁二次側配管

音響エネルギー(Sound Power Level:SPL)の計算方法

SPL算出の計算式はアメリカ石油学会(American Petroleum Institute:API)の一つであるAPI521(Pressure-relieving and Depressuring Systems)の式(43)に記載されています。

※数式表示が途切れている場合はスライドすると表示されます。

$$L_w=10\log_{10}\biggl[W^{2}\biggl(\frac{P_1-P_2}{P_1}\biggr)^{3.6}\biggl(\frac{T_1}{M}\biggr)^{1.2}\biggr]+C_w$$

Lw:音響エネルギー(SPL)[dB]
W:ガス流量 [kg/s]
P1:一次側圧力 [kPa]
※安全弁の場合は吹出し圧力
P2:二次側圧力 [kPa]
T1:温度 [K]
M:ガス分子量 [kg/kmol]
Cw:126 [dB](定数)

複数台の安全弁が作動する場合はそれぞれの安全弁のSPLを算出し、合流部以降、以下の式で合算します。

$$\sum{L_w}=10\log_{10}\biggl[10^{\frac{L_{w1}}{10}}+10^{\frac{L_{w2}}{10}}+・・・+10^{\frac{L_{wn}}{10}}\biggr]$$

Lw:音響エネルギー(SPL)[dB]
Lw1:1番目の安全弁の音響エネルギー(SPL)[dB]
Lw2:1番目の安全弁の音響エネルギー(SPL)[dB]
Lwn:1番目の安全弁の音響エネルギー(SPL)[dB]

上述の通り、音響疲労破壊は応力が集中する枝管と母管との接続部で発生します。

しかし、実際に音響エネルギーが発生源となるのは、安全弁(or脱圧弁)の二次側すぐの場所なので、そこから接続部に至るまでの、音響エネルギーの減衰(Attenuation)を考慮する必要があります。

音響エネルギーの減衰の度合いは以下の式で計算されます。

$$Att_{SPL}=0.06\frac{L}{D}$$

よって

$$L_w'=L_w-Att_{SPL}$$

Lw:音響エネルギー(SPL)[dB]
Lw':減衰を考慮した正味の音響エネルギー(SPL)[dB]
AttSPL:音響エネルギーの減衰 [dB]
L:安全弁(脱圧弁)~母管接続部の枝管の配管長 [m]
D:枝管の配管内径 [m]

この式から、配管径が大きい(Dが大きい)ほど減衰の度合いが小さくなるため、正味の音響エネルギーLw'が大きくなることが分かります。

ゆえに、大口径配管ほど音響疲労破壊が大きくなります。



許容音響エネルギー(Allowable SPL)の計算方法

許容音響エネルギー(Allowable SPL)の計算にはいくつかの式が知られています。

それぞれ、音響疲労破壊の発生有無の境界を近似した経験式となっています。

本記事では式の紹介をするに留めますが、経験式の根拠の詳細については元文献を確認下さい。

許容音響エネルギー計算式

・Eisinger式
・Riegle式
・CSTI式

※数式表示が途切れている場合はスライドすると表示されます。

Eisinger式

$$L_{wa}=173.6-0.125\frac{D_i}{t}$$

Riegle式

$$L_{wa}=4.2914\times10^{-8}\biggl(\frac{D_i}{t}\biggr)^4-2.8195\times10^{-5}\biggl(\frac{D_i}{t}\biggr)^3+$$
$$0.006781\biggl(\frac{D_i}{t}\biggr)^2-0.7549\biggl(\frac{D_i}{t}\biggr)+192.6125$$

CSTI式

$$L_{wa}=183.07-1.7857\biggl(\frac{D_m}{t^2}\biggr)$$

Lwa:許容音響エネルギー(Allowable SPL)[dB]
Di:母管の配管内径 [mm]
Dm:母管の配管平均径((内径+外径)/2) [mm]
t:保管の配管肉厚 [mm]

1) Eisinger F.L.: Designing Piping Systems Against Acoustically Induced Structural Fatigue, Journal of Pressure vessel technology 119 (1997), 379-383
2) Solving Acoustic-Induced Vibration Problems in the Design Stage

一般的な炭素鋼の低圧用(150#)配管について、配管径と算出されるAllowable  SPLとの関係を以下のグラフに示しました。

まず、どの算出式でも配管径が大きくなるほどAllowable SPLが小さくなることが分かります。つまり、配管径が大きくなればそれだけ音響疲労破壊を起こしやすい、ということがこれらの式からも理解することができます。

次に、上記3式で計算されるAllowable SPLの値を比較します。

概ね、CSTI式>Riegle式>Eisinger式の順番でAllowable SPLの値が小さくなっていることが分かります。どの式も理論的な裏付けはされておらず、発案者が集計したケースに合うように近似された経験式なので、どの式を適用するかは使用者の思想に任せられています。

管理人の私見としては、Eisinger式では厳しく見過ぎており(Allowable SPLが低くなり過ぎ)、Riegle式かCSTI式の方がより実態に即していると考えます。



音響疲労破壊の対策方法

音響エネルギーSPL>Allowable SPLと判定された場合は、音響疲労破壊のリスクが高い状態にあるため、対策しなければなりません。

SPL及びAllowable SPLの計算式からも分かる通り、配管が細く、かつ長いとSPLは小さくなるのですが、圧力損失が上がってしまい、安全弁行き配管の許容圧損を超える恐れがあったり、プラント運転に支障をきたすため、わざわざ配管を補足し、長くするような設計にするのはあまりにもナンセンスです。

現実的な対策としては、枝管と母管との接続部に、配管の周囲に補強版をあてがうことです。こうすることで、母管の肉厚を部分的に増加させることが可能なので、Allowable SPLが増加し、SPL以上にすることが可能です。

ただし、補強版を溶接する際は下図のように、テーパーを滑らかにすることにご注意下さい。(応力の集中を避けるため)



まとめ

今回はプラントの音響疲労破壊について解説しました。

安全弁や脱圧弁などの高差圧弁の二次側では、音響疲労により、短期間で配管が破損することが知られています。特にフレアヘッダーの枝管と母管との接続部は応力が集中しやすく、破壊が起きやすいと言われています。

最近のプラントでは大型化により配管径が増加しているので、新規建設のプラントでは音響疲労破壊のリスクが高まっています。

しかし、適切に対策していれば回避することも可能です。

既設プラントでも、身近なプラントの安全弁の二次側配管について音響エネルギー(SPL)とAllowable SPLを計算し、Allowable SPLを超過していないか確認してみて下さい。

この記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

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  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在100記事達成。月1.6万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有/投資による資産形成もブログで報告。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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