
今回の記事ではプラント配管サポートの設計・選定・施工基準について解説します。
プラントエンジニアリングにおいて、配管サポート(Pipe Support)は単に配管を支えるだけでなく、熱膨張の吸収、振動の抑制、機器ノズルへの荷重低減など、プラントの健全性を保つ上で極めて重要な役割を果たします。
今回は、設計の基本原則から、各サポートタイプの選定基準、材料、そして施工時の注意点までを徹底的に解説します。
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基本事項と定義
配管サポートの種類
配管サポートは、配管の動きをどのように制限するかによって以下のように分類されます 。
アンカー (Anchor):
全方向の移動と回転を固定するもの。熱膨張や内圧推力を吸収し、機器や配管系の弱い部分を保護します。通常はガイドとストッパーの組み合わせ(Gap=0mm)で構成されます。
レスト (Resting):
配管重量(自重+流体+保温材)を支えるのみで、水平移動は拘束しないもの。
ガイド (Guide):
配管軸に対して垂直方向の動きを制限するもの。
ストッパー (Stopper/Line Stop):
特定方向への配管移動(軸方向など)を制限するもの。
ハンガー (Hanger):
ロッド(吊り棒)を使用して配管を吊るすもの。機能はレストと同じです。
スプリング (Spring):
スプリングハンガー等を使用し、配管の上下移動(熱変位)を許容しながら支えるもの。
サポートの構成要素
配管サポートの構成要素は以下の通りです。
サポートアタッチメント:
配管にクランプや直接溶接して取り付けられる部品です。
| サポートアタッチメント | 定義 |
| パイプシュー | 配管に直接溶接されるサポート。断熱配管の断熱材への損傷防止、配管移動のためのスライド面を確保する。 |
| クランプシュー | 配管にクランプ接続するサポート。配管への溶接が許容されていない、または現実的でない場合に使用される(例:ライニング配管、亜鉛メッキ配管、溶接後熱処理を必要とする配管など)。 |
| クランプ | パイプの周囲または、保温材の周囲にボルトで固定された装置。クランプタイプのシューまたはクレードルに使用される。 |
| トラニオン(ダミーレグ) | 配管に補助パイプを直接溶接し、そのパイプをサポートストラクチャーで支えるよう設置される配管サポート。 |
サポートストラクチャー:
建屋梁や基礎から配管を支えるための追加鋼材です。アングル鋼、チャンネル鋼、H鋼と配管材の組み合わせで構成されます。
サポート設計での要求事項

一般原則
サポートは、静的荷重(自重)、運転荷重(熱膨張等)、短期荷重(地震、風、サージ、安全弁反力)のすべてに対し、十分な強度を持つよう設計する必要があります。
また、サポート点は、最適な荷重配分と重量バランスになるよう適切な位置に配置されなければならず、ガイドやストッパーはアンカーに対して配管が自由に伸縮できるようにしておく必要があります。
また、水圧試験時の荷重にも耐えなければなりません。
土建・構造設計との取り合い
グループ化:
配管は出来るだけグループ化して配置することで、共通のサポートを設けてサポートの数が最小限になるようにします。
標準化:
可能な限り標準サポートを使用できるよう、土建設計段階で梁の配置等を考慮します 。
梁への穴あけ禁止:
鉄骨梁・柱への直接のボルト穴あけは避け、必要に応じてラグプレートを溶接して対応します 。
グレーチング上の制限:
規定以上の荷重(例:1.0kN以上)や、高さのあるサポート(一般的には500mm以上)はグレーチング上に設置せず、鉄骨梁に直接設置します。
舗装床上の制限:
荷重が大きい場合(例:2.5kN以上)、コンクリート基礎(ペデスタル)を設けます 。
機器周りの設計配慮
塔槽類 (Vessels):
・サポートはノズルに極力近い位置に配置し、風や地震から保護するため一定間隔でガイドを設置します。
・大口径や厚肉配管でノズルへの局所応力が高い場合、スプリングサポートで荷重を分散させます 。
・メンテナンス時の取り外し部(カバー、チャンネル等)にはサポートを設置しないようにします。
回転機 (Rotating Equipment):
・ノズルにかかる荷重・モーメントを最小化します 。
・アライメント調整を容易にするため、アジャスタブル(調整式)サポートを設けます 。
・レシプロコンプレッサー配管は、振動解析を行い、建屋(コンプレッサーハウス)からは支持しないようにします 。
特殊ラインへの配慮

