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【材質】鉄カルボニルがプラント機器・配管に及ぼす影響は?メカニズムと対策について解説

今回の記事では鉄カルボニルがプラント機器・配管に及ぼす影響と生成メカニズム、対策について解説します。

鉄カルボニルはペンタカルボニル鉄(Fe(CO)5)とも呼ばれ、機器・配管由来の鉄と一酸化炭素(CO)から合成される錯体です。

鉄カルボニルの物性

化学式:Fe(CO)5)
融点-20℃
沸点 103℃
猛毒

鉄カルボニルはそれ自体の毒性が強く、危険な物質ですが、プラントにおいては、応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking/SCC)の原因となる物質です。

特に、炭素鋼のような鉄系材料を機器、配管材料として用いた場合、COの分圧が高いと比較的低温で生成してしまいます。COは毒性は強いものの、腐食性は強くないので、コロージョン対策が抜けがちになりますが、鉄カルボニルが発生してしまうと、コロージョンのリスクが高くなるので、このような流体を扱う場合は注意が必要です。

天然ガスを改質して合成ガス(CO,H2,CO2,H2Oを多く含むガス)を製造するプラントなどでは、特に対策は必須です。

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プラントにおける鉄カルボニルの性質

プラントの設計、運転において、知っておくべき鉄カルボニルの性質は以下の通りです。

鉄カルボニルの性質

・ 鉄や鉄合金を触媒として、44~285℃の領域で生成する
・ 285℃以上では熱力学的平衡では鉄カルボニルはほとんど生成しない。
・ 鉄カルボニルの生成速度はガス流速に比例し、CO分圧の2乗に比例する。
・ スレンレス(例えばSUS316)では鉄カルボニルは生成せず、微量のニッケルカルボニル(Ni(CO)4) が生成する。
・ 水分、硫黄化合物、他不純物を含んでいると、応力腐食割れを起こす。

メカニズム

出典:Science

鉄カルボニルの生成メカニズムは以下の通りです。

生成メカニズム

(1) 鉄の表面にCO が吸着する。
(2) 鉄の混成空軌道と、CO分子の炭素原子の混成最高被占軌道(HOMO) が重なり、M←CO σ結合が形成される。
(3) 鉄のdπ充軌道または混成dpπ充軌道と、CO分子の最低空軌道(LUMO)が重なり、π結合が形成される。
(4) これらの結合により、Fe3(CO)12, Fe2(CO)9などのカルボニル化合物が生成される。
(5) カルボニル化合物が脱着し、最終生成物である鉄カルボニル(Fe(CO)5)に変化する。

対策

鉄カルボニルの生成を防ぐためには、運転条件による対策と機器・配管材料面での対策があります。

運転温度

鉄カルボニルが生成しやすい運転温度範囲を回避することは有効な対策となります。

生成しやすい温度域は44~285℃ですが、一般的にはプロセス条件が許す限りは285℃以上を保って運転することになります。

CO分圧

鉄カルボニルの生成速度はCO分圧の2乗に比例するので、CO分圧を下げることも有効な対策です。ただし、製品の品質・収率の観点から、CO分圧を変更することは難しい場合は多いです。

機器・配管材料

Crを含む(12-14%以上)合金は不動態を形成するため、鉄カルボニルの生成を抑制することができます。

また、アルミニウムを採用することも有効な対策です。

水・不純物の除去

水や硫黄化合物不純物を除去することで、鉄カルボニルが生成したとしても応力腐食割れのリスクを下げることができます。

そのため、これらを除去する設備を設置することも有効な対策になります。

まとめ

今回の記事では鉄カルボニルがプラント機器・配管に及ぼす影響と生成メカニズム、対策について解説しました。

鉄カルボニルは機器・配管由来の鉄と一酸化炭素(CO)から合成される錯体で、プラントにおいては、応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking/SCC)の原因となる物質です。

特に、炭素鋼のような鉄系材料を機器、配管材料として用いた場合、COの分圧が高いと比較的低温で生成してしまいます。

天然ガスを改質して合成ガス(CO,H2,CO2,H2Oを多く含むガス)を製造するプラントなどでは、特に注意が必要です。

この記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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