
今回の記事ではプラント設備の防食塗装の基礎知識について解説します。
プラントエンジニアリングにおいて、「防食塗装」は単なる美観の問題ではなく、過酷な環境下にある設備を腐食から守り、プラントの寿命(ライフサイクル)を決定づける極めて重要な要素です。
防食塗装は、①塗料そのものの性質、②被塗物が置かれる腐食環境、③素地調整(下地)、④施工条件と管理、の四つが噛み合って初めて所定の寿命を発揮します。
特に素地調整は塗膜寿命への寄与が最も大きい一方で費用もかかる最重要工程であり、設計段階で「塗装仕様」と「素地調整グレード」を同時に決めることが重要です。
本記事では、設計者から施工管理担当者まで手元に置いておきたい情報として、プラント塗装の全体系を網羅的に解説します。
合わせて読みたい
・保温材・断熱材はどんな基準で選定する?選定時の留意点について解説
・プラントで使用される保温材・断熱材の種類と特徴について解説
・プラント建設後の化学洗浄用薬剤と使用時の留意点について解説
・禁油・禁水処理とは?目的と処理内容について解説
・【材質】ステンレスが水で腐食する?微生物腐食の原理と対策
・【材質】水素配管の材質は炭素鋼?ステンレス鋼?水素浸食と水素脆性について解説
・【配管】家庭用水道管の凍結防止対策に対する定量評価
・【配管】エロージョン速度とは?エロージョンを引き起こす配管流速について解説
・【配管】放熱/入熱による任意の地点における配管温度の導出
・【配管】放熱計算による配管が凍結するまでの時間の推定-伝熱モデルの解説-
塗料の基礎
塗料は「塗装」という作業を通じて機能を発揮する材料であり、塗装して初めて製品となることから「半製品」とも呼ばれます。
塗装の役割
塗装の目的は大きく分けて以下の3点です。
物の保護:金属の防錆、コンクリートの中性化防止など。防食塗装が主眼とするのはこの機能。
物の美粧:色彩・質感・光沢を与え、意匠性を高める。
新機能の付与:汚れ防止、防カビ・防藻・抗菌、張り紙防止、結露防止など。
塗料の成分
一般的な溶剤形塗料は、塗膜として残る成分(樹脂・顔料・添加剤)と、塗膜として残らない成分(溶剤)から構成されます。
塗料は主に以下の4成分から成ります。
顔料 (Pigment): 色を付ける、錆を防ぐ、塗膜を補強する(防錆顔料、体質顔料など)。
樹脂 (Resin): 塗膜の主成分。耐久性を決定する(エポキシ、ウレタン、シリコンなど)。
溶剤 (Solvent): 樹脂を溶かし、塗装しやすい粘度にする(シンナー、水)。乾燥時に揮発します。
添加剤 (Additives): 泡消し、沈殿防止、乾燥促進など微量で性能を調整するもの。
塗膜性能を決定づける最重要成分は樹脂です。
| 成分 | 分類 | 役割・ポイント |
| 樹脂(ビヒクル) | 天然樹脂・加工樹脂・合成樹脂 | 塗膜を形成する主成分。防食性・耐候性など基本性能を決定する。アルキド/塩化ゴム/エポキシ/アクリル/ポリウレタン/ふっ素/エマルションなど |
| 顔料 | 着色顔料・体質顔料・燐片状顔料・防錆顔料 | 水や溶剤に溶けない粉末。着色、硬さ等の物性調整、腐食因子の遮断(燐片状)、防錆性の付与を担う |
| 添加剤 | 消泡剤・タレ止め剤・硬化促進剤 等 | 微量成分。仕上がり・作業性・乾燥性の向上、成分の沈降防止など |
| 溶剤 | (塗膜には残らない) | 樹脂を溶かし流動性を調整、顔料を安定分散、作業性・乾燥性を調整する |
乾燥・硬化機構
塗料は塗装後に溶剤が揮発することで乾燥が始まり、最終的に硬化した塗膜が得られます。
加えて2液型塗料は主剤と硬化剤の化学反応により、緻密で高性能な塗膜を形成します。
