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【プラント試運転】配管ブローの流速決定法と有害ガス置換(ベンチレーション)の計算について解説

今回の記事では配管ブローの流速決定法と有害ガス置換(ベンチレーション)の計算について解説します。

プラント建設の最終段階であり、試運転(コミッショニング)に向けた最も重要な準備作業の一つが「配管クリーニング(フラッシング・配管ブロー)」です。

プレコミッショニングに概要や具体的な配管洗浄方法についてはこちらの記事を参照ください。

配管内部の異物を完全に除去しなければ、回転機器の破損やバルブのシート漏れなど、致命的なトラブルを引き起こします。しかし、「とりあえずエアーを流しておけばいい」といった経験則だけで進めると、異物が残留し、後で取り返しのつかない事態になります。

本記事では、配管ブローに必要な「流速と空気量の計算方法(クリーニング効果ファクター)」と、配管の安全な「ガス置換(ベンチレーション)の計算式」について解説します。

配管洗浄(フラッシング操作)の目的と基本原理

プラントの建設工事が終わった配管内部には、溶接時のスパッタ(金属の飛び散り)、切断クズ、サビ、時には工具や軍手といった異物が残留しています。

これらを取り除くために、プロセス流体を流す前に空気、窒素ガス、または水などを高速で流し込む操作を「フラッシシング(クリーニング / 配管ブロー)」と呼びます。

異物を吹き飛ばす力:「抗力(Drag Force)」

配管内に残った異物(バリなど)を吹き飛ばすためには、流体が異物にぶつかって押し流そうとする力、すなわち「抗力()」が必要です。 この抗力は、流体力学において以下の式で表されます。

$$F=\frac{1}{2}ρv^2SC_D$$

: 異物に働く抗力
: 流体の密度 []
: 流体の速度 []
: 異物の投影(代表)面積 []
: 抗力係数(異物の形状やレイノルズ数による)

この抗力は、異物の前後に働く「圧力抵抗」と、表面をこする「摩擦抵抗」の総和です 実際の配管ブロー現場で、異物ごとの面積 や抗力係数 を正確に測ることは不可能なため、これらをまとめて定数 とし、より実用的な以下の簡易式を用います

$$F=Kρv^2$$

つまり、「異物を吹き飛ばす力は、流体の密度と流速の2乗に比例する」ということがブロー計算の大原則となります。

クリーニング効果ファクター(C)

では、「どれくらいの流速で空気を吹けば異物が取れるのか?」 これを判断するための指標が「クリーニング効果ファクター(」です。

考え方として、「通常運転時のプロセス流体」が異物を押し流す力(抗力)よりも、「ブロー時の流体」が異物を押し流す力(抗力)の方が大きければ、確実に異物を除去できるはずです。 この比率をファクター と定義します。

$$C=\frac{Kρ_1{v_1}^2}{Kρ_2{v_2}^2}=\frac{ρ_1{v_1}^2}{ρ_2{v_2}^2}$$

: ブロー流体の密度
: ブロー流体の流速
: プロセス流体の密度
: プロセス流体の流速

目安となる の値

確実なクリーニングを行うためには、最低でも が必要であり、できれば 以上が望ましいとされています

空気ブロー時の注意点(流速の変化)

水ブローの場合は密度がほぼ一定ですが、空気や窒素ガスでブローする場合、配管内で圧力が下がるにつれて空気が膨張し、流速がどんどん速くなります。

配管の出口(大気開放端)では音速に達することもあります

そのため、ブローの流速 を計算する際は、流速が最も遅くなる「クリーニング開始端(容器やバルブの直後)の速度」を基準にして計算を行う必要があります

計算例:空気ブローに必要な流量の算出

実際にクリーニング効果ファクターの式を使って、必要な空気量を計算してみます。

例題
  • 配管サイズ(内径): 6B(

  • プロセス流体の条件: 最大流速 、密度

  • 空気ブローの条件: 密度

この条件で、効果ファクター を満たすための空気ブローの流量を求めます。

解答

まず、目標とするファクターの式に数値を代入し、必要な空気流速 を計算すると、v1=26.83m/sとなります。

よって、開始端で約 の空気流速が必要です。

次に、この流速と配管断面積から、必要な空気流量(体積流量 )を算出すると、Q=1707となります。

よって、この配管の異物を確実に除去するためには、 の空気を流す必要があることがわかります

ガスの置換(ベンチレーション)の計算

配管のクリーニングと同じく、プラントのスタートアップ時やシャットダウン時(定期修繕時など)に欠かせないのが、配管や容器内のガス置換(ベンチレーション)です。

可燃性ガス、爆発性ガス、あるいは有毒ガスが充満している状態から、安全に作業ができる濃度(安全濃度)まで新鮮な空気を送って希釈する必要があります

必要な換気空気量(Q)の計算式

有害ガスの発生源があり、それを希釈しながら換気する場合、以下の式で必要な空気量を求めることができます。

$$Q=q\biggl(\frac{1}{α}-1\biggl)$$

: 必要な送入空気量 []
: 有害ガスの発生量(または現在の有害ガスの存在量) []
: 目標とする安全濃度(体積比
※一般に、安全濃度は「許容限界濃度の 1/4-」など、厳しい基準が設定されます

計算例:ガス置換に必要な空気量の算出

ベンチレーションの計算式を使って、ガス置換に必要な空気量を算出します。

例題
  • 作業空間の容積:

  • 現在の有害ガス濃度:

  • 有害ガスの許容限度:

この空間を、1時間で安全濃度まで希釈するために必要な空気量を求めます。

また、1時間に3回置換が必要な場合の空気量も合わせて求めます。

解答

まず、許容限度()の を安全濃度とすると、α=1/5*10^-6となります。

次に、全体の容積が で、濃度が なので、現在の有害ガス量はq=2*10^-6*10となります。

αとqを上式に代入して必要空気量Qを算出すると、

$$Q=\frac{2}{1000000}*10*(5*1000000-1)≅100$$

※上式の「ー1」は非常に小さいの無視

となり、1時間かけて置換する場合、 の空気量が必要となります

また、1時間に3回の置換が要求される場合は、単純に上記の3倍の空気量が必要になり、Q=300m3/hとなります。

まとめ

配管ブロー(クリーニング)やガス置換は、「とりあえず空気圧縮機を繋いで吹かせておく」というようなアバウトな作業ではありません。

  • 異物を吹き飛ばすためには、プロセス流体の抗力を上回る「クリーニング効果ファクター( 以上)」を満たす空気量と流速が必要。

  • 作業の安全を確保するガス置換には、目標とする安全濃度(許容限界の1/4-1/5等)に基づいた正確な換気空気量の計算が不可欠。

プラントの安定稼働と作業員の安全を守るため、プレコミッショニングの計画段階からこれらの計算理論をしっかり取り入れ、確実なフラッシュとベンチレーションを実施することが重要です。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 技術情報を200記事以上執筆、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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