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保温材・断熱材はどんな基準で選定する?選定時の留意点について解説

こんにちは。Toshi@プラントエンジニアのおどりばです。

今回の記事では保温材・断熱材選定時の留意点について解説します。

こちらの記事では、主な保温材・断熱材の特徴について解説しましたが、本記事ではこれらの材料選定の留意点について解説します。

保温材・断熱材の選定基準はプラント建設プロジェクトの初期においてプロジェクトスペックとして規定されるものです。

これらの材料は、運転温度範囲や取り扱う流体など、プラントの特徴を考慮して選定されなければなりませんが、これだけでなく、さらに経済性も考慮しなければなりません。

主な留意点

・ 使用温度
・ 化学的条件
・ 熱伝導率
・ 耐燃性
・ 機械的強度
・ 吸水性
・ 経済性

本記事はそれぞれの留意点について解説します。

これらの留意点はプロジェクトをとりまとめるプロジェクトエンジニアだけでなく、プラントのプロセス設計担当(プロセスエンジニア)も知っておくべき知識です。

詳細は次項から解説していきます。

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使用温度

プラントで使用される代表的な保温材、断熱材の最高使用温度を以下の表にまとめました。

最高使用温度 保温材・断熱材の種類
1300℃ シリカアルミナファイバー
1000℃ ケイ酸カルシウム(高温用)
650℃ ケイ酸カルシウム
650℃ パーライト
550℃~650℃ ロックウール
450℃ フォームグラス
300℃ グラスウール
250℃ 炭酸マグネシウム
~100℃程度 硬質ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、
フェノールフォーム

保温材や断熱材を選定するための最も重要な要素が使用温度です。

まずは使用温度を基準として適用可能な保温材を絞り込み、さらに後述する熱伝導率、強度、経済性などを考慮して、プラントの特徴に応じた保温材・断熱材を選定します。

ほとんどのプラントは最高使用温度は600℃未満であるため、ケイ酸カルシウムやロックウールを選定しておけば十分なことが多いです。

一方、硬質ポリウレタンフォームやフェノールフォームは最高使用温度が低いですが、これらは極低温のLNGタンクなどに保冷目的で使用されるものなので、高音部の保温材としては使用されません。

化学的条件

出典:KAEFER

使用場所が酸、アルカリ、溶剤などに晒される可能性のある箇所では、それらに対して安全な材料を選定する必要があります。

基本的にはそれらに弱い材料を選定するべきではないですが、やむを得ず選定する場合は外装材料を考慮することで使用可能となる場合があります。

酸に弱い材料

炭酸マグネシウム、炭化コルク、フェルトなどが該当します。

アルカリに弱い材料

ケイ酸カルシウム、珪藻土などが該当します。

石油系溶剤に弱い材料

ポリスチレンフォームなどが該当します。

アルコール系溶剤に弱い材料

硬質ポリウレタンフォームなどが該当します。

熱伝導率

出典:ACR Journal

保温材・断熱材の性能は熱伝導率で評価されます。

当然ながら熱伝導率が小さければ小さいほど良い保温材・断熱材であると言えます。

一般的にケイ酸カルシウムやロックウールのような無機質の材料は、フェノールフォーム、硬質ポリスチレンフォームのような有機質の材料よりも熱伝導率が高いため、高温部の保温においては、ある程度熱伝導率が高い材料を選定せざるを得ません。



耐燃性

出典:arcdaily

火気の恐れのある場所は危険物流体を取り扱う機器、配管に対しては、耐燃性の材料を使用することが望ましいです。

例えば、グラスウールのような無機質は燃えにくいですが、ポリスチレンフォームや硬質ポリウレタンフォームは燃えやすく、有害物質が発生することがあるため、これらの場所に対しては不適当です。