重防食分野で多用されるエポキシ・ポリウレタン等はこの反応硬化型です。
下塗・中塗・上塗の役割
塗膜は複数の工程膜で構成され、各層に役割があり、各層がうまく組み合わさって初めて優れた性能を発揮します。
| 工程 | 主な役割 | 要求性能 |
| 下塗 | 鋼材への付着性と防さび力を確保(防食性の中核) | 素地との濡れ性・付着性、水/酸素/塩素の遮断、不動態化 |
| 中塗 | 下塗と上塗の付着安定性、膜厚確保、下地の隠蔽 | 層間付着性、膜厚付与(下塗と上塗の樹脂が近い場合は省略されることもある) |
| 上塗 | 耐候性を担い、光沢・色相を与える | 耐紫外線性、耐水性、光沢・保色性、耐汚染性、耐摩耗性 |
樹脂の種類による性能差
使用する樹脂によって耐久性に差が生じます。代表的な序列は次のとおりです。
耐候性・防食性の序列(優 → 劣)
上塗の耐候性:ふっ素樹脂 > ポリウレタン樹脂 > 塩化ゴム樹脂 > フタル酸樹脂
下塗の防食性:ジンクリッチペイント > エポキシ樹脂 > 塩化ゴム樹脂 > 油性・アルキド(JISさび止め)
※いずれも水・酸素・塩素の遮断性、紫外線に対する結合の強さが影響します。
腐食と防食設計
腐食のメカニズム
鉄が錆びる(腐食する)のは、鉄が安定した酸化鉄の状態に戻ろうとする自然現象です。
プラント設計においては以下の事項について考慮しておく必要があります。
・水分・酸素・電解質(塩分)が多いほど腐食は速い。特に海塩粒子の影響で海岸部は著しくさびやすい。
・温度・湿度、結露の有無、薬品の存在、日照や暗渠などの条件も腐食速度を左右する。
・保温材の下は雨水侵入で湿潤雰囲気になりやすく、保温下腐食(CUI)の温床となる。
そのため、防食塗装にもとめられる効果は以下の通りとなります。
-
被覆作用(遮断効果): 塗膜によって水や酸素を物理的に遮断します。エポキシ樹脂やガラスフレーク入り塗料がこれにあたります。
-
防錆作用(化学的効果): 防錆顔料(鉛系、クロム系など※近年は環境対応で減少)により、金属表面を不動態化させます。
-
犠牲防食作用(電気化学的効果): 鉄よりもイオン化傾向の大きい金属(亜鉛など)を接触させることで、亜鉛が先に溶け出し、鉄を守ります。「ジンクリッチペイント」がこの代表です。
防食設計で考慮する項目
塗装による防食を検討する際は、以下を総合的に勘案し、「塗装仕様」と「素地調整グレード」を選定することが重要です。
防食設計の考慮事項
・対象製品の置かれる環境(大気部・没水部・耐薬品部・温度・腐食因子)
・対象部材の期待耐用年数
・施工期間とコスト(材料費・施工コスト)
・法的な制約(規制物質など)
・意匠性・デザイン性(色・つや・光輝感)
最低必要膜厚の目安(環境別)
極弱い腐食環境:約 75 μm / 一般的な腐食環境:約 125 μm / 海浜などの強い腐食環境:約 250 μm
実際の防食設計では、海浜部か都市部か、日照・暗渠、水中環境か(pH・温度)、薬品環境か等に応じて塗料種と膜厚を適切に選定します。
重防食塗料の代表例
重防食塗料は海洋構造物・電力関連・化学プラント・橋・クレーン・鉄塔・トンネル等、腐食の厳しい環境に適用されます。
長期耐久を求められるため、比較的厚い塗膜仕様となるのが特徴で、代表的仕様の合計膜厚は 250 μm 程度(鋼道路橋防食便覧)です。
通常、塗装は「下塗り」「中塗り」「上塗り」の積層構造(システム)で設計されます。
| 工程 | 用途 | 一般名称の例 |
| 下塗り | さび止め・防錆プライマー | 油性さび止め、シーラー、(変性)エポキシ下塗り、ショッププライマー、ジンクリッチペイント(プライマー)、エッチングプライマー |
