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【圧縮機】プラントで使用されるコンプレッサー(Compressor)の種類と特徴の解説

今回の記事ではコンプレッサーの種類と特徴について解説します。

コンプレッサーはガスを扱うプラントでは必ずと言って良いほど用いられます。

プラントにおける代表的なコンプレッサーの種類は以下の通りです。

主なコンプレッサー

①軸流コンプレッサー
②遠心コンプレッサー
③レシプロコンプレッサー
④ロータリーコンプレッサー

それぞれのコンプレッサーについての特徴、特に長所、短所について解説します。

コンプレッサーの種類の選定にお悩みの方や、どのような種類があるか興味のある方は是非ご一読下さい。また、身の回りのコンプレッサーがどのように選定されたか勉強してみたい方にもおすすめの記事です。

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軸流コンプレッサー

インペラが回転することで、プロセス流体に対して仕事をして昇圧するための機器です。

コンプレッサーの中では最も大流量に適したタイプです。また、遠心コンプレッサーよりも効率が良いとされています。

ジェットエンジンとして仕様されることが多いですが、プラントでは、特に大型の天然ガス改質器への供給や、パイプラインへの供給など、大流量が要求される工程で適用されます。

長所と短所は以下の通りです。

長所

・大流量に対応可能(数十万~数百万m3/h以上)
・遠心コンプレッサーよりも10%程度効率が良く、消費電力が低い。
・遠心コンプレッサーよりもサイズが小さく、軽量
・効率が良いため、ケーシングあたりの圧力比を高くできる。
・複数基を並列して運転する際、他のタイプよりも運転しやすい。

短所

・安定運転可能な運転範囲が遠心コンプレッサーと比べて狭い。
・流量制御とサージング保護に対しては、遠心コンプレッサーよりも複雑なシステムとなる。
・万一サージング領域で運転した場合の故障リスクが高い。
・他のタイプよりも、汚れやガスに同伴する異物に弱い。
・故障した場合、他のタイプよりも修理期間、コストが高い。

適用範囲

吸込側流量:10,000m3/h~1,000,000m3/h
吐出圧力:0.01MPag~1MPag

遠心コンプレッサー

軸流コンプレッサー同様、インペラが回転することで、プロセス流体に対して仕事をして昇圧するための機器です。軸流コンプレッサーほどではありませんが、大流量かつ高い揚程にも対応可能なコンプレッサーです。

また、信頼性も高いコンプレッサーですので、天然ガスを原料とした大型の化学プラントでは、圧縮工程でよく用いられます。

長所と短所は以下の通りです。

長所

・幅広い流量に対応し、大流量に対応可能(数百~数十万m3/h程度)
・吐出圧力がレシプロコンプレッサーよりも安定する。
・吐出温度の制約がレシプロコンプレッサーよりも緩い(150℃~180℃程度まで対応可)
・信頼性が高く、適切に運転していれば故障リスクは小さい。そのため、予備機は設ける必要が無い。
・他のタイプと比べて、容量あたりあたりのサイズが小さく、設置コストが小さい。
・レシプロコンプレッサーよりもメンテナンスしやすい。
・流量制御はシンプルなシステムとなる。

短所

・流量あたりの効率はレシプロコンプレッサーよりも10%低い。
・サージング領域では運転できないので、それを防ぐためにリサイクルラインが必要となる。
・能力が、ガスの物性に影響を受けやすい。特に分子量の変動に対して影響を受ける。
・低分子量のガス(例えば水素を多く含むガス)ではステージ毎の圧力比を上げられないので、段数が多くなってしまう
・故障した場合、他のタイプよりも修理期間、コストが高い。
・流量は性能曲線(Performance curve)に従うので、流量が大きくなると吐出圧が小さくなる。

適用範囲

吸込側流量:1,000m3/h~500,000m3/h
吐出圧力:0.1MPag~50MPag

レシプロコンプレッサー

ピストンが往復運動をすることで、プロセス流体に対して仕事をして昇圧するための機器です。

流量が小さく、かつヘッドが大きい場合に使用されます。

また、特に流量が小さい場合はダイアフラムコンプレッサーよりも(Diaphragm type Compressor)が適用されます。

長所と短所は以下の通りです。

長所

・遠心コンプレッサーでは対応できない運転(低流量、かつ高差圧)に適用可能。(0~数千m3/h程度)
・特に低分子量のガス(水素を多く含むガス)の場合、遠心コンプレッサーよりも経済的なメリットが大きい。
・信頼性が高く、適切に運転していれば故障リスクは小さい。そのため、予備機は設ける必要が無い。
・ガスの物性や組成の変動に対する影響が小さい。
・運転ロードを0~100%で変更可能。
・圧縮比が2を超えると遠心コンプレッサーよりも効率が良くなる。
・流量を変更しても差圧は変わらない。
・設置の際の心出しが容易

短所

・往復運動による機器の振動が大きく、基礎の重量を大きくする必要がある。
・脈動による吐出圧力の変動が避けられず、バッファーの設置が必要となる場合がある。
・吐出温度の制約が遠心コンプレッサーよりも厳しい(120℃~150℃程度まで対応可)
・信頼性が遠心コンプレッサーよりも劣る。そのため予備機が必要となる場合がある。
・特にバルブの故障リスクが大きく、頻繁なチェックが必要。
・メンテナンス費用が遠心コンプレッサーよりも高い。
・遠心コンプレッサーよりも、容量あたりの設置面積が広い。
・潤滑油が必要なコンプレッサーの場合、定期的な交換が必要となる。

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適用範囲(レシプロ)

吸込側流量:0m3/h~10,000m3/h
吐出圧力:0.1MPag~50MPag

適用範囲(ダイアフラム)

吸込側流量:0m3/h~10m3/h
吐出圧力:0.2MPag~20MPag

ロータリーコンプレッサー

レシプロコンプレッサーに適用される流量、圧力範囲で、レシプロコンプレッサーよりもメリットがある場合、あるいはデメリットが許容されないと判断される場合、ロータリーコンプレッサーが使用されます。

長所と短所は以下の通りです。

長所

・1500kW以下の容量であれば、レシプロコンプレッサーよりもコストが小さくなることがある。
・レシプロコンプレッサーよりも信頼性が高い。
・レシプロコンプレッサーよりもメンテナンスコストが小さい。
・往復運動をしないので、レシプロコンプレッサーよりも基礎重量を小さくできる。
・レシプロコンプレッサーよりも効率が良い。

短所

・スリップが発生すると効率が低下することがある。
・設計点以外で運転した場合は性能が低下する。
・流量は性能曲線(Performance curve)に従うので、流量が大きくなると吐出圧が小さくなる。

適用範囲(ダイアフラム)

吸込側流量:0m3/h~10m3/h
吐出圧力:0.01MPag~1MPag

まとめ

代表的なコンプレッサーの種類について特徴を解説しました。

主なコンプレッサー

①軸流コンプレッサー
②遠心コンプレッサー
③レシプロコンプレッサー
④ロータリーコンプレッサー

コンプレッサーの種類の選定にお悩みの方や興味のある方の参考になれば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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