今回の記事ではエジェクター(Ejector)の駆動用空気量の計算方法について解説します。
エジェクターは高圧流体の圧力を利用して低圧流体を吸込み、圧力を増加させて排出することができる装置ですが、その中でも空気エジェクター(Air jet Ejector)は、簡易な真空発生装置として、エア吸引や真空ポンプの補助装置として用いられます。
エジェクターの設計を行う場合は、吸入空気の流量・圧力が決まっているが、必要な駆動空気量が分からない、というケースがあります。
そこで本記事では、吸入空気の条件のみが分かっている場合に、簡単に駆動空気量を計算する方法について解説します。
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エジェクターの原理
エジェクター(エゼクター)は上図のような構成で、霧吹きの原理で駆動気体を吸入空気を吸引します。
駆動空気は、ノズル内にて圧力減少分は運動量に変換されることで、で超音速になります。このとき、吸入空気も駆動空気に巻き込まれるころで混合、加速して行き、ディフーザーの末広部にて圧力が回復してエジェクターより排出されます。
空気エジェクターの場合は、出口が大気圧なので、エジェクターの背圧が一定ということになります。そのため、ディフーザー内のガスの出口変動は吸入側に伝わらず、安定運転が可能という特徴があります。
駆動空気量とノズル径の算出
エジェクターの駆動機医療とノズル径は以下の手順で算出されます。
駆動空気量とノズル径の算出方法
① PR(圧力比)の計算
② MR(吸入空気/駆動空気の流量比)の計算
③ 駆動空気の計算
それぞれのステップについて詳しく見ていきます。
① PR(圧力比)の計算
PR(圧力比)は以下のように定義されます。
$$P_R=\frac{(P_C-P_D)}{(P_D-P_S)}$$
PR:圧力比
Pc:駆動空気圧力 [kPaA]
PD:吐出圧力 [kPaA]
② MR(吸入空気/駆動空気の流量比)の計算
MRはPRを使って、以下の式から計算されます。
【4.5≦PR<60の場合】
$$M_R=0.02\exp\biggl[5.7122\biggl(1-\exp\biggl(-0.8411\ln\biggl(\frac{P_R}{4.5}\biggl)\biggl)\biggl)\biggl]$$
【60≦PR≦900の場合】
$$M_R=3.25+0.08702(P_R-60)^{0.7095}$$
MR:吸入空気/駆動空気の流量比
PR:圧力比
③ 駆動空気量の計算
通常、吸入空気量が与えられていますので、②で計算したMRから駆動空気量を求めることができます。
$$Wc=\frac{Ws}{M_R}$$
Wc:駆動空気流量
Ws:吸込空気流量
MR:吸入空気/駆動空気の流量比
計算例
吸込空気量:4500kg/h、吸込圧力:95kPaA、吐出圧力:101.3kPaA(大気圧)、駆動空気圧力:600kPaAのとき、駆動空気量の算出を行います。
条件を整理すると以下の通りになります。
Ws:4500 [kg/h]
Ps:95 [kPaA]
PD:101.3 [kPaA]
Pc:600 [kPaA]
まず、PRを求めると
$$P_R=\frac{(600-101.3)}{(101.3-95)}≒79$$
60≦PR≦900なので、
$$M_R=3.25+0.08702(79-60)^{0.7095}=3.957$$
$$Wc=\frac{4500}{3.957}=1137$$
となり、駆動用空気量Wcは1137 kg/hと算出することができました。