| 中塗り | 層間付着性保持・膜厚確保・下地隠蔽 | エポキシ中塗り、MIO塗料(雲母状酸化鉄) |
| 上塗り | 耐候性(色彩・光沢保持)、紫外線・水・薬品に耐える、美観 | エポキシ、ポリウレタン、ふっ素、シリコーンアクリル |
ジンクリッチペイント
亜鉛末(粉末)を 70 wt% 以上と多量に含有する「塗布型めっき」や有機系(アミン硬化エポキシ樹脂)と無機系(アルキルシリケート系)があります。
| 項目 | 有機ジンクリッチ | 無機ジンクリッチ |
| 樹脂 | アミン硬化系エポキシ樹脂 | アルキルシリケート系 |
| 防食性 | 無機系よりやや劣る | より良好(最も長期の防錆力) |
| 素地調整 | 2種ケレン面でも実用可(塗替に対応) | 高グレードが必要(Sa2 1/2 以上、Rz50μm程度) |
| ミストコート | 不要 | 必須(多孔質で10〜30%の空隙。上塗時の発泡防止) |
| その他 | 鉄素地へ直接塗装、施工条件の制約が少ない | 耐熱・耐油・耐薬品性が良好、鉄素地へ直接塗装 |
ジンクリッチペイントは次の三つの作用で鋼材を守ります。
① 犠牲防食作用:亜鉛が鉄より卑(イオン化傾向大)であるため優先的に溶解し、鋼材のカソード反応を促して鋼材を保護する(E_Fe>E_SP>E_zn の関係)。
② 腐食生成物による腐食抑制:亜鉛の腐食生成物が緻密な層を形成し、腐食因子の侵入を抑える。
③ 自己修復作用:亜鉛腐食生成物(白錆)が塗膜欠損部・傷部を埋め、静的環境では薄膜(15μm程度)でも十分な修復能を示す。
エポキシ樹脂塗料
エポキシ樹脂は素材との付着性が良く、腐食因子(O₂・H₂O・Cl⁻)の遮断能力が高いため、重防食の下塗として多用されます。
一方で紫外線に弱く短期間で樹脂が劣化(白亜化)するため、屋外では上塗が必要となります
種類:ピュアエポキシ/変性エポキシ(付着性向上・弱溶剤希釈可)/超厚膜型(2〜5mm、干満帯など強腐食部)/無溶剤型(閉鎖エリア・水中硬化)/タールエポキシ(安全性問題から変性エポキシへ移行)
上塗塗料の耐候性
上塗は樹脂表面が紫外線で劣化すると顔料がむき出しになり、平滑性・光沢が低下します。耐候性は原子間結合の強さに大きく依存します。
| 樹脂系 | 代表的な結合 | 結合エネルギー (kcal/mol) | 耐候性の傾向 |
| アクリル | C–C | 85 | 標準 |
| シリコン | Si–O | 106 | 高い |
| ふっ素 | C–F | 116 | 最も高い |
結合エネルギーが大きいほど劣化しにくく耐候性は良好です(ふっ素>シリコン>アクリル)。
ただし結合エネルギーだけで全てが決まるわけではありません。
重防食分野では一般にポリウレタン、さらに高耐久なふっ素樹脂が上塗として用いられます。
素地調整
素地調整(ケレン)とは、塗料を塗布する前に ①被塗装面を清浄にし、②適度な凹凸を作る作業のことを言います。
塗膜性能を支配する最重要工程でありながら、最も費用のかかる工程のため、設計時に最適な素地調整グレードを決めることが非常に重要です。
素地調整と塗膜寿命への寄与率は以下の通りです。素地調整は塗装膜厚よりも塗膜寿命への影響が大きいことがわかります。
| 要因 | 寄与率(%) |
| 素地調整(1種ケレンと2種ケレンの差) | 49.5 |
| 塗り回数(1回塗りと2回塗りの差) | 19.1 |
| 塗料の種類(塗装系の違い) | 4.9 |
| その他(塗装技術・気候など) | 26.5 |
素地調整の方法は物理的処理と化学的処理があります。
物理的処理
物理的処理は、ブラスト法、動力工具法、手工具法があります。
