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【計装】緊急遮断弁の設計の留意点について解説

今回の記事ではプラントに設置する緊急遮断弁の設計の留意点について解説します。

緊急遮断弁はEmergency Shut Down Valve/Emergency Shut Off Valveとも呼ばれ、法規的な要求やプラント設備の保護のために、緊急時に配管を遮断するために設置されるバルブです。分類としてはオン-オフ弁(On-Off弁)に分類され、弁のタイプとしては、ゲート弁、ボール弁の他、バタフライ弁も使用されることもあります。

緊急遮断弁の主な留意点は次の通りです。

緊急遮断弁設計の留意点

・ 法規的な要求事項
・ 緊急遮断弁の仕様
・ 遮断方式
・ 部分動作試験

一般に、緊急遮断弁の設置位置はプロセスエンジニアや電気計装エンジニアによって検討され、PFDP&ID上に表記されますが、プロセス的な要求事項に基づいて決定されるわけではないため、プラント設計の初期では検討が後回しにされがちですが、高圧ガス保安法などの法規的な要求に基づく緊急遮断弁の設置は必須であるため、早めに検討する必要があります。

次項からそれぞれの項目について解説していきます。

法規的な要求事項

高圧ガス保安法/コンビナート等保安規則

高圧ガス保安法で、いわゆるコンビ則に該当するプラントにおいては、「プラント運転中にガス漏洩や火災がなどの異常が発生した際に災害の拡大防止のため、設備の封じ込めや原材料の供給を遮断するための緊急遮断装置を設けること」が義務付けられます。

具体的には一定量以上の可燃性ガス、毒性ガス、酸素のタンク(貯槽設備)や特殊反応設備、高圧ガス設備や配管に対して設置が必要となります。

要否については燃焼熱量(KW値)と停滞量で決まります。

<燃焼熱量(KW値)が2.5×10^11以上>

緊急遮断弁の設置が必要です。

<燃焼熱量(KW値)が2.5TJ未満>

停滞量が次の数値以上の場合、緊急遮断弁の設置が必要です。

可燃性ガス:100t
毒性ガス:30t

出典:コンビナート等保安規則の機能性基準の運用について(経産省)

重要度分類

緊急遮断弁の重要度は高圧ガス設備等耐震設計基準に規定される設備の重要度(設備の重要度Ia、I、II、IIIの4種類)に応じて決定され、弁の重要度は次のように3種類に分類されます。

弁の重要度 対象設備
1級 設備の重要度Ia、Iの元弁、緊急遮断弁
2級 ・設備の重要度IIの元弁、緊急遮断弁
・コンビ則に規定するインターロックや緊急遮断、緊急移送装置に使用される制御弁、遮断弁
3級 ・上記以外の弁

また、地震防災遮断弁として設置する場合は以下の項目について留意が必要です。

地震防災遮断弁の留意点

・ 地震防災遮断弁は、地震時に速やかに遮断する機能が確保されていれば、緊急遮断弁の他、制御弁(調節弁)、逆止弁でも認められる場合があります。

・ 地震防災設備であるため、地震時でも機能が維持されるべく所定の強度(地震防災遮断弁の重要度に関わる告示第14条の2第3号の規定)を有する必要があります。

・ 弁を境に配管の重要度が異なる場合は、弁の重要度は上位の重要度にする必要があります。

緊急遮断弁の仕様

弁本体の形式

緊急遮断弁として使用される本体形式として、ボール弁、ゲート弁、バタフライ弁が使用され、取扱う流体や運転条件、遮断時の要求事項によって適切に選定されなければなりません。

それぞれのタイプの特徴についてはこちらの記事を参照下さい。

また、緊急遮断弁は専用で設置されることがほとんどですが、調節弁と兼ねる場合もあります。

駆動部形式

緊急遮断弁には「緊急遮断装置の操作機構には、遮断弁の構造に応じて、液圧、気圧、電気又はバネ等を動力源として用いること」の要求があり、空気式(ダイアフラム式、ピストンなど)や電動式が選定されます。

また、非常時でも遠隔操作による開閉機能を有し、開閉を行うための予備能力の確保が必要です。そのため、空気式の場合はボリュームタンクの設置や電動弁の場合は電源系統について十分に検討する必要があります。

弁座リーク量

リーク量はリーククラスのクラスVやクラスⅥが採用されることがほとんどです。

リーククラスについてはこちらの記事を参照下さい。

その他

火災発生時でも緊急遮断弁が安全に作動するために、本体と駆動部を耐火構造や耐火被覆で覆うことや、その対象設備付近のテーブル保護を行うことの検討が必要です。

操作機構

緊急遮断弁に求められる操作機構は次の通りです。

・ 計器室においても操作することができるもの、又は自動的に作動するものであること。
・ 遮断操作は。簡単であるとともに確実かつ速やか「に行うことができるものであること。

また、高圧ガス保安法で要求される緊急遮断弁の機能は次の通りですが、これは遵守しなければなりません。

設置場所 操作機能
特定事業所の製造設備 自動又は遠隔操作
貯槽用 遠隔操作、距離が指定される
コンビナート導管 自動又は遠隔操作
地震防災遮断弁 地震計と連動

法規の要求以外では機器、装置の保護の目的で緊急遮断弁が設置される場合がありますが、このような場合はプロセスエンジニアと電気計装エンジニアがよく協議して仕様を決める必要があります。

部分動作試験

高圧ガス保安協会が発行している基準「コンビナート等保安規則の保安検査基準」(KHIS 0850-3)では、緊急遮断弁について年に一度の作動検査が規定されています。

作動試験では、一般的には部分動作試験(パーシャルストロークテスト)により、以下の項目の検査が行われます。

部分動作試験の検査項目

・ シートやディスクなどの弁内部の固着
・ ステムやグランドパッキンの固着
・ アクチュエータの固着や破損
・ 計装空気ラインの閉塞

部分動作試験の実装方法としては・ 電磁弁とパイロット弁の組み合わせや、メカニカルロックの使用、スマートポジショナによる方式がありますが、現場/遠隔操作、コスト、自己診断機能の要否を検討して実装方式が決定されます。

まとめ

今回の記事では緊急遮断弁の設計の留意点について解説しました。

この記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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