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【配管】CUI(保温材下腐食)とは?発生メカニズムと防食塗装・維持管理対策について解説

今回の記事ではプラント配管のCUI(保温材下腐食)の発生メカニズムと対策について解説します。

CUI(保温材下腐食)は、保温材・耐火被覆材で覆われた機器・配管の外面に生じる腐食のことを指します。

日本の石油コンビナートをはじめとするプラント設備の多くは、建設から30〜50年が経過し高経年化を迎えています。

プラント事故の中でも「漏洩事故」は過去と比較して約3倍に急増していると言われており、さらにその7割以上が配管系で発生しているとされています。高圧ガス保安協会(KHK)の統計でも、材料劣化や腐食による事故原因が主要部分を占め、増加傾向に歯止めがかかっていません。

この配管漏洩の主要因として深刻化しているのがCUIですが、現場での対策には以下の非常に高いハードルが存在します。

  • 発見が極めて困難: 機器や配管が保温材や耐火被覆材で完全に遮蔽されているため、日常的な外観の目視検査では腐食の進行に気づくことができません。

  • 莫大な点検コスト: 内部の腐食を確認するために保温材や耐火材を剥離しようとすると、足場の設置を含め多大な費用と手間が必要になります。

  • 対象範囲の広さと環境要因: プラント内の「すべての保温配管」が対象となるうえ、日本のプラントは臨海部に位置することが多く、過酷な大気環境が腐食をさらに加速させます。

静かに進行し、気づいた時には大規模な漏洩事故へと繋がるCUIは、長期稼働プラントの信頼性確保において決して見逃せない劣化現象です。

本記事では、この「見えない脅威」であるCUIの発生メカニズムから、防食塗装の要点、そして保温材を剥がさずに検査を行う最新の維持管理アプローチまでを詳しく解説します。

CUIの発生機構

 

CUIは 大気腐食の一種と考えられており、外部から浸入した雨水、または保温材内部で凝縮した水分が配管表面に形成する水膜を通じて、鋼材の表面に 腐食電池と呼ばれる電池が形成され、直流の電流が流れる現象(電気化学反応)です。

つまり、雨水や凝縮水により保温材・耐火材が吸水状態となり、金属表面の濡れた状態が長期間保持されてCUIが発生します。さらに、その水分に溶解している塩化物イオンなどの成分が濃縮されて、腐食発生の加速要因となります。

腐食電池の電気化学反応

カソード(陰極):還元反応(主に水に溶け込んだ酸素の還元) O₂ + 2H₂O + 4e⁻ → 4OH⁻

アノード(陽極):酸化反応(主に鉄の溶解) Fe → Fe²⁺ + 2e⁻

カソード反応とアノード反応が対になって進行するのが特徴です。生成物は種々の水酸化鉄および酸化鉄(マグネタイト Fe₃O₄)からなります。

屋外大気中の炭素鋼の全面腐食と異なり、CUIは

①配管表面に形成する水膜の厚み
②水膜中に溶解する不純物

などにより、腐食速度が大きくばらつく(1mm/年程度から最大10mm/年)という特徴があります。

CUIの発生要因

CUIの発生要因は以下の4つとされています。

CUIの発生要因

①保温材表面への水分の供給
②水分の浸入や水を保持しやすい構造
③イオン成分
④温度

保温材表面への水分の供給

CUIは、保温材の内外表面に水分が供給されることで発生します。

以下の表に代表的な水分供給源と、特に発生しやすい箇所についてまとめました。

水分供給源 特に発生しやすい箇所
屋外設置の場合の雨水
冷却塔(冷水塔)の放散水 冷却塔付近の配管
冷却用の散水
蒸気の放出 スチームトラップ近傍の配管/スチームトレース配管の保温内継手
海水飛沫 桟橋上配管
結露(金属表面が常温以下・0℃以上)

水分の浸入や水を保持しやすい構造

保温材・耐火材の構造や施工方法によっては、水分が侵入しやすかったり、水を保持するような構造になっており、それがCUIの原因となることがあります。

例えば、機器や配管の形状不連続部や、機器の配管連結部などは、保温材の外装の構造が複雑となり、内部への水の浸入がしやすくなっています。また、外装の繋ぎ部の構造や施工品質も、水分の浸入に大きく影響します。