ブラスト法:研削材を高速で投射し、衝撃力でさび・塗膜を除去しつつ鋼面に表面粗さを付与する方法です。除錆・粗さともに優れます。ブラスト処理では、サビを落とすだけでなく、表面に微細な凹凸(アンカーパターン。通常30μm〜75μm 程度)を形成し、塗料の投錨効果(食いつき)を高めます。
ブラスト材料に関する注意としてシリカ(SiO₂)を 1 wt% 以上含有する研削材は使用禁止です。
けい砂(シリカ)は深刻な健康被害が報告され、ISO・JIS でもブラスト材料から削除されています。ステンレス鋼には石炭灰ガラス・溶融アルミナ等を用い、けい砂は使用されません。
動力工具法:電動・エア駆動の工具で研磨。平面部に適するが複雑形状は不向きで、緻密な黒皮やジンクリッチの完全除去は困難とされています。
手工具法:ハンマー・ワイヤーブラシ等を用いる方法です。労力大で完全なさび除去は困難です。
化学的処理
化学的処理には酸洗い法、化学処理法があります。
酸洗い法:酸性薬品で鋼材表面のさび・酸化皮膜を除去する方法です。
化学処理法:リン酸などで処理面にリン酸塩皮膜を形成する方法です。
除錆度グレード(ケレンの対応)
国内では慣行的に「1〜4種ケレン」と表記され、それぞれの定義は以下の通りです。
| 素地調整程度 | 作業方法 | 内容 |
| 1種ケレン | ブラスト法/酸洗 | 黒皮・さび・塗膜を除去し清浄な鋼材面とする |
| 2種ケレン | 動力工具+手工具 | さび・塗膜を除去し鋼材面を露出(くぼみ・狭隘部には残存) |
| 3種ケレン | 同上 | さび・劣化塗膜を除去し露出(活膜は残す) |
| 4種ケレン | 同上 | 粉化物・付着物を落とし活膜を残す |
素地調整後の放置制限時間
素地調整後は時間経過でさびが再発(フラッシュさび)するため、下塗までの放置時間に制限があります。
| 素地調整の種類 | 塗装までの制限時間 |
| ブラスト処理 | 4 時間以内 |
| ブラスト処理 | 8 時間以内 |
| 動力工具処理 | 12 時間以内 |
| 手工具処理 | 12 時間以内 |
| 酸洗い | 3 時間以内 |
特に、ブラスト処理を実施したあとは速やかに下塗りをしなければなりませんが、発さびのリスクを下げるため、現場の天候が悪い場合(高湿度、降雨時など)はブラスト処理の作業実施を見送った方が良い場合もあります。
塩分除去
海塩粒子などの水溶性塩分が残留していると、浸透圧により塗膜下に水を引き込み、フクレの原因となります。
管理基準例:
大気部:100 mg/m² 以下
浸漬部・重要部:50 mg/m² 以下
塗装施工
施工の温度・湿度・天候条件
原則として塗料メーカ取扱説明書に則った範囲で施工する必要があります。
一般的に、塗装作業開始から乾燥完了までに以下のような天候が予想される場合は施工することは推奨されておりません。
| 項目 | 施工を行わない条件 | 塗料への影響 |
| 気温 | 5℃ 未満 | 乾燥が遅れ、塵埃・腐食性物質の付着や気象急変の悪影響を受けやすい。塗料粘度が増し作業性が低下 |
| 湿度 | 85% 以上 又は 35% 以下
(表面温度が露点+3℃未満) |
結露による剥離、溶剤蒸発で表面温度が下がり水分凝縮による白化が生じやすい |
| 天候 | 降雨・雪・粉塵・砂塵・強風、及びその予想時 | 乾燥前の付着で塗料が流れ、クレーター状凹凸・水ぶくれ・光沢低下・白化を生じる |
| 濡れ・塩分 | 被塗面が濡れている/塩類が付着しているとき | 付着不良・膨れ等の欠陥要因 |
混合・希釈、下塗り・上塗り
