今回の記事では遠心ポンプの吸込配管の必要直管長について解説します。
遠心ポンプはインペラの速度エネルギーを流体の圧力エネルギーに変換しているため、流体がポンプの吸込ノズルに対して均一な流れで流入しなければなりません。
※不均一な流れでポンプに流入させてしまうと、吐出圧が不安定になるだけでなく、ポンプのインペラや軸受けの破損につながります。
その一方、ポンプの吸込配管(サクション配管)には、バルブ、レデューサー、エルボなどの様々な配管部品が設置されますが、これらの配管部品は流体の流れが乱れる要因となるため、流れを均一化するために、吸込配管はある程度の直管長が必要となります。
そこで、本記事ではANSI規格(American National Standard)のANSI/HI 9.6.6で記載されている遠心ポンプの最小必要直管長について解説します。
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最小必要直管長
ポンプの吸込配管における配管部品と必要直管長の関係は以下の表の通りです。
配管部品 | 必要直管長 |
90°エルボ | ロングエルボ:4D ショートエルボ:5D |
レデューサー(1サイズダウン) | 同心レデューサー:0D(必要直管長なし) 偏心レデューサー:0D(必要直管長なし) |
レデューサー(2サイズダウン) | 同心レデューサー:0D(必要直管長なし) 偏心レデューサー:1D |
レデューサー(3サイズダウン) | 同心レデューサー:1D 偏心レデューサー:2D |
レデューサー(4サイズダウン) | 同心レデューサー:2D 偏心レデューサー:3D |
レデューサー(5サイズダウン) | 同心レデューサー:3D 偏心レデューサー:4D |
レデューサー(5サイズダウン) | 同心レデューサー:3D 偏心レデューサー:4D |
配管接手(ティー)(≦45°) | 4D |
配管接手(ティー)(90°) | 5D |
ボール弁、ゲート弁(フルボア弁) | 0D(必要直管長なし) |
プラグ弁(フルボア弁) | 3D |
バタフライ弁 | 2D |
出典:ANSI/HI 9.6.6 Table 9.6.6.3.2
注1:Dは配管内径を示します。例えば5Dの場合は必要直管長が少なくとも配管内径の5倍必要であることを意味します。
注2:レデューサーについて、例えば6インチから4インチへのサイズダウンであれば「1サイズダウン」、6インチから3インチへのサイズダウンであれば「2サイズダウン」となります。
注3:複数の配管部品がある場合、最も必要直管長の大きい配管部品のみを考慮します。必要直管長を足す必要はありません。
計算例
上図のようなポンプ吸込配管構成を考えます。
吸込配管には、90°ショートエルボとレデューサーが設置されています。
それぞれの配管部品に必要直管長は、
90°ショートエルボ:5D
同心レデューサー(3サイズダウン):1D
なので、全体の必要直管長は5Dとなります。
このように、必要直管長は吸込配管のエルボやティーが支配的になることが一般的です。ポンプまわりの配管設計におかれては必要直管長にも留意してください。