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プラントに設置するガス検知器の設置個数と配置場所について解説

今回の記事ではプラントに設置するガス検知器の設置個数と配置場所について解説します。

設置式ガス検知器は高圧ガス保安法消防法により、可燃性ガス、毒性ガス、可燃性液体などを取り扱う設備に対して設置が義務付けられており、このようなプラントを設計する場合は必ず考慮しなければなりません。

しかし、法規では設置すること自体は明確に義務付けられているものの、設置個数や配置場所については、あまり明確に記載されていません。

高圧ガス保安法抜粋:

<一般則 第6条 第1項 31号>
設備群の周囲20mにつき1個以上
<一般則 第7条の3 第2項 16号>
製造施設には、当該施設から漏洩する可燃性ガスが滞留するおそれのある場所に、当該ガスの漏洩を検知し、警報し、かつ、製造設備の運転を自動的に停止するための措置を設置すること。

そこで、本記事ではガス検知器の設置個数、配置場所についての考え方について解説します。可燃性ガス、毒性ガス、可燃性液体などを取り扱う設備に携わる方の参考になれば幸いです。

注意

本記事はあくまで考え方の一例です。実業務でガス検知器の設置検討を行う際は、必ず最新の法令を確認し、関係者と協議するようにして下さい。

設置個数

設備毎に、以下のそれぞれの項目で規定された最少個数を足し合わせた数が最小個数となります。

基本的な考え方として、屋外では空気より比重の軽い圧縮ガスは、滞留せず、屋根があっても四方が壁のない構造物の中の設備は屋外設備とみなすことが一般的です。

一般的な考え方

屋外設備

屋外に設置される機器、設備(圧縮機ポンプ、反応設備、貯槽、熱交など)については、高圧ガス設備、または設備群の周囲20mにつき1個の割合で設置が必要となります。

なお、設備群とは、下図のように各高圧ガス設備が並んで配置されている場合、これらをまとめて「設備群」みなすことです。この場合、破線の長さを設備群の周囲長さと見なすことができます。

屋内設備

屋外に設置される機器、設備(圧縮機ポンプ、反応設備、貯槽、熱交など)については、高圧ガス設備、または設備群の周囲10mにつき1個の割合で設置が必要となります。

特殊機器、設備

一部の機器や設備について、ガス検知器の設置個数について特別な配慮が必要となります。

加熱炉

加熱炉など、火源を扱う機器につては、ガスの滞留しやすい場所に、その設備群の周囲20mにつき1個以上の割合で設置が必要となります。

なお、加熱炉は、他の高圧ガス設備と同一群として周囲を計算することができます。

特殊反応設備

特殊反応設備については、その周囲でガスの滞留しやすい場所に、その設備群の周囲10mにつき1個以上の割合で設置が必要となります。

なお、特殊反応設備とは、コンビナート等保安規則により以下の反応設備が該当します。

特殊反応設備

・ アンモニア二次改質炉
・ エチレン製造施設のアセチレン水添塔
・ 酸化エチレン製造施設のエチレンと酸素、または空気との反応器
・ シクロヘキサン製造施設のベンゼン水添反応器
・ 水素化分解反応器
・ 低密度ポリエチレン重合機(常用圧力が15MPa以下のものを除く)
・ メタノール合成反応塔

特殊反応設備が一般の高圧ガス設備群内に混在している場合は、以下のように個数を算出します。

$$\frac{2(a+b)}{20}+\frac{2(c+d)}{10}$$

または

$$\frac{2(a+b)}{10}$$

の少ない方。

計器室、分析室、電気室

計器室には人が常駐しており、ガスが滞留しやすいため、1個以上設置することが推奨されていますが、漏洩したガスが計器室に浸入しないような対策をしている場合は、設置不要とすることもできます。

分析室、電気室については原則設置不要ですが、特別な理由がある場合には設置することもあります。

危険物設備

容量が10000 kL以上の大型の屋外貯蔵タンクについては、周囲に設ける防油提に対し、流出した危険物を容易に確認できる箇所に1個の設置が必要です。

また、指定数量の100倍を越える危険物設備製造所、一般取扱所内の反応設備、蒸留塔、受器、熱交換器、ポンプ等、引火性液体を取扱う危険物設備には、 1警戒区域毎に1個以上のガス検知器を設置します。
※ただし1警戒区域の面積は500m2以下、見通しの良い場所では、1000m2以下と考えます。

