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【計装】プラントで使用される分析計の種類と特徴の解説

今回の記事ではプラントで使用される分析計の種類と特徴について解説します。

プラントを安全・安定に運転するために、流量温度圧力液面などを計測、制御することは非常に重要ですが、その他に製品の品質管理や排水・排ガスの管理・流体の漏れの検知をすることも非常に重要です。

これらは、顧客への信頼、環境規制への適合といった、企業のコンプライアンス、サスティナビリティに関わる内容なので、しっかりと管理しなければなりません。

上記のような項目を管理するためには、分析計(アナライザー)を用いる必要があります。分析計には様々な種類があり、それぞれ目的、流体の性状によって使い分けられています。

正しく分析されないと、プラントの製品や排出物の管理ができていないことになりますので、社会への信頼を大きく損ねることになります。そのため、分析計の種類や特徴を正しく理解しておくことは重要です。

主な分析計の種類

・ ガスクロマトグラフ
・ 酸素濃度計
・ ガス検知器
・ 赤外線式分析計
・ pH計
・ 導電率計
・ 密度計
・ 水分計
・ 排水管理計器
(UV計、濁度系、溶存酸素計、TOC計、COD計、油膜検知器)

次項から、それぞれの分析計の特徴について解説します。

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ガスクロマトグラフ(Gas Chromatograph)

出典:島津製作所

出典:Creative Proteomics Blog

液体やガスの組成を分析するための分析で、プラントで最も良く使用される分析計がガスクロマトグラフです。ガスクロやGCと略されることもあります。

注入口からシリンジなどでうちこまれたサンプルは高温の気化室で気化した後、キャリアガスによってカラムに移動します。サンプルがガスの場合はそのままキャリアガスと混合されてカラムに移動します。

手分析の場合は、サンプリングした液体またはガスをシリンジで手動で注入しますが、オンライン自動分析計では、配管からチュービング等で直接ガスクロマトグラフ装置に接続され、自動注入が行われます。

カラムではガスクロマトグラフィーの原理で各成分が分離され、検出器で電気信号に変換されます。

出力は横軸に時間、縦軸に信号強度とするガスクロマトグラムが得られ、保持時間から物質の同定、ピークの高さや面積から濃度を計算します。

出典:Vernier

カラムや検出器の種類を調整することで、幅広い種類の液体、ガスを高い選択性(分離度)で分析可能なので、最もよく使用される分析計です。

検出器はTCD(熱伝導度形検出器)FID(水素炎イオン化形検出器)の2種類がよく使用されます。

TCD(熱伝導度形検出器)

TCDはThermal Conductivity Detectorの略称で、物質の熱伝導度の違いを利用して成分ガスの検出を行います。検出器には加熱フィラメントが組み込まれており、片方にはキャリアガスを流し、もう一方には成分ガス+キャリアガスを流します。この時の両フィラメントの電気抵抗の差を検出します。

キャリアガスには主にヘリウムが用いられます。ただし、水素を分析する場合は熱伝導度の差が小さいヘリウムでは不適で、より大きい窒素が選定されます。

TCDは主にガスの分析で使用されますが、キャリアガス以外の様々なガスの分析が可能です。ただし、検出感度はそれほど良くありません。

FID(水素炎イオン化形検出器)

FIDはFlame Ionization Detectorの略称で、物質を水素と空気を混合させて、検出器内で燃焼させると、わずかにイオンが発生するので、それを検出する方法です。

検出器には電極が設置されているので、発生したイオンに応じて電流が流れ、その電流を計測することで、サンプルの量を計測することができます。

キャリアガスとしてはTCD同様にヘリウムを使用することが多いですが、FIDはキャリアガスの他に水素も必要となります。

FIDは主に液体の有機化合物の分析で使用されます。TCDよりも感度が良いため、大半のガスクロマトグラフではFIDが選定されますが、上述の通り水素が必要となるので、全体としては高コストになりやすく、プラント計画に当たっては水素の必要量を十分に検討しておく必要があります。

酸素濃度計

酸素濃度計はその名の通り酸素濃度を分析する分析計です。主に加熱炉やボイラなどの燃焼炉の排ガスの分析で使用されます。

プラントでよく使用される酸素濃度計としては、磁気式、ジルコニア式、ガルバニ電池式があります。

磁気式 (Paramagnetic Oxygen Analyzer)

出典: Environmental XPRT

酸素は他の気体とは異なり、大きな磁化率を持つ常磁性体です。そのため、強い磁場の中では磁界に引き付けられる性質があります。

上図のようにダンベル型に分かれた流路の片方に測定ガス、もう片方に参照ガスを流すと、磁界中で磁化された酸素がダンベルを回転させる力と釣り合う電流がフィードバックコイルに流れます。この時の電流値は測定ガス中の酸素濃度に比例するため、これを測定することで、酸素濃度を求めます。