混合・希釈:原則メーカ取扱説明書に従います。partial kits(主剤・硬化剤・粉の一部分)の混合は不可で、指示された配合で製品構成成分を正確に混合する必要があります。また、清浄な容器を用いなければなりません。
下塗り:素地調整面にフラッシュさびが発生、または他の汚染物が付着する前に施工する必要があります。溶接部・端部・角部も膜厚が均一になるよう施工。ブラスト未処理箇所から50mm以内、現場溶接端部から50mm以内の施工は非推奨です。
上塗り:重ね塗りが必要な場合は各層で色相を変える。塗り重ね可能時間(インターバル)超過は層間剥離の原因となるため厳守しなければなりません。超過面に塗り重ねる場合はメーカと協議し適切な前処理を行う必要があります。
下塗と上塗の性能バランスを合わせるとともに、塗装禁止の組み合わせに注意する必要があります。
代表的な禁止・注意の組み合わせ
ジンクリッチ × 油性・フタル酸樹脂:亜鉛粉と反応して金属石鹸を形成し剥離の原因となる。
無機ジンクリッチの塗装対象:付着性の観点から、ブラスト処理した鋼材以外には塗装しない(早期剥離のリスク)。
塩化ゴム塗膜上の塗り重ね:強溶剤で旧塗膜が再溶解しリフティング(ちぢみ)が発生。対策として弱溶剤形塗料が用いられる。
代表的な塗膜欠陥は以下の通りです。
| 欠陥 | 主な原因 |
| にじみ | 塗り重ね塗料の選定ミス(下地成分の滲み出し) |
| リフティング(ちぢみ) | 油性・塩ゴム等の旧塗膜に強溶剤仕様で塗り替えた場合など |
| われ | 繰り返し塗替えによる過剰膜厚で内部応力が高まった場合など |
| ふくれ | 仕様選定ミスや塩分残存面への塗装など |
| はがれ | 塗り重ね不可の仕様選定、インターバル超過など |
これらの塗膜欠陥が発生した場合は、通常は損傷個所から50-100mmの範囲を対象とします。
エッジ部・狭隘部の対策
鋼構造物ではエッジ部に発錆が多いです。エッジがシャープだと十分な膜厚を確保しにくいため、R加工(丸みを付ける)で膜厚を確保しやすくする工夫がなされます。
膜厚が確保しにくいエッジ部・狭隘部・ボルト部は先行塗装を行います。
| 部位 | 1回塗り膜厚 | 2回目までの膜厚 | エッジ部/一般部 比 |
| シャープエッジ | エッジ10 / 一般70 μm | エッジ40 / 一般140 μm | 14% → 29% |
| R加工エッジ | エッジ50 / 一般70 μm | エッジ110 / 一般140 μm | 71% → 80% |
施工上の重要ポイント
ストライプコート(ダメ込み): エッジ(角)、溶接線、ボルト周りなどは塗料が逃げやすく膜厚が薄くなりがちです。スプレー塗装の前に、刷毛で先行塗りを行い、膜厚を確保します。
塗り重ね乾燥時間(インターバル): メーカー規定の「最短時間(未乾燥防止)」と「最長時間(密着不良防止)」を厳守します。
可使時間(ポットライフ): 2液形塗料は混合後、時間が経つとゲル化して使用できなくなります。
膜厚と塗付量の管理、検査
理論塗付量と標準塗付量
理論塗付量は、規定膜厚を塗るのに必要な塗料量を、塗装時のロス等を考慮せず計算で求めたものです。実務では標準塗付量(実際塗付量)を用いることが一般的です。
標準塗付量の考え方
標準塗付量 = 理論塗付量 × ロス係数
ロス係数の要因:① 塗装時の飛散 ② 容器・塗装機器への付着残 ③ 多液形塗料の使用残 ④ 被塗物の形状 ⑤ 管理基準(最低管理を平均膜厚の70%→100%にすると平均膜厚が上がり塗付量も増える)
※製品説明書に記載の塗付量は、ロス率を含んだ標準塗付量(標準使用量)です。
ロス係数は管理基準や塗装方法、部材の形状で変わりますが一般的には以下の通りです。
| 管理基準 / 塗装方法 | パイプ・H形 | 一般部材 | 平板 |