危険物設備と高圧ガス設備は混在している場合は、以下のように個数を算出します。

左側:高圧ガス設備が危険物設備に囲まれている場合
右側:危険物設備が高圧ガス設備に囲まれている場合

$$\frac{2(a+b)}{40}+\frac{2(c+d)}{20}$$

または

$$\frac{2(a+b)}{20}$$

の少ない方。

上図の右側の場合は、

$$\frac{2(a+b)}{20}$$

で算出されて個数で良いです。

高圧ガス貯蔵所、または消費設備

貯槽については上記の屋内設備、屋外設備に準じますが、液石則適用設備の液化石油ガスを受払い出しする場所の周囲には2個以上の設置が必要です。

容器置場については、材料ガスの容器群又は貯槽の周囲に1個以上必要です。

地盤面下に埋設する貯槽貯槽については1基当たり2個以上、空気排出管内の貯槽室の蓋を貫通する位置から換気ファンの問強制排気設備が昼夜連続運転している場合はその吸引口に1個必要です。

オイルセバレータなど

オイルセパレータについても、可燃性ガスや引火性液体が流出する可能性がある場所についてはガス検知器の設置が必要です。

例えば、排水溝、会所、中央排水口については、ガスや油の流出を最も早く検知できる個所に1個必要です。

その他の留意点

可燃性かつ毒性ガスの場合は、高圧ガス保安法の解釈として「毒性ガス検知器を設置すれば可燃性ガス検知器を設置したものとみなす」ことが認められています。

しかし、可燃性ガス検知器の代わりに毒性ガス検知器を設置した場合には、毒性ガス検知器のアラーム設定値がppmォーダーと低く、頻繁にアラームが鳴ってしまい信頼性が無くなる可能性があります。

そのため、上記で解説した最少個数灰上の可燃性ガス検知器に加えて、毒性ガス検知器を1台設置するなどの対応が必要になる場合もあります。

配置場所

ガス検知器は漏洩、滞留の危険性の大きい箇所へ優先的に配置しますが、当該ガス比重、周囲の状況、高圧ガス設備の高さなどの条件に対応して定めます。

例えば、空気と同等程度の比重を持つガスは拡散性が軽いガスの場合に比べて小さいので、漏洩が想定される発生源付近に検知口を設置します。

空気よりも軽いガスは、屋根などの滞留しやすい箇所、空気より重いガスは地面近くに設置することが一般的です。

また、受信・警報設備は、原則として計器室に設置します。

漏洩、滞留の危険性が大きい箇所

漏洩の可能性が大きい又はガスが滞留する危険性が高い次の場所に対しては、個々に設置が必要ですが、このような場所の例を挙げると以下の通りです。

漏洩・滞留の危険性が大きい場所

・ 可燃性ガスを取り扱っているプラント内分析室
・ 主排水溝のなかで可燃性ガス発生の恐れがあり、かつ安全管理上必要と認められる排水溝
・ 換気が悪く少量のガス漏れが長時間のうちに大量の蓄積を生む可能性のある場所(コンプレッサーハウス床下、隧道、地下貯槽、地下ピットなど)
・ 平常運転操作により、可燃桂ガス、可燃性液体、引火性液体及び引火性浮遊物等による危険雰囲気の形成が明らかに想定される場所(サンプリング、 ドレン抜きを頻繁に行う場所など)
・ フィルター、ストレーナ開放部
・ タンクローリ充填所付近
・ 桟橋ローリングアーム又はふ― ス接続回付近
・ 可燃性ガス又は引火性液体を取り扱う回転機のシール部で破損の可能性が高い場所(ポンプ、コンプレッサーのシール部など)
・ 可燃性ガス、引火性液体の容器に腐食劣化の可能性が高い場所(熱交出側の海水ピット、冷水塔ピットなど)
・ 桟橋など、濁洩し続けるとパトロールの間にも、危険雰囲気を大量に形成する可能性が特に高い場所
・ 誤操作、臨時作業又は運転の乱れにより大量に可燃性ガス又は引火性液体を流出する可能性がある場所(プローダウンピット、集合ピット、ダイク内など)

