今回の記事では熱交換器の設計で使用されるU値(総括伝熱係数)と伝熱面積の一般的な数値について解説します。
一般的に、熱交換器のU値(総括伝熱係数)や伝熱面積は熱交換器のタイプや構造で決まり、温度や圧力などのプロセス運転条件(マテリアルバランスやヒートバランス)から直接決まるものではないですが、プロセスエンジニアリングの観点から、ある程度の値を知っておくことは有効です。
特に、新規プラントの建設、改造案件で超概算コストを算出する際は、熱交換器については、熱交換器のタイプ、及びおおよそのU値、伝熱面積から建設コストを見積もることが必要となります。
そこで、次項から、それぞれの流体における一般的なU値と各熱交換器タイプにおける一般的な伝熱面積について解説します。
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各流体のU値(総括伝熱係数)の一般的な数値
各流体のU値に加え、汚れ係数の数値も記載します。
高温側流体 | 低温側流体 | U値 [W/m2K] | 汚れ係数 [m2K/W] |
水 | 水 | 1250 - 2500 | 2 × 10^-4 |
メタノール | 水 | 1250 - 2500 | 2 × 10^-4 |
アンモニア | 水 | 1250 - 2500 | 2 × 10^-4 |
その他水溶液 | 水 | 1250 - 2500 | 2 × 10^-4 |
軽質炭化水素(*1) | 水 | 375 - 750 | 6 × 10^-4 |
炭化水素(*2) | 水 | 250 - 600 | 6 × 10^-4 |
重質炭化水素(*3) | 水 | 10 - 250 | 6 × 10^-4 |
水 | ブライン | 500 - 100 | 6 × 10^-4 |
軽質炭化水素(*1) | ブライン | 200 - 500 | 6 × 10^-4 |
蒸気 | 水 | 1000 - 3500 | 2 × 10^-4 |
蒸気 | メタノール | 1000 - 3500 | 2 × 10^-4 |
蒸気 | アンモニア | 1000 - 3500 | 2 × 10^-4 |
蒸気 | その他水溶液 (μ<2×10^-3 [Pa・s]) |
1000 - 3500 | 2 × 10^-4 |
蒸気 | その他水溶液 (μ>2×10^-3 [Pa・s]) |
500 - 2500 | 2 × 10^-4 |
蒸気 | 軽質炭化水素(*1) | 500 - 1000 | 6 × 10^-4 |
蒸気 | 炭化水素(*2) | 200 - 500 | 6 × 10^-4 |
蒸気 | 重質炭化水素(*3) | 30 - 300 | 6 × 10^-4 |
蒸気 | ガス全般 | 30 - 250 | 6 × 10^-4 |
熱媒油 | ガス全般 | 20 - 200 | 6 × 10^-4 |
熱媒油 | 重質炭化水素(*3) | 30 - 200 | 6 × 10^-4 |
その他水溶液 | その他水溶液 | 1400 - 2850 | 2 × 10^-4 |
軽質炭化水素(*1) | 軽質炭化水素(*1) | 300 - 425 | 6 × 10^-4 |
炭化水素(*2) | 炭化水素(*2) | 100 - 300 | 6 × 10^-4 |
重質炭化水素(*3) | 重質炭化水素(*3) | 50 - 200 | 6 × 10^-4 |
重質炭化水素(*3) | 軽質炭化水素(*1) | 50 - 200 | 6 × 10^-4 |
(*1):主にC8以下の炭化水素や低級アルコール、ケトンなど;粘度μ<0.5×10^-3 [Pa・s]
(*2):主にC9以上の炭化水素、軽油など;粘度0.5×10^-3<μ<2.5×10^-3 [Pa・s]
(*3):主に潤滑油、燃料油、重油など;粘度2.5×10^-3<μ [Pa・s]
各熱交換器タイプの伝熱面積の一般的な数値
各熱交換器タイプの伝熱面積に加え、対応可能な圧力、温度範囲や推奨流速も記載します。
熱交換器タイプ | 伝熱面積 | 最大圧力 [MPa] | 温度範囲 [℃] | 推奨流速 [m/s] |
二重管型 | 0.25 - 200 | 30 (shell側) 140 (tube側) |
-100 - 600 | 2 - 3(液) 10 - 20 (ガス) |
シェル&チューブ型 | 3 - 1000 | 30 | -200 - 600 | shell側:1-2(液)、5-10(ガス) tube側:2 - 3(液)、10 - 20 (ガス) |
プレート型 | 1 - 2500 | 0.1 - 2.5(ガスケット型) 3 (溶接型) |
-25 - 175(ガスケット型) 400< (溶接型) |
1 - 2(液) 5 - 10 (ガス) |
空冷式 | 6 - 20,000 | by vebdor | by vebdor | 2 - 3(液) 10 - 20 (ガス) |
渦巻き型 | 10 - 200 (プレート式) 1 - 50 (チューブ式) |
2 (プレート式) 50 (チューブ式) |
300 (プレート式) 350 (チューブ式) |
1 - 3(液) 5 - 10 (ガス) |
今回の記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。