| 70% はけ | 1.3 | 1.5 | 1.7 |
| 80% はけ | 1.7 | 1.5 | 1.8 |
| 100% はけ | 2.0 | 1.9 | 2.4 |
| エアレス(目安) | 2.3 | 2.1 | 2.9 |
膜厚の測定
測定方法はウェットな状態の膜厚と乾燥膜厚で異なります。
ウェット膜厚
塗装中にウェットフィルムゲージで測定し、狙いの乾燥膜厚に対応するウェット膜厚を管理します。
乾燥膜厚
乾燥後に電磁膜厚計で測定します。膜厚計はISOに適合したものが推奨されます。(ISO2808やISO2178など)
膜厚管判定基準
膜厚の判定基準の例として以下の通りです。
判定基準例
① 塗膜厚測定平均値 ≧ 基準値(合計膜厚)の 90%
② 塗膜厚測定最小値 ≧ 基準値(合計膜厚)の 70%
③ 測定値分布の標準偏差 ≦ 平均値の 20%(ただし平均が基準以上なら20%超過可)
測定ロットは塗装系別・塗布方法別・部材別に設定し、平均値をとります。上記①〜③のいずれかを満たさない場合は増塗りします。
ピンホール検査
タンク内面など腐食が許されない箇所では、高電圧(スパークテスター)または低電圧(ウェットスポンジ)を用いて、目に見えない微細な穴(ピンホール)がないか全数検査します。
外観検査
塗り残し、ダレ、フクレ、ワレ、異物混入がないか目視確認する他、色相が指定通りか確認します。
許容膜厚
許容膜厚は国交省の土木工事基準に従い、指定膜厚の±20%とすることが一般的です。
識別表示
機番識別
機器に機番・名称を記載。塔槽類は本体またはスカート部、ポンプ・ファン等回転機は確認しやすい平坦部に表示します。
文字は角ゴシック体・左書き、文字色は黒色(マンセルN1)。道路やFL・アクセスレベルからよく見える箇所に、機器サイズに応じた文字高さで記入します。
配管識別
識別塗装色・文字・矢印で表示し、一般的にはJIS Z 9102(配管系の識別表示)/JIS Z 9101に準拠します。
保温配管は保温外装の上に表示し、機器出入口付近、調節弁・流量計付近、壁等の仕切り箇所(両側)、分岐箇所付近なども表示します。
安全識別
JIS Z 9101/JIS Z 9103に準拠します。管内物質が危険であることを示す必要がある場合や、メンテナンス時に頭上・足下へ注意喚起が必要な場合に施工します。
配管識別色の例
配管の識別色の例を以下に記します。(JIS基準の色)
配管識色例
水: 青
蒸気: 赤またはダークレッド
空気: 白またはグレー
ガス: 黄
酸・アルカリ: 化学薬品用の識別色(紫など)
消防設備: 赤
特殊塗装:温度指示塗料
高温ガスが内部を通過する圧力容器・熱交換器(内部にリフラクトリーライニング施工)の鉄皮外面には、温度指示塗料(Thermo Indicative Paint)を塗布します。
内部ライニングの割れ等で金属外面温度が上昇すると、塗装色が変色(例:緑から白へ変色)し、内部異常を外部から把握できるような塗料もあります。
その他注意点
ステンレス鋼の塗装
通常は塗装しませんが、塩害地域での「もらい錆」防止や、応力腐食割れ(SCC)対策として塗装される場合があります。この際、塩素フリーの塗料選定が必要です。
CUI(保温下腐食)対策
機器・配管の保温下は、雨水侵入等で湿潤雰囲気になり外面腐食(CUI)が生じやすいため、CUIが懸念される場合は、炭素鋼だけでなくステンレス材も塗装することもあります。
運転温度が高温(一例として150℃以上)では表面が乾燥するほど十分に温まり腐食量が減るため塗装は不要とされていますが、対象配管の運転制御を十分考慮する必要があります。