ただし、断熱層を似層構造として外側だけを耐熱材料とすることや、外装を耐熱材料することで、上記の材料の使用を認める場合もあります。

機械的強度

出典:Foamglas

保温材・断熱材には機械的強度も求められることもあります。

例えば、タンクの底面の断熱材はタンクの耐圧に耐える必要があります。また、地中に埋める埋設配管の保温材についても土圧に耐える必要があります。そのため、これらに適用される保温材・断熱材はある程度の機械的強度も必要となります。

特に大きな機械的強度が必要とされる場合はパーライトが、これに次ぐ材料としてはフォームグラスや硬質ポリウレタンフォームなどが適用されます。

吸水性

 

出典:Passuite

保温材・断熱材が吸水してしまうと熱伝導率が増大するため、本来の性能が発揮できず熱損失につながってしまいます。

そのため、埋設配管やピット内配管の保温材においては非吸水性の材料を選定する必要があります。

外装材のみを吸水性の材料を用いることもありますが、施工の不備や配管の膨張で外装材が破れて想定外の吸水を起こすリスクを考慮すると、保温材のメイン材料として非吸水性のものを選定する方が望ましいです。

特に保冷を目的とする場合は、空気の水分が結露するため、材料の選定はより慎重になる必要があります。

主な材料で吸水性の大きい順に並べると以下の通りです。

硬質ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム > フェノールフォーム > ケイ酸カルシウム、パーライト > ロックウール、グラスウール



経済性

こちらの記事でも解説している通り、プラント建設において、保温材・断熱材は工事費の2-7%程度を占めているため、材料選定におけるコストは決して無視できるものではありません。

だからと言って低価格の材料を選定すれば良いのではなく、多少価格が高くても熱伝導率が小さい材料であれば、材料の必要量が小さく、かえって全体のコストを抑えることができるため、材料自体の価格と性能(熱伝導率)のバランスを考慮して選定しなければなりません。

また、施工性も工事費に影響を与えるため、施工性の良い材料を選定することも重要です。

さらに耐用年数も考慮する必要もあります。

 

これらを考慮して経済性を判断するための簡易的な判定式として、以下のものが提案されています。

<保温材・断熱材の経済性判定式>

$$A=\frac{P}{N}+qhb$$

A:単位長さ、単位面積あたりの年間コスト [円/m・年] or [円/m2・年]
P:単位長さ、単位面積あたりの工事費 [円/m] or [円/m2]
N:耐用年数 [年]
q:熱損失量 [kcal/m・h] or [kcal/m2・h]
h:年間使用料 [h]
b:エネルギーコスト [円/kcal]

上記の式ではAの値が小さいほど良い材料ということになります。

第一項は工事費の償却、第二項は熱損失によるコストです。

その他

経済性の項でも解説した通り、保温材・断熱材の施工性は経済性に大きく影響するだけなく、プラントの運転性にも影響します。

施工が難しい材料であれば、不適切な施工により隙間やクラックが発生する可能性が高くなり、これにより設計通りの運転ができなくなるリスクが高くなります。

また、上記以外にも工事期間の長短、施工後の美観、材料の入手難度、膨張・収縮の影響、重量による架構設計への影響も考慮する必要があります。



まとめ

今回の記事では保温材・断熱材選定時の留意点について解説しました。

保温材・断熱材の選定基準はプラント建設プロジェクトの初期においてプロジェクトスペックとして規定されるものです。

これらの材料は、運転温度範囲や取り扱う流体など、プラントの特徴を考慮して選定されなければなりませんが、これだけでなく、さらに経済性も考慮しなければなりません。

主な留意点

・ 使用温度
・ 化学的条件
・ 熱伝導率
・ 耐燃性
・ 機械的強度
・ 吸水性
・ 経済性

これらの留意点はプロジェクトをとりまとめるプロジェクトエンジニアだけでなく、プラントのプロセス設計担当(プロセスエンジニア)も知っておくべき知識です。

この記事が役にたてば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

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  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在120記事、月1.8万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有/投資による資産形成もブログで報告。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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