一旦浸入した水分は、機器の強め輪や保温材受け、配管の垂直配管から水平への移行部などに流れて集まり、外装板や保温材自体によりこの水分が保持されてしまいます。

さらに、振動のある配管では、経年で構造が緩むことで水分が侵入しやすくなることが多いです。

そのため、水を「入れない・溜めない・抜く」構造とすることが施工上の重要となります。

イオン成分

CUIの原因となりやすいのは、保温材に含まれる塩素成分です。

沿岸部でのプラントは、波しぶきや潮風によって、塩化物イオンが外装板に付着し、水とともに保温材内部へ供給され、腐食発生を加速させる一因となります。

特にオーステナイトステンレス配管では、塩化物イオンが外面応力腐食割れ(ESCC)を引き起こすため注意が必要です。

また、ごみ処理設備やボイラ、燃焼炉の排ガスが放散されるベントスタック付近では、排ガス中のSOx・NOx等の塩も腐食加速要因として影響する場合があります。

温度

CUIの発生や進行スピードを決定づける上で、水分の存在と同じくらい重要なファクターとなるのが「温度」です。

温度帯によってCUIのリスクは大きく変動します。各温度域がCUIに与える影響と注意点を整理すると次のようになります。

温度域

金属表面の水分が凍結している温度域(凍結域)では、電気化学反応が起きないためCUIは発生しません。また、表面が常に乾燥した状態を保てる高温域(乾燥域)では、金属表面に水膜が形成されないため、同様にCUIは発生しにくくなります。

一方、内部温度が -10℃〜120℃程度 の範囲は、保温材内部で結露などの水分が液体の状態で存在しやすいため、CUIが最も発生しやすい温度域とされています。さらに、腐食反応は温度が高いほど速度を増すため、常温近傍よりも 70℃〜100℃程度 の範囲が、最もCUIの進行が著しくなる危険な温度域です。

材質

例えば、NACE(全米腐食技術者協会)では、材質ごとに特に警戒すべき温度帯が示されています。

炭素鋼の場合は-4℃〜150℃ の範囲で最もCUIが発生しやすいとされています。

オーステナイト系ステンレス鋼の場合では50℃〜150℃ の範囲において、CUI環境下での外面応力腐食割れが発生しやすくなるため、防食塗装やアルミ箔巻きなどの対策が求められます。

注意点

温度に関する重要な設計上の注意として、亜鉛は耐食性を減少させるため、亜鉛めっき管は50〜150℃の範囲に適用してはなりません

塗装システム選定にあたっては、対象物の温度変動に注意が必要です。通常運転が低温域でも、スチームパージなどで一時的に高温になる配管では、その高温に対応した塗装が必要です。逆に通常が高温域で塗装不要でも、低温域(150℃以下)になる期間がある場合は塗装が必要となります。

CUI対策

CUI対策に関しては、国内外において規格やガイドラインが存在します。

 

ここでは主要な規格、ガイドラインの内容を踏まえて代表的なCUI対策について解説します。

規格・ガイドライン 内容
NACE RP0198 保温材下・耐火被覆下腐食の制御を記載。塗装システム(Coating System)を提案。
API RP 583 Corrosion Under Insulation and Fireproofing。CUI対策で推奨される設計基準を記載。
ENAAのガイドライン 保温材下配管外面腐食(CUI)に関する維持管理ガイドライン。国内の実情を踏まえたCUI維持管理指針を記載。優先順位分けとスクリーニング検査を提唱。
JPI 8S-1 配管維持規格。外面腐食としてCUI対策が追記されている。