加熱炉周囲

加熱炉については、可燃性ガスや引火性液体の漏洩、事故発生の危険性が大きいことから配置箇所についても特別な配慮が必要です。

加熱炉等の周囲には、上図の様に少なくとも約20mの間隔でガス検知器の設置が必要です。加熱炉等とガス検知器の間に可燃性ガス又は引火性液体を取り扱う設備がない場合は、その距離を原則として20m以上取る必要があります。

また、加熱炉が一基だけの場合でも、上図のように20m離し、複数個の設置が必要です。

なお、ステームカーテンを設置している場合には、蒸気によるガス検知器検出部の劣化を避けるために、スチームカーテンから加熱炉と反対方向に、できるだけ離隔距離を大きくとる必要があります。

ただし、加熱炉とガス検知器との間に漏洩ガスの流れを遮る障害物がある場所に設置しないようにして下さい。(例:燃焼用空気のバイパス排気口から1.5m以内、加熱炉排気口付近、排ガスに触れやすい場所、バーナーより20cm以降高い床がある場合の高い床側など)

大規模ガス漏れ検知

設備からのガス漏洩が大規模で、広範囲に渡って爆発の恐れがある設備(設備群)についても特別な配慮が必要となります。

基本的には上図のように、監視対象設備の周囲に20~ 30mの間隔で検知器を配置します。この場合、監視対象設備群とガス検知器との離隔距離を原則と
して5~ 10mとる必要があります。

監視対象設備の周辺が防液堤となる場合は、それぞれの防液堤及び中仕切堤の内部毎に、1個以上のガス検知器を設置することで代替できます。

また、監視対象設備が小型の場合(1m3以上)でも、最低3個のガス検知器で囲うように設置する必要があります。

その他

特殊反応設備

特殊反応設備に設置する可燃性ガス検知器は、当該設備の直近で漏洩したガスが滞留する場所に設置が必要です。

計器室

空気より軽い可燃性ガスについては、漏洩ガスの浸入が想定されるダクトの貫通部に近い場所(水平距離で3m以内、天井から0.3m以内)に設置が必要です。天井から0.6m以上の突出した梁がある場合は、漏洩ガスの浸入が想定される入口から梁の間に設置し、天丼付近に吸気口がある場合は、その直近に設置します。

空気より重い可燃性ガスについてはも、漏洩ガスの浸入が想定される入口のダクト等貫通部から水平距離で4m以内、床面から03m以内に設置します。

危険物タンク、貯槽

これらのタンク、貯槽については防油提内に設置することが一般的です。

バッテリーリミット付近

バッテリーリミットを接して2つのプラントがある場合、バッテリーリミット付近のガス検知器は共用することも可能です。

ただし、共用する場合には両プラントに警報が出るようにする必要があります。

共用するガス検知器が自プラントに無い場合には、ガス検知器の個数算出に計上することはできません。

水素ステーションにおける配置場所

水素ステーションについては、高圧ガス保安法の圧縮水素スタンドにかかる技術上基準における補足事項で明確に記載があります。

配置場所の例としては次の通りです。

水素ステーションにおける配置場所

・ 圧縮機を設置した鋼板製ケーシング内又は不燃性構造の室内
・ ディスペンサーのケース内
・ 充塡ホースと車両に固定した容器とのカップリング等接続部分付近
・ 蓄圧器の配管集合部の上部
・ 改質器等水素を発生する装置付近の水素が滞留するおそれのある場所
・ ディスペンサー上部
・ 有機ハイドライドシステムの制御盤
・ ディスペンサーのカプラ―付近

水素ステーションを含めた高圧ガス保安法の技術基準はこちらの記事でも解説しています。

まとめ

今回の記事ではプラントに設置するガス検知器の設置個数と配置場所について解説しました。

設置式ガス検知器は高圧ガス保安法消防法により、可燃性ガス、毒性ガス、可燃性液体などを取り扱う設備に対して設置が義務付けられており、プラントを設計する場合は必ず考慮しなければなりませんが、設置個数や配置場所については、あまり明確に記載されていません。

設置個数を検討する場合は、各設備で算出された設置個数を足し合わせた個数が設備全体における設置個数となります。

また、配置箇所については、漏洩、滞留の危険性の大きい箇所へ優先的に配置しますが、当該ガス比重、周囲の状況、高圧ガス設備の高さなどの条件に対応して定めます。

今回の記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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