二相流ライン:
振動を考慮し、十分にサポートする必要があります 。
AIV (音響誘起振動):
疲労破壊を防ぐため、全周バンドや補強リング付きサポート(溶接タイプ)を検討します 。
亜鉛メッキ配管:
一般的には溶接は推奨されないため、Uボルトやクランプシューを使用します 。
エキスパンションジョイント:
ベローズを使用する場合、内圧推力に耐えるアンカーを設置し、伸縮をジョイントに集中させます 。
サポートタイプの選定基準

ロッドハンガー (Rod Hangers)
原則として使用は最小とし、置き型サポート(Resting)が不可能な場合にのみ使用し、振動ラインや大口径ラインには避けます 。
長さが1500mmを超える場合、ターンバックルを使用して調整します。
スプリングサポート (Spring Supports)
スプリングサポートは、ノズルに掛かる荷重の軽減、プラントメンテナンスやアライメントを容易にすることを目的とし、ポンプ、タービン、コンプレッサーなどの回転機のノズルからの第一サポートとして使用されることが多いです。
その他、タンクの不等沈下やボウイング現象の影響を考慮し、タンクノズルの第一サポートとしても使用されます。
冷間時荷重と運転荷重の荷重変動率が小さい場合(25%以下)は、バリアブルスプリングサポートの使用が可能です。
荷重変動率が25%を超える場合は、コンスタントスプリングサポートが使用されます。
スナッバー (Snubbers)
熱移動は許容しつつ、地震などの急激な動き(動的荷重)のみを拘束します。
原則として油圧式(Hydraulic Type)を使用されることが多いです。
トラニオン(Trunnion)
トラニオンサポートはヘッダーパイプの1/2のサイズより1つ上のサイズからヘッダーパイプのサイズまでが推奨されます。
スライディングサポート (Sliding Supports)
摩擦力を低減させるため、PTFE(フッ素樹脂)やグラファイト板、ローラー等を使用します。
摩擦係数(目安)
炭素鋼orステンレス vs 炭素鋼: 0.30
ステンレス vs ステンレス: 0.20
グラファイト vs グラファイト: 0.15
PTFE vs ステンレス: 0.06
アンカー (Anchors)
コンクリート床や壁への固定には、原則としてケミカルアンカーを使用します(舗装床では機械式も可) 。
振動ラインにはアンカーボルトの使用を避けます。
材料 (Material)

設計温度
配管に直接接触するサポート部材は、内部流体の温度で設計します。断熱材の外側にある部材は、より低い温度で設計可能です 。
材料選定ルール
配管材質に応じて適切なサポート材質を選定します 。基本的には炭素鋼配管であれば、炭素鋼、ステンレス配管であれなステンレス(SUS304や316)を使用します。
異種金属接触防止:
ステンレス配管や合金配管には、亜鉛メッキされたサポートを使用してはいけません 。また、ステンレス配管を炭素鋼製サポートで受ける場合は、絶縁のためのシムプレート(Shim Plate)等を挟みます 。
製作と施工 (Fabrication / Erection)
溶接 (Welding)
一般的に、隅肉溶接の最小脚長は 6mm 程度です 。
また、配管の溶接線(シーム)とサポート溶接部の距離は、配管肉厚の4倍または25mmのいずれか大きい方を確保することが推奨されます。
現場溶接禁止:
以下の配管への現場溶接は推奨されないので注意してください。
摩擦係数(目安)
・PWHT(溶接後熱処理)が必要な配管
・ライニング配管(ガラス、ゴム等)
・亜鉛メッキ配管
・非鉄金属配管
穴あけとクリアランス

ボルト穴:
例えばM12ボルトの場合、穴径は14mm、M20の場合は24mmとすることが一般的です。。
干渉対策:
配管サポートがグレーチングを貫通する場合、20mm程度のクリアランスを確保してカットし、補強プレートを設置します 。
保温切り欠き:
クランプやUボルト部の保温材は、熱移動を妨げないよう切り欠き、コーキング等で防水処理を行います 。
まとめ
配管サポートは、「配管をつなぐだけの金具」ではありません。 不適切な選定や施工は、振動トラブル、ノズル破損、配管の座屈など、プラントの操業停止につながる重大な問題を引き起こす可能性があります。
本記事で紹介した基準(荷重条件、材質選定、熱膨張への配慮、施工公差など)を遵守し、ASME B31.3等の規格に基づいた確実な設計・施工を行うことが、安全なプラント建設の第一歩です。