防食塗装

CUI対策の中心は防食塗装です。保温材とその外装の組み合わせや物性改善を組み合わせることで、『検査に極力依存しない管理』を目指す対策です。

防食塗装に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。

一例として、NACE RP0198-98の推奨塗装システムを示します。

オーステナイトステンレス鋼用(NACE Table 1)
システム 温度範囲 塗装(プライム/フィニッシュ)
SS No.1 -45〜60℃ エポキシ 130µm
SS No.2 -45〜150℃ エポキシ/フェノリック 又は高温用アミン硬化コールタールエポキシ 各150µm
SS No.3 -45〜370℃ 空気乾燥形 変性シリコーン 各50µm
SS No.4 (注) -45〜760℃
※急激な温度変動を伴うサイクリックサービスには非推奨
シロキサン 各100µm
炭素鋼用(NACE Table 2、保温下・セメント系耐火被覆下)
システム 温度範囲 塗装(プライム/中塗り/フィニッシュ)
CS No.1 -45〜60℃ 高ビルドエポキシ 130µm×2層
CS No.2 -45〜60℃ 溶融結合エポキシ 300µm
CS No.3 -45〜60℃ メタライズドアルミ 180〜250µm + エポキシポリアミド
CS No.4 95℃ max 湿気硬化ウレタンアルミ + アクリルウレタン
CS No.5 -45〜150℃ エポキシ/フェノリック 又は高温用アミン硬化コールタールエポキシ 150µm×2
CS No.6 120〜540℃(間欠60〜120℃) メタライズドアルミ + シリコーンシール
CS No.8 120〜540℃(連続120℃超) 無機ジンク 75µm
CS No.9 -45〜650℃ シロキサン 100µm×2
CS No.10 60℃ max ペトロラタム/石油ワックステープ 1〜2mm
CS No.11(耐火被覆下) 常温 高ビルドエポキシ 又はコールタールエポキシ 130µm

塗装仕様の実務ポイント:

・炭素鋼、低合金鋼は 低温域を対象に塗装するのが一般的です。多く使用されるは エポキシフェノリック(Epoxy Phenolic)で、無機ジンク・亜鉛めっきの使用は推奨されません。

・ステンレス鋼は塗装しない場合でも環境により外面応力復職割れの可能性を検討することが必要です。塗装しなくてもアルミ箔を巻く方式が採用されることもあります。

塗装システム選定の温度範囲の与え方

炭素鋼、ステンレス鋼とも 区切りとなる温度(一般的には150℃程度)を規定しておき、全体塗装システムと整合させることが重要です。

ただし、通常運転温度が規定温度以下でも、運転変動や蒸気パージなどで規定温度以上になる運転ケースがある場合はCUI対策のため塗装が必要となります。

保温材・外装の改善と設計上の配慮

防食塗装と並ぶCUI対策の柱が、保温材の改善と外装カバーの改善です。

これらは、そもそも水を保温材内部に入れない・溜めないことを目的とした対策です。

外装カバーの改善

外装カバーにはステンレス板製・アルミニウム板製もありますが、国内では亜鉛鉄板製が使用されることが多く。継ぎ目の構造・施工品質が水分浸入を大きく左右します。

外装カバーのCUI対策としては、継ぎ目やノズル・サポート貫通部からの水の浸入を防ぐシール構造を設けたり、雨水を排出する水切り構造を設けることが一般的です。

また、外装カバーの木ネジ固定が経年で緩み、パトロール(点検)でカバーが道連れに落下した事例もあるので、施工後のメンテナンスも重要です。

保温材受け部の構造

浸入した水分は、機器の強め輪・保温材受け・垂直→水平移行部などに流れて集まり保持されてしまいます。

NACE・APIには 保温材受け部のCUIの模式図と、それを抑制する保温材受け構造の模式図が示されており、水が溜まらず抜ける構造とすることが重要でです。

ステンレス鋼の外面応力腐食割れ(ESCC)

オーステナイト系ステンレス鋼では、CUI環境下で ESCC(External Stress Corrosion Cracking:外面応力腐食割れ)が問題となります。

塩化物イオンを含む水膜と引張応力・温度(NACEでは50〜150℃)が重なると発生するとされています。

対策として、塩化物を含まない保温材の選定、防食塗装(エポキシフェノリック等)、あるいはアルミ箔巻きなどが用いられます。

ステンレス鋼の配管は塗装しない場合もありますが、そのような場合であっても、環境によりESCCの可能性を検討することが前提となります。

維持管理

既設設備の場合は、CUIは 維持管理によって対処するしかありませんが、膨大な量の保温配管すべてを剥離検査するのは非現実的です。

ENAA(エンジアリング協会)が発行しているガイドラインでは、温材剥離箇所の優先順位設定と特定に至る手順を最重要ポイントとして挙げています。

ENAAガイドラインでの対策

① 優先順位の選定方法を明確にし、整理すること。
② 優先順位評価の精度向上のため「腐食メカニズム」を重視して腐食予測の精度を向上すること。
③ 保温材を剥がす決断のために、経験則や目視点検のみに頼らない判断ツール(スクリーニング検査)を強化すること。
④ 目視検査・非破壊検査を適切に活用して保温材剥離箇所を特定する判断の精度を高めること。