検出器が測定ガスに直接接触しないため、腐食性ガスの分析に適し、応答性も良いという長所がありますが、他のタイプと比べると高価です。

ジルコニア式 (Zirconia Oxygen Analyzer)

出典:Yokogawa

ジルコニアは高温になると酸素イオンに対して導電性を示すという性質があります。

上図のようにジルコニア素子に多孔質の白金電極を貼り付け、加熱した状態で、それぞれの電極に酸素分圧が異なるガス(測定ガスと参照ガス)を接触させると、分圧差によって起電力が生じます。その時の電流値を計測することで、測定ガスの酸素濃度を求めます。

加熱炉、ボイラの煙突に直接取り付けることが可能なので、サンプリングが不要で応答性が早いという長所があります。さらに、微量の酸素濃度も分析することが可能です。

しかし、測定ガス中に可燃性ガスが存在していると精度が悪くなったり、ダストや腐食環境に弱いという短所があります。

ガルバニ電池式 (Electro-galvanic oxygen sensor)

出典:Maxell

金、銀などの貴金属を陰極、鉛などの卑金属を陽極、これらを電解液(水酸化カリウム水溶液や塩化カリウム水溶液)中に浸漬させたガルバニ電池では、酸素の透過性に優れた膜(テフロン膜など)を通して測定ガス中の酸素が電解液に溶解すると、溶解した酸素量に比例する電流が流れます。

この電流値は透過膜を通る酸素量(測定ガスの酸素濃度)に比例するので、これを測定することで測定ガス中の酸素濃度を求めます。

安価で小型にできるので、ポータブルの酸素濃度計に適します。また、測定ガス中に可燃性ガスが存在していても分析可能です。

しかし、寿命が短く、一年程度で交換が必要という短所があります。

ガス検知器 (Gas detector)

出典:INST FORUM

ガス検知器は機器や配管から漏れた可燃性ガスや毒性ガスを分析するための分析計です。

タンクなど、漏れが想定される機器の周りに設置する定置式と、運転員の命を守るために身に着いたり、特定箇所の漏れの有無を確認する携帯式(ポータブルガス検知器)があります。

可燃性ガスのガス検知器は接触燃焼式が用いられます。

接触燃焼式は、可燃性ガスを燃焼させることで、生成する燃焼熱から温度上昇分を抵抗値としてとらえます。検知素子には燃焼触媒がヒーターコイル状に焼結されており、その表面上に測定ガスが吸着・燃焼します。その時の抵抗値の変化をブリッジ回路にて検出し、ガス濃度を求めます。

赤外線式分析計 (Infrared (IR) gas sensor )

出典:CO2 meter.com

広帯域の赤外線を測定ガスに照射すると、測定成分が持つ特定波長の赤外線が吸収されるという性質があります。この赤外線の吸収量を測定することで、測定成分を分析します。

主にプロセスガスのCO、CO2、CH4、SO2、NOを高感度で分析することが可能ですが、窒素分子、水素分子のように同一原子からなる分子は赤外線を吸収しないので、分析することは出来ません。

pH計 (pH analyzer)

出典:Inst Tools

pHガラス電極と比較電極の2本の電極を用い、ガラス膜と介して測定液体と接触させます。この時、測定電極側(pHガラス電極側)はにはpHが既知の液体が入っており、測定液体のpH差に比例した起電力が発生します。そして、2つの電極の間に生じた電圧(電位差)を計測することで、その測定液体のpHを求めます。

pH計はプラントのボイラ給水やボイラのブローダウンなど、pHの管理が重要な液体の分析計として使用されます。

導電率計 (Conductivity meter)

出典:Inst Tools

導電率は電気伝導率とも言い、物質の電気伝導のしやすさを表す物性値です。

測定液中に一対の通電用電極をもった電気伝導率セルを浸せきし、これに電流を流して抵抗を測定することで、導電率を求めます。

導電率計も、主にプラントのボイラ給水、排水などの水質の管理目的で使用される分析計です。

密度計

出典:ALIA

密度計はその名の通り流体の密度を分析するための分析計ですが、よく使用されるのは振動式密度計です。

密度計の測定管を流体の流れに垂直な方向に振動させるとと、密度に応じた加速度が生じます。この加速度を測定管の外側に配置されている加速度計で測定することで、密度を求めます。

