今回の記事では液体の性状に応じた液面計のタイプ選定について解説します。
タンクやドラムの液面計測を行う場合、流体の性状をよく把握しておくことは非常に重要です。特にスラリー流体や固化しやすい流体を扱う場合は、感圧部で閉塞を起こし、うまく計測できなくなる、などのトラブルが発生しやすいため、特に重要です。
液面計のタイプ選定にあたっては、流体の性状に応じて、それに適するタイプを選定しなければなりません。
次項から液面計の各タイプについて、流体の性状に応じた選定方針について解説します。
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ダイアフラムシール式
ダイアフラムシール式は、ダイアフラムと計器との間をキャピラリーチューブで接続して、高圧側と低圧側の差圧を測定することで液面計測を行います。
高温サービスで流体が導圧管内で固化する、低温サービスで流体が導圧内で蒸発する場合の他、導圧管内での温度変化による密度変化が大きい場合に使用されます。
また、プロセス液が直接計器に接触しないので、腐食性液体やスラリー液の液面測定に使用されます。
ただし、スラリーのような個体を含む液体、固化しやすい液体を測定する場合は、ノズル部~感圧部(ダイアフラム)間で上図の個体が析出、閉塞してしまい、上手く測定できなくなることがあります。
■突き出し型のダイアフラムシール式
そのような液体の液面を測定する場合は、上図のように機器内部や配管内壁のより近いところまでかな粒を突き出す、突き出し型が有効なタイプとなります。
ただし、ノズル内径と圧力測定外径との間に適当なクリアランスが必要であること、設置箇所によって、それぞれ突き出し長の微調整が必要となります。
シール液の採用
シール液を導圧管内に封入し、計器本体にプロセス液体が直接接触しないようにする
タイプです。
腐食性流体の他、蒸気サービスの測定に使用されます。
補足:蒸気は高温なので、計器そのものが破損してしまったり、導圧管ないで蒸気が凝縮して測定誤差の原因となります。
腐食性液体などに対しては、シール液としてプロセスの実液やエチレングリコール水溶液が使用されます。また、蒸気サービスの測定(スチームコンデンセートドラムの液面測定)では、蒸気の凝縮水もシール液として使用されます。
シール液を採用する場合は、導圧管にティーを設けたり、上図のようにコンデンセートポットを挿入する方式があります。
パージ式の採用
専用のスペーサーやティーからパージ流体(空気、窒素)連続的に流し、ノズル部の沈殿、滞留を防ぎ、背圧を測定する方式
です。石油精製設備では、パージ流体としてフラッシングオイルや燃料ガスが使用されることもあります。
液体が物理的に導圧管、計器としない構造のため特に腐食性流体やスラリー液体の液面計測で有効です。また、突き出し型でないダイアフラムシール式と併用されることもあります。
ただし、パージに必要な流体、配管、付属品が必要で、プロセス条件によってはトレース、保温、パージ流体の温度管理が必要になる場合もあります。
ブローバック配管
ブローバック配管は、切り替え弁の操作で減圧前の計装空気を直接送り込むことで、タンク底部の堆積物を飛ばす方式でしう。
開放ピットなど、汚れや個体分が多い液体の液面を測定するバブラー式液面計を採用する場合は沈殿物が底部に溜まりやすく、適切な測定ができなくなることがあるので、このような場合の対策に有効です。
ヒートトレース施工
ヒートトレース施工は、導圧管にヒートトレース施工し、外気温に関わらず液体の固化を防いだり、強制的に気化させる方式です。
常温で固化してしまう液体の液面測定で、外気温によらず液体温度を一定に保ちたい場合に有効です。また、ダイアフラム式の使用下限温度を下回る極低温サービスに液面測定を行う際でも使用される方式です。
非接触式の採用
前項までの方式が採用できず、液面計のセンサーを直接接触させたくない場合は非接触式の採用を検討する必要があります。
代表的な非接触式の液面計としては電波式や放射線式などの様々なものがあります。
詳しくはこちらの記事で解説していますので、ご一読下さい。
まとめ
今回の記事では液体の性状に応じた液面計のタイプ選定について解説しました。
タンクやドラムの液面計測を行う場合、流体の性状をよく把握しておくことは非常に重要です。特にスラリー流体や固化しやすい流体を扱う場合は、感圧部で閉塞を起こし、うまく計測できなくなる、などのトラブルが発生しやすいため、特に重要です。
液面計のタイプ選定にあたっては、流体の性状に応じて、それに適するタイプを選定しなければなりません。
この記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。