優先順位分け ― 重要度 × 腐食予測

優先順位分けの評価手法として対象配管を、重要度評価(漏洩時の影響度:健康・安全・環境・社会・経済)腐食予測度(漏洩の危険性)の2軸で評価する手法があります。

優先順位分けでは「最優先配管」「優先配管」「その他配管」の3つに大別し、腐食予測度は、経過年数・運転温度・運転条件・防食仕様・大気環境と目視点検で予測度ランク(高・中・低)を決め、肉厚管理データで補正します。

区分 定義 対応例
最優先配管 漏洩時の影響度が非常に大きく、かつCUI発生の可能性が非常に高い 最優先に保温材を剥離してCUI検査(基本的に全面剥離)
優先配管 漏洩時の影響度が大きく、CUI発生の可能性が高い スクリーニング検査によって剥離箇所を特定
その他配管 漏洩時の影響が小さい、CUI発生の可能性が低い
スクリーニング検査 ― 目視検査+非破壊検査

スクリーニング検査は、優先配管に対して剥離する箇所の特定を行う判断のための検査です。目視検査と非破壊検査を適切に用い、経験を加味して判断を行います。

目視検査:CUIの発生しやすい場所(保温材の不連続部や外装板の腐食・損傷部など)における外観の不具合の範囲・程度から、水の侵入状況を推測して保温材を剥離すべき箇所の候補を抽出する。

日常点検(目視点検):運転中に既設足場や地上からの遠望により保温配管全体の外装板外観を広く目視観察し、異常や不具合箇所を検出する(運転員が行うことが多い)。結果は腐食予測に反映する。

非破壊検査技術

目視検査では不明な剥離必要箇所の判断を助けるために、保温材を被覆した状態のまま検査できる非破壊検査技術が用いられます。

ENAAガイドラインは次の3種類を挙げています。

非破壊検査法 原理と特徴
ガイド波超音波検査法 リング状の受発信機により配管長手方向に伝播する超音波を発生させ、一度に長距離範囲の配管全面を走査し減肉の有無を検出する
パルス渦流磁気検査法 電磁気を利用した渦流磁気検査の一種。パルス電流により高い磁界を与え、保温材を被覆した状態のまま肉厚の減少を測定できる
放射線検査法 放射線源に同位元素(ガンマ線)またはX線を用いる。透過能により適用できる配管肉厚・外径範囲が決まる

非破壊検査の効果は 検出率(剥離後の腐食箇所数 ÷ スクリーニングで特定した箇所数)で評価します。(検出精度は最小断面欠損率(%)などで表現)

対象配管の状況に応じて適切な手法を選定する必要があります。

まとめ

CUIは被覆材下で進行する見逃せない外面腐食です。発見が困難で、剥離検査に多大な費用がかかり、高経年プラントで顕在化すします。漏洩事故の7割以上が配管系で、CUIがその主要因とされており、設備年齢30〜50年・臨海部立地のプラントで深刻化しています。

発生機構は大気腐食型の電気化学反応です・保温材が吸水し金属表面の濡れが長期保持され、腐食電池(カソード:酸素還元/アノード:鉄溶解)が形成されます。塩化物イオン等の濃化が加速要因です。

発生要因は水分供給・水の浸入保持・イオン成分・温度です。雨水/冷却塔/蒸気/海水飛沫/結露による水分、形状不連続部での浸入・保持、塩素/海塩/SOx・NOx、そして温度が重要なパラメータです。

温度域は −10〜120℃(NACE炭素鋼 −4〜150℃)で発生しやすく、70〜100℃で最も進行するとされています。凍結域・高温乾燥域では発生しにくい。ステンレス配管の外面応力腐食割れ(ESCC)は50〜150℃で発生しやすいです。

対策の柱は 防食塗装・保温改善・外装改善です。NACE などの規格でCUI対策の防食塗装が規定されています。運転中の温度変動も考慮して選定する必要があります。

既設設備は維持管理で対処します。ENAAガイドラインでは、重要度×腐食予測による優先順位分けし、スクリーニング検査(目視+非破壊)を行って剥離箇所特定、というフローを提示しています。ガイド波超音波・パルス渦流磁気・放射線などの非破壊検査で保温材を付けたまま減肉を検出する方法があります。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 技術情報を200記事以上執筆、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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