密度が重要な運転パラメータである、スラリーを扱うプラントや食品プラントで使用される分析計です。

水分計

主にガスの露点を測定する場合は露点計とも呼ばれ、静電容量式露点計がよく使われます。

一方、液体の水分濃度を測定する場合は電量滴定法(カールフィッシャー法)が一般的です。

静電容量式露点計 (Capacitive moisture meter)

出典:Systech

多孔質の金蒸着膜と酸化アルミ層は回路が形成されており、水分が酸化アルミ層に入り込むと、水分量の変化に応じて酸化アルミ層の持つ抵抗値が変化するという性質があります。

センサーに交流電圧がかかっており、この時の抵抗値を測定することで、ガス中の水分量を求めます。

プラントでは露点の管理が重要な計装空気、窒素、酸素などのガスの分析計として使用されます。

カールフィッシャー式水分計 (Karl Fischer titration)

出典:AZO materials

測定液体をカールフィッシャー試薬(ヨウ化物イオン、二酸化硫黄、塩基及びアルコール等の溶剤を主成分とする電解液)を混合させ、電気分解によりヨウ素を発生させると、水がヨウ素、二硫化硫黄と反応します。(カールフィッシャー反応)

この時に発生、消費されるヨウ素の量は水分量に比例し、かつ電気分解に必要な電気量にも比例するので、電気量を測定することで、測定液体の水分量を求めます。

プラントでは様々な液体の水分量を測定する場合に使用されます。

排水管理計器

主にプラントの水処理工程において、排水の水質を管理するための分析計です。主な排水管理計器として、UV計、濁度系、DO計、TOC計、COD計、油膜検知器があります。

UV計 (UV meter)

出典:Sensorex

水中に存在する有機汚濁物質が紫外線(UV)を吸収する性質を利用したものです。通常、254nmの波長で吸光度を測定することで、排水中の有機汚濁物質の濃度を求めます。

濁度計 (Turbidity meter)

出典:Inst Tools

発光素子から排水に光を照射すると、排水中の浮遊物質の量(濁度)に応じて、光の散乱度合が変わります。そのため、散乱工を受光素子して測定することで、排水中の濁度を求めます。

溶存酸素計 (Dissolved Oxygen Meter)

溶存酸素計はDO計とも呼ばれ、水中に溶解している酸素(溶存酸素)の量を測定する分析計です。

酸素の溶解量は酸素分圧、水温、溶解塩濃度などに影響され、測定原理は基本的にはガルバニ電池式の酸素濃度計と同じです。

TOC計 (TOC meter)

出典:Enviromental Expart

プラント排水の重要な指標の一つであるTOC(Total Organic Carbon/全有機炭素)の濃度を測定する分析計です。

サンプルを酸と混合させてpHを下げると、サンプル中の無機炭素は、ほとんどCO2になります。これにCO2を含まないガスを通期させるとCO2が除去(Inorganic separator)され、有機炭素のみが残ります。さらに、試薬を加えて燃焼させると、有機炭素量に応じたCO2が発生しますので、これを赤外線式分析計で測定することで、有機炭素量を求めます。

COD計 (COD meter)

出典:PARISA

CODもプラント排水の重要な指標の一つで、排水中のCOD(Chemical Oxygen Demand/化学的酸素要求量)の濃度を測定する分析計です。

最も一般的な方法は酸性法です。

サンプルに硝酸銀及び硫酸を加え、塩化物イオンを沈殿させた後、酸化剤として過マンガン酸カリウムを加え、沸騰水浴又は油浴で30 分間加熱を行い、その時消費した過マンガン酸カリウムの量を測定することで、相当する酸素の量を求めます。

油膜検知器 (Oil film detector)

出典:asin

主にプラント排水のオイルセパレーターや排水ピットで使用され、排水中の油分を測定するための分析計です。

水面に光を照射した場合、反射光の強さは水の屈折率に依存するという性質があります。表面に油が存在するとこの屈折率が変化し、反射光の強さも変化することを利用し油膜の検知を行います。

まとめ

今回の記事ではプラントで使用される分析計の種類と特徴について解説しました。

主な分析計

・ ガスクロマトグラフ
・ 酸素濃度計
・ ガス検知器
・ 赤外線式分析計
・ pH計
・ 導電率計
・ 密度計
・ 水分計
・ 排水管理計器
(UV計、濁度系、溶存酸素計、TOC計、COD計、油膜検知器)

製品の品質管理や排水・排ガスの管理・流体の漏れの検知のためには、分析計を用いる必要がありますが、分析計には様々な種類があり、それぞれ目的、流体の性状によって使い分けられています。

正しく分析されないと、プラントの製品や排出物の管理ができていないことになりますので、社会への信頼を大きく損ねることになります。そのため、分析計の種類や特徴を正しく理解しておくことは重要です。

今回の記事が参考になれば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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