
今回の記事では、回転機から感電防止まで、プラントエンジニアが現場出張時に身を守るための安全管理総まとめについて解説します。
出張先の現場は慣れない環境と時間的制約が重なりやすく、ちょっとした不注意が大きな事故につながります。
本記事では出張前の準備から現場での具体的行動まで、プラントエンジニア視点で知っておくべき内容を整理しました。
現場では「知らなかった」が命取りになります。出張前の教育資料や、現場での再確認用チェックリストとして活用できる構成にしています。
合わせて読みたい
・海外出張って何を持っていけばいい?必携の持ち物、準備物を徹底解説
・Lethal Serviceとは?毒性物質のプラント設計への影響、判定基準について解説
・ガスの爆発限界の推定方法(ルシャトリエの法則・温度依存性・圧力依存性・未知の化合物)の解説
・爆発範囲における三角図の読み方、使い方-希釈ガスの効果-
・「防爆」って何?可燃性ガスの分類と危険場所判定基準の解説
・プラント機器、計器に必要な防爆構造は?適用する危険場所との関係の解説
・プラントに設置するガス検知器の設置個数と配置場所について解説
・サットンの式とは?毒性ガス、可燃性ガスの着地濃度の計算方法について解説
・【配管】ボンディングとは?配管の静電気対策について解説
・HAZID, HAZOP, SILとは?プラントのリスク評価、安全管理手法の概要について解説
・ALARPとは?プラントにおける合理的なリスク低減の考え方について解説
・Bow-tie解析とは?プラントの危険事象の対応策の確認,評価手法について解説
・HIPS(HIPPS)とは?プラントの高度保護システムの概要と設計の考え方について解説
・禁油・禁水処理とは?目的と処理内容について解説
・【加熱炉】加熱炉の安全設計の留意点について具体例を交えて解説
・プラントの配置計画|レイアウト検討のポイントと注意点
・プラントで使用される泡消火薬剤の分類と特徴について解説
・【配管】プラント建設後の配管はどうやって洗浄する?配管洗浄方法の解説
服装・保護具:巻き込みと感電の防御

「身だしなみ」はマナーではなく、安全のための装備です。
服装の自己点検
作業前には、袖口、作業着のバンド、靴ひもが確実に締まっているか確認します。
これらが少しでも垂れ下がっていると、回転機器への巻き込みリスクが飛躍的に高まります 。
手袋の着脱ルール
回転機器(コンベア、ロータリーバルブ等)の点検や清掃、または手が巻き込まれる恐れがある作業では、手袋の着用は厳禁です。
不安全行動の排除
現場内での後ろ向き歩行や、転倒時に受身が取れなくなるポケットに手を入れての歩行(ポケ手)は厳禁です 。
特殊保護具の選定
有毒ガス発生箇所では保護服やマスク、高温部では耐熱服を、作業環境に合わせて適切に選定・着用する必要があります。
機械・回転機器の安全管理

試運転中の機械は生物なので、予期せぬ動作を前提とした対策が必要です。
LOTO(ロックアウト・タグアウト)の原則
点検や清掃は、必ず機器を停止させ、電源装置を遮断し、「点検中」の標識(タグ)を掲示した上で実施します。
ロック(施錠)が可能な設備は必ず施錠し、物理的に起動できない状態にしておくことが重要です。
安全カバーの復旧
点検のために外したカバーは、試運転完了後に原動機、回転軸、歯車、ベルト等の全ての部位で完全に取り付いていることを再確認します 。
また、低速で動く機械であっても、みだりに近寄ったり触れたりしてはいけません。
運転責任者との連携
機器を動かす際は、事前に機械側の運転責任者と協議し、連絡・合図の方法(無線や指差し呼称など)を確実に決めておく必要があります。
電気設備の安全基準

電気事故は目に見えないため、手順の遵守が唯一の防御策です。
「全線通電」の仮定
あらゆる配電線は「生きている」と仮定して行動します 。
活線作業は「違反行為」
無電圧を確認せずに作業することは、事故の有無にかかわらず「違反」とみなされます 。検電器による無電圧確認は必須工程です 。
停電・復電の手順
安全な停電、復電の手順は以下の通りです。
停電・復電の手順
1. 電源供給の遮断
2. 操作禁止札の掲示、および「二重切り」「施錠」による封印
3. 適正な器具での「無電圧」確認
4. 作業実施
5. 関係者への終了連絡
6. 通電前の絶縁抵抗測定
7. 責任者立会いのもとでの復電
電源遮断では、電源供給を切り、操作部に「操作禁止札」を掛けます。可能な限り電源の「二重切り」や「施錠」を行ってください 。
次に、無電圧であることを確認します。適正な測定器具(検電器)で通電部・充電部の無電圧を確認してから作業を開始します
復電時においては、通電前には必ず絶縁抵抗を測定し、責任者立会いのもとで鍵の開放・電源投入を行ってください 。
墜落・転落災害の防止

建設業の死傷事故で最も多いのが墜落です。
2m以下の高さでも転落による命の危険はありますが、油断しやすいため、このような高さの転落災害のリスクは高いです。
高所作業の基準
2m以上の作業では幅40cm以上の作業床を設け、手すりを設置します。設置困難な場合は必ずハーネスの着用が必須です。
はしご・脚立の制限
はしごは平面に対し、75度程度のの角度で設置することが一般的です 。
脚立の上で力を入れる作業や、天板に乗っての作業は、転倒のリスクが極めて高いため禁止されています 。
開口部の養生
ピットや床の開口部には蓋や柵を設けます。
蓋を一時的に外す際は、蓋を取りに行く間に他者が転落しないよう、あらかじめ危険標識や部材を準備してから着手する必要があります。
重機・運搬・工具の取扱い

クレーン作業
吊り荷の下には絶対に入ってはいけません。玉掛け作業は有資格者が行い、ワイヤーの1本吊りは禁止されています 。
人力運搬
1人で持つ重量は、継続作業で20kg以下に留めます 。
工具の適正使用
スパナをハンマー代わりにしたり、ドライバーを、てこ代わりにしたりする本来の目的以外の使用は禁止です 。
特殊リスク(溶接・薬品・酸欠)

溶接作業
溶接機の電撃防止装置が作動することを確認します 。火気厳禁エリアや、ガス検知・換気を行っていないタンク内での作業は禁止です。
酸欠・中毒
密閉場所では酸素濃度測定と換気を実施し、必ず見張り者を配置してください 。
薬品取扱い
SDS(安全データシート)で性質を把握し、保護メガネやゴム手袋を着用します。万一付着した場合は、直ちに多量の水で洗浄してください 。
まとめ
現場でのトラブル対応や試運転の佳境では、どうしても焦りが生じます。
しかし、プラントエンジニアにとっては、現場では技術力と同じくらい「安全に作業を完遂する能力」が問われます。
現場出張時に本記事の内容が役に立てば幸いです。