
今回の記事ではスチームトラップの選定方法と実務上の設計の留意点について解説します。
プラントの配管設計や設備保全において、重要なのに意外と奥が深いのが「スチームトラップ」です。蒸気を無駄に逃がさず、ドレン(復水)だけを自動で排出する弁ですが、間違った選定をすると、ウォーターハンマー(水撃)や熱効率低下、最悪の場合は機器の破損につながってしまいます。
今回は、スチームトラップ選定の基本方針から実務上の注意点までを解説しました。
スチームトラップのの種類と特徴についてはこちらの記事で解説していますので、合わせて参照ください。
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スチームトラップが満たすべき条件
スチームトラップが一般的に満たさなければならない条件は、次の9項目です。これらは、蒸気損失を抑えつつ確実にドレンを排出し、かつ長期にわたり安定して使えるための基本要件です。
- 適切な容量を有している(ドレン発生量に確実に対応できるか)
- 蒸気漏洩が少ない(省エネの観点で重要)
- 空気障害・蒸気障害を起こさない(起動時のトラブルを防ぐ)
- ドレンの排出がスムースに行われる(滞留による水撃や腐食を防ぐ)
- 作動時騒音が小さい(作業環境や保安への配慮)
- 小形軽量で取付け・取扱いが容易(施工性・メンテ性向上)
- 故障が起こりにくく耐久性に優れている(ライフサイクルコストの低減)
- 故障が起こった場合、修理が容易(ダウンタイムの最小化)
- フェイルセーフである(故障時に「開」になること)
この中でも特に重要なのが「フェイルセーフ(故障時開放)」です。
万が一トラップが詰まって「閉」で故障すると、ドレンが配管内に溜まり、ウォーターハンマーやタービン破損などの事故につながるリスクが大きくなります。
そのため、故障時には『開』になってドレンを排出できる(フェイルオープン)ことが望ましいとされています。多少の蒸気漏れを許容してでも、閉塞による事故を防ぐ思想です。
使用目的による機種選定

スチームトラップの形式は、使用目的によって選定されます。
大きく次の2つに分けられ、それぞれの装置条件に適したものを選ぶ必要があります。
ドレンを直ちに排出する必要がある場合
少しでも滞留すると悪影響が出る用途です。
応答が早くドレンを溜めない「メカニカル形(フロート・バケット)」や「ディスク形」を選びます。
- 蒸気配管(ウォーターハンマーの原因になるため)
- 蒸気タービン行き配管(タービンの破損原因になるため)
- 蒸留塔リボイラなど高温大熱容量機器類(熱効率の低下を防ぐため)
- 加熱炉バーナーのアトマイジング蒸気線(霧化用蒸気の品質確保のため)
ドレンの顕熱(温度)まで有効利用したい場合
ドレンをすぐに捨てず、一定温度まで冷ましてから排出することで省エネを図る用途です。
排出温度を調整できる「温調形(バイメタル・エレメント)」が適しています。
- スチームトレース(配管の保温や凍結防止用)
- 低温容器の加熱又は温度保持
実務上の選定時の注意事項

ここでは実際にスチームトラップの設計、選定を行う場合の注意事項についてまとめました。
寒冷地対策
外気温度の影響を大きく受けるため、凍結対策は必須です。
蒸気配管
過熱蒸気配管の定常運転時:ドレン量は一般に約 5 kg/h 前後と少ないと考えられるので、トラップ作動やシールに必要なドレン量の確保を考慮します。
分岐管・行き止まり管部:飽和温度になりドレン量は多くなるので、ドレンを速やかに排出する メカニカル形又はディスク形を選定します。
蒸気タービン:ドレン持ち込み厳禁のため、必ずメカニカル形かディスク形を選定します。
低圧の飽和蒸気配管:ドレン量が比較的多く変動も大きいので、メカニカル形又はディスク形を選定します。
タンク加熱
ドレン滞留による水撃や腐食を防ぐため、温調トラップは非推奨です。
ドレン量も多いためメカニカル形を選定します。
その他注意事項
設置位置:温調トラップはウォーターハンマーを緩和するため、上流配管よりも低い位置に設置します。
温度設定:気象条件(夏期・冬期等)に合わせて温度調整を行うのがプラントの省エネにつながります。ドレン排出温度を調整できる バイメタル形とエレメント形を選定したり、夏場は供給を停止、複数ラインのうち1本を停止する工夫も考慮する必要があります。
保温の範囲:トラップ配管の保温は、分岐部からトラップ手前まで行います。トラップ本体の保温は、作動条件や自然条件などの諸条件を総合して個別に判断します。
機種特有の注意点:ディスク形を採用する場合は、再蒸発(フラッシュ)蒸気により閉止できる機種が推奨されます。またベローズ形はウォーターハンマー等の外圧に弱く破損しやすいため、特殊な用途以外では使用することは少ないです。
安全率の考え方

スチームトラップは、装置からのドレン発生量に対して十分な容量を持っていなければならなりません。
そのため、スチームトラップの容量は ドレン発生量に安全率を乗じて決定する必要があります。
安全率は、蒸気使用装置の種類・スチームトラップの形式・使用条件によって定められますが、一般的な安全率の標準値は次のとおりです。
スチームトラップの安全率
フロート形:1.5倍
バケット形: 2〜3倍
温調バイメタル形: 2〜3倍
エレメント形:5〜2倍
ディスク形:5〜2倍
安全率が大きいほど、装置条件の変動やドレン量の増加に対する余裕が大きくなります。
バケット形や温調バイメタル形が2〜3倍と大きめなのは、ドレン量の変動や間欠的な排出特性を考慮したものです。
一方、フロート形は連続排出でドレン量に追従しやすいため1.5倍と比較的小さく設定されます。
データシート作成時の留意事項
データシートを作成する際は前項までに検討した装置条件・運転条件・材質・使用場所等を、整理して発注仕様とします。
スチームトラップの機器ごとに作成され、主な項目としては、下表の通りです。
設計条件と運転条件を分けて記載する点が特徴で、特に運転条件では上流・下流圧力とその差圧、蒸気常用温度・排出温度、復水量(ドレン量)の最大・最小を明記する必要があります。
| 区分 | 記載項目 |
| 基本 | Tag No./数量/形式/サイズ/接続 |
| 設計条件 | 圧力/温度/流体 |
| 運転条件 | 上流圧力/下流圧力/差圧/蒸気常用温度/排出温度/復水量(最大・最小) |
| 材質 | 本体/要部 |
| 付属品 | 各種付属品を記載 |
| その他 | 耐圧試験(水圧)/使用場所/配管クラス/備考 |
特に「差圧」と「最大復水量(安全率込み)」はトラップの容量選定で最重要項目なので、漏れなく記載する必要があります。
また、本体材質は配管クラスに従いバルブと同等以上とする必要があります。
まとめ
今回の記事では、スチームトラップの正しい選定方法と、選定時に考慮すべき条件や注意点について解説しました。
スチームトラップは単なる付属弁ではなく、プラントの安全性と省エネを根底で支える重要機器です。
選定においては、今回紹介した各条件を満たしているか確認するとともに、使用目的(すぐにドレンを排出するのか、顕熱を利用するのか)を明確にすることが重要です。
さらに、現場の条件(装置条件・自然条件)をしっかり見極め、「適切な形式」「適切な容量(安全率)」を持ったトラップを選定する必要があります。


