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【計装】温度計のサーモウェル(保護管)の設計の留意点について解説

こんにちは。Toshi@プラントエンジニアのおどりばです。

今回の記事では温度計のサーモウェル(保護管)の設計の留意点について解説します。

温度計はプラントの温度管理の観点から重要な計器の一つですが、エレメントに可動部を持たないため、故障・破損リスクが小さいと思われがちですが、対策をしていないと上手く温度を測定できないばかりか、サーモウェルが破損したりするリスクがあります。

本記事では計装エンジニアの観点で設計時の留意点を解説プロセスエンジニアにとっても知っておくべき内容です。

強度の検討・振動対策

カルマン渦の対策

サーモウェルの強度を検討する上で最も重要なのは、カルマン渦、対称渦の影響です。

配管内の流体にサーモウェルが存在すると、カルマン渦が発生するため、共振によりサーモウェルが破損することがあります。そのため、強度計算を行い、選定したサーモウェルがが強度上問題ないことを確認する必要があります。

強度計算はASME PTC19.3-TWやJSME規格に基づくことが多いですが、ASME PTC19.3-TWではサーモウェルの固有振動数とカルマン渦、対称渦による強制振動数との比(振動比)が規定されているため、これに基づくことが多いです。

なお、振動比はプロセス流体のレイノルズ数とスクルートン数によって異なり、振動比が0.8未満となる場合と0.4未満に規定される場合があるので注意が必要です。

 

強度計算により基準を満たさない場合は次のような対策がとられます。

カルマン渦への対応

・ 感温部に影響が出ない範囲でサーモウェルを短くする
・ サーモウェルを太くする
・ サーモウェル形状を変更する(スパイラルタイプなど)

■スパイラルタイプ(螺旋棒付)のサーモウェル

サーモウェルを太くしたり、形状を変更する場合は、配管ノズルのサイズを上げる必要があることがあります。サーモウェルの取り付けサイズは、通常P&IDには記載せず、計装接続標準などのプロジェクトスペックにのみ記載されるので、このスペックに該当しないサイズにする場合は必ずP&IDに表記します。

また、スパイラルタイプを採用する場合は、ノズル配管の肉厚や配管内面の溶接線の裏波に干渉しないようによく確認しておく必要があります。

振動対策

温度計はしばしば振動による断線が問題になることがあります。とくに測温抵抗体(RTD)は細い白金を使用するため断線しやすいので要注意です。

そのため、振動しやすい配管(ボイラ、加熱炉まわり)に測温抵抗体を設置する際は断線リスクが高いので、熱電対など、比較的線径が太く、振動に強いタイプの採用を検討する必要があります。また、トランスミッター(伝送器)は別置型を採用する方が無難です。

温度計のタイプの説明や、配管振動についてはこちらの記事を参照ください。

取り付け時の考慮

温度計のサーモウェルは、一般的に配管の流れ方向に対して直交に挿入されます。

しかし、配管サイズが6インチ未満では、サーモウェルの挿入長さが十分にとれないため、以下のような対策が必要です。

配管サイズへの対応

・エルボ部分への取り付け
・6インチへサイズアップ

■エルボに取り付ける場合

出典:API RP 551, Fig. 27

■サイズアップをする場合

出典:API RP 551, Fig. 28

※上記の対策はAPI RP 551に基づいて記載しています。必要サイズは基準とするプロジェクトスペックや温度計設計標準によって異なる場合があることにご注意ください。

上記のような対策を講じる場合、取り付け方が分かるようにP&IDに記入し、配管設計部門や計装設計部門へ意図が確実に伝わるようにしてください。

なお、エルボへの取り付けは、配管内の流速が非常に速い場合への対策になることもあります。

 

また、保温施工をしている配管へ取り付ける際は、保温の厚みを考慮することを忘れないようにしてください。

保温施工をする配管に対しては、サーモウェルのフランジ(或いはねじ接続部)が保温に埋もれないように、少し上に上げてサーモウェルを施工しますが、サーモウェルの先端が保温の厚み分、ずれてしまい、温度測定に影響が生じてしまうので、サーモウェルの長さは保温厚みを必ず考慮する必要があります。

その他注意点

サーモウェルの材質は一般的にはSUS316が使用されますが、配管本体と材質が異なる場合(特に配管本体が炭素鋼などの機械的強度が高い材質を用いる場合)、要求されるP-Tレーティング(圧力、温度範囲)に対応できないことがあるため要注意です。

例えば配管本体が300Lbの炭素鋼の場合、配管本体に対しては、配管材料基準で規定している300Lbのレーティングにおける温度・圧力範囲で対応できていたとしても、サーモウェルに対しては300Lbでは対応できない場合があります。このような場合、サーモウェルのレーティングを上げて600Lbとする、といった対応が必要になります。

サーモウェルのレーティングを上げた場合でも、P&IDにしっかり明記することが重要です。(明記しないと配管本体と同じレーティングと伝わってしまう)

今回の記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在150記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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