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【ポンプ】ポンプの設計・仕様確認で良く用いられる計算式の解説

今回はポンプの設計・仕様確認で良く用いられる計算式について解説します。

特に流量・揚程・動力と回転数の関係式はよく使われます。

回転数がポンプ性能に与える影響

遠心ポンプの流量・揚程・軸動力と回転数の間には以下のような関係式が成り立ちます。

流量と回転数の関係式

$$\frac{Q_1}{Q_2}=\frac{N_1}{N_2}$$

揚程と回転数の関係式

$$\frac{H_1}{H_2}=\frac{NPSHr_1}{NPSHr_2}=\biggl({{\frac{N_1}{N_2}}}\biggl)^2$$

軸動力と回転数の関係式

$$\frac{SHP_1}{SHP_2}=\biggl({{\frac{N_1}{N_2}}}\biggl)^3$$

流量と軸動力の関係式

$$\frac{Q_1}{Q_2}=\frac{SHP_1}{SHP_2}$$

揚程と軸動力の関係式

$$\frac{H_1}{H_2}=\frac{SHP_1}{SHP_2}$$

Q:流量
H:全揚程
NPSHr:必要NPSH
SHP:軸動力
N:ポンプ回転数

揚程は回転数の2乗に比例

軸動力は回転数の3乗に比例、それ以外は1乗に比例と覚えておけば業務上は問題ありません。ただし、この相似性は回転数変化幅±20%以内で成り立つことに注意してください。

機器の性能試験・メカニカルランニングテストを実施する際、ベンダー工場の試験設備・環境の問題でjob用モータの使用ができない場合があります。その際は、動力の小さなベンダーの試験用モータを使用して試験を実施する場合があります。

このような場合は上式の関係式から測定データを換算して性能確認を行う事があります。

この関係式の換算比に下限はないが、可能な限り実際のモータに近い動力の試験用モータを使用することが望ましいです。

また、この関係式はファン・ブロアにも成立し、性能試験も同様に換算値で確認することがあります。

ケーシングにかかる圧力は密度に比例して増減するため、流体密度が非常に小さい流体を扱うポンプで、試験用流体として水を使用する場合、実際のモータでポンプを運転すると設計圧以上の圧力がポンプケーシングにかかり、ケーシングを損傷させる危険性があります。

そのため、プロセス流体密度が水に比べ非常に小さい場合には、上記関係式から求めた換算軸動力以下で運転できる試験用モータを使用して試験を実施します。

このような場合は、実際のプロセス流体と異なる条件で試験を実施することになるので、試験要領書に試験方法と測定値の換算方法を明記させ、妥当性を確認しておくことが必要です。
(例:API610では性能試験の回転数は定格の±3%以内での実施を規定)

ポンプ動力の計算

ポンプの理論動力を水動力

と呼び、以下の式で表されます。

理論動力(水動力)の計算式

$$L_w=\frac{1}{60\times{10^3}}ρgQH$$

または

$$L_w=\frac{10^3}{60}QP$$

Lw:理論動力(水動力) [kW]
ρ:液密度 [kg/m3]
g:重力加速度 [m/s2] (= 9.8 m/s2)
Q:ポンプ流量 [m3/min]
H:ポンプ全揚程 [m]
P:ポンプ全圧 [MPa]

ポンプ運転に必要な軸動力は、ポンプ内に生ずる損失動力を考慮して、以下の計算式で求められます。

ポンプ軸動力の計算式

$$L=\frac{L_w}{η_p}$$

L:ポンプ軸動力 [kW]
Lw:理論動力(水動力) [kW]
ηp:ポンプ効率 [-]

ポンプの軸動力はプラント全体の電気使用量に影響するので、プラント基本設計のなるべく早い段階でベンダーから入手して下さい。

なお、プラント全体の電気使用量は、プラントの保証項目の一つになることが多いです。

その他よく使用される計算式

ポンプ設計・仕様確認でよく使用される計算式のその他の式を以下に挙げておきます。

電動機の回転速度

交流電動機の同期回転速度

$$n_s=\frac{120}{p}f$$

誘導電動機の定格回転速度

$$n=n_s(1-s)$$

ns:同期回転速度 [rpm]
p:極数
f:周波数 [Hz]
s:すべり

トルク・馬力の計算

定格トルク

$$T=\frac{P_{kw}}{n}\times974=\frac{P_o}{1.027n}$$

馬力の換算

$$P_{HP}=\frac{P_{kw}}{0.746}$$

T:定格トルク [kgf・m]
n:回転速度 [rpm]
Pkw:出力 [kW]
Po:出力 [kW]
Php:馬力 [HP]

はずみ車効果の計算

直線運動等価

$$GD^2=\frac{365}{n^2}Wv^2$$

加速・減速時間

$$t=\frac{GD^2\times{Δn}}{375Ta}$$

定格トルク加速時間(加速定数)

$$t_a=\frac{GD^2\times{n^2}}{375P_{kw}\times1000}$$

エネルギー

$$E=\frac{GD^2\times{n^2}}{730}$$

GD2:はずみ車効果 [kg・m2]
W:直線移動荷重 [kg]
v:直線移動速度 [m/s]
n:回転速度 [rpm]
t:加速・減速時間 [s]
ta:定格トルク加速時間 [s]
Δn:回転速度範囲 [rpm]
Ta:加速・減速速度 [m/s]
Pkw:出力 [kW]
E:エネルギー [J]

騒音値の計算

$$SPL=PWL-20\log{}{r}-11$$

SPL:音圧レベル [dB}
PWL:音響パワーレベル [dB]
r:距離 [m]

まとめ

ポンプの設計・仕様確認で良く用いられる計算式について解説しました。

ポンプ設計、性能確認の際はぜひご利用下さい。

また、遠心ポンプの設計、運転についての留意点はこちらの記事を参照ください。

この記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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