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【回転機】真空ポンプの分類・特徴と選定方法を体系的に解説|用途に合わせた排気系設計

今回は真空ポンプの分類、選定方法について解説します。

真空ポンプとは、ある容器中の気体を排気する機能をもつ機器をいい、JIS規格(JIS Z 8126)では「真空を作り、又は維持するための機器」と定義されています。

大気圧から超高真空領域まで多種多様な形式のポンプが存在しますが、現在のところ、1種類の真空ポンプで超高真空領域から大気圧まで全領域をカバー(圧縮)できるものはありません

そのため、実際の現場では用途に合わせて複数の真空ポンプを組み合わせた『排気系』として設計し、使用することが一般的です。

真空ポンプ選定の絶対原則

真空ポンプの選定は、まず『どの圧力領域で・どの気体を・どれだけの速度で排気するか』を正確に把握し、それに適したポンプ(排気系)を選ぶことに尽きます。

本記事では、真空ポンプの分類と作動圧力範囲、主要な各種ポンプの動作原理を整理し、排気系の具体的な設計・選定法について体系的に解説します。

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真空ポンプの作動圧力範囲と圧力領域

真空ポンプの使用可能な圧力範囲は、大気圧から超高真空領域まで広く、ポンプの形式ごとに得意な領域が異なります。

圧力領域は次のように区分されます。

圧力領域 圧力範囲(目安)
低真空 大気圧 〜 10² Pa 程度
中真空 10² 〜 10⁻¹ Pa 程度
高真空 10⁻¹ 〜 10⁻⁵ Pa 程度
超高真空 10⁻⁵ 〜 10⁻⁸ Pa 程度
極超高真空 10⁻⁸ Pa 以下

真空ポンプのタイプは大きく分けて以下のようなタイプがあり、それぞれに対応する作動圧力範囲があります。

主な真空ポンプ

・油回転真空ポンプ
・液封式真空ポンプ
・ルーツ真空ポンプ
・ターボ分子ポンプ
・蒸気エジェクタ
・油拡散ポンプ
・クライオポンプ

ポンプ おおよその作動圧力範囲
油回転真空ポンプ 大気圧〜中真空
液封式真空ポンプ 大気圧〜中真空(低真空中心)
ルーツ真空ポンプ 中真空〜高真空(要 補助ポンプ)
ターボ分子ポンプ 高真空〜超高真空(要 補助ポンプ)
蒸気エジェクタ 低真空〜中真空
油拡散ポンプ 高真空〜超高真空
クライオポンプ 高真空〜超高真空

次項からそれぞれの真空ポンプの特徴について解説します。

真空ポンプの種類と特徴

油回転真空ポンプ

油回転真空ポンプは、ポンプ内部に専用の真空ポンプ油を供給し、ロータの回転によって気体を吸入・圧縮して大気圧まで排気する容積移送式の真空ポンプです。

この油が、金属同士のわずかなすき間のシールと、高速で擦れ合う摺動部の潤滑という極めて重要な役割を果たしており、これによって高い排気性能と耐久性を実現しています。

油回転真空ポンプの主な特徴と運用上のポイント
  • 広範な用途: そのタフさと扱いやすさから、単独での使用はもちろん、ターボ分子ポンプや油拡散ポンプなどの高真空・超高真空ポンプが作動する圧力まで容器内をあらかじめ減圧する粗引きポンプ、あるいはそれらの排気側に接続する補助ポンプとして、真空システムには欠かせない存在です。

  • 最も普及している真空ポンプ: 他の形式のポンプと比較してコンパクトで排気効率が良く、サイズも小さく抑えられています。据付や運転操作が容易で、かつ安価に導入できるため、現在、研究室から工業プラントまで最も広く使用されている真空ポンプです。

  • 構造による分類: 内部構造の違いにより、主に以下の3つの形式があります。用途や排気速度に応じて使い分けられます。

    • 回転翼形(べーン形): 小~中型で最も一般的。

    • カム形: 中~大型で堅牢。

    • 揺動ピストン形: 大型で大きな排気速度を持つ。

液封式真空ポンプ

液封式真空ポンプは、シリンダ内で数枚の羽根を持つロータを回転させ、内部の液体を利用して排気を行う容積移送式の真空ポンプです。

動作の仕組み(液環の形成と容積変化)

シリンダ内にはあらかじめ適量の水などの液体が入れられています。ロータを高速で回転させると、遠心力によって液体がシリンダの内壁に押し付けられ、同心円状の液環が形成されます。

ロータはシリンダの中心から偏心して取り付けられているため、羽根車と液環の間にできる空間の容積が、回転とともに周期的に変化します。

この容積変化がピストン運動の役割を果たし、気体を吸入・圧縮して排気します。

液封式真空ポンプの主な特徴と運用上のポイント
  • 大気圧まで自力で圧縮可能: 油回転真空ポンプと同様に、単独で真空中から大気圧まで圧縮して排気することができます。もちろん、到達圧力をより低くするために、他のポンプと直列に組み合わせた排気システムの補助ポンプとしても広く使用されます。

  • ダストや蒸気の吸引に非常に強い: 内部で液体(主に水)が激しく循環しているため、気体と一緒に少量のダストや反応生成物を吸引しても、液と一緒に洗い流されてしまいます。また、吸引した蒸気は液環によって冷却・凝縮されるため、排気能力の低下を抑えつつ処理できます。そのため堅牢さが要求される過酷なプロセスにおいて不動の地位を築いています。

  • 大きな動力を必要とする: 羽根車が常に液体の抵抗を受けながら回転するため、同等排気量の油回転真空ポンプなどと比較すると、運転に比較的大きな動力を必要とします。

ルーツ真空ポンプ

ルーツ真空ポンプは、2個のまゆ型ロータが微小なすき間を保ちながら互いに反対方向へ回転し、容積変化によって気体を送り出す容積移送式の真空ポンプです。

ルーツ真空ポンプの主な特徴と運用上のポイント
  • 補助ポンプとの組み合わせが前提: 構造上、ポンプ単体では真空中から大気圧まで圧縮排気することができません。そのため、油回転真空ポンプや液封式真空ポンプなどと直列に組み合わせて運用します。

  • 高速回転・コンパクトで大排気量: 対称形状のまゆ型ロータは回転バランスを非常に取りやすいため、高速回転が可能です。本体サイズのわりに大きな排気量を得られるコンパクトな設計が強みです。

  • 摺動抵抗がなく高効率: ロータ同士、およびロータとケーシングは互いに非接触で回転します。接触部による摺動抵抗がないため、動力を効率よく排気能力へ変換でき、機械的な摩耗も抑えられます。

蒸気エジェクタ

蒸気エジェクタは、高圧の水蒸気を高速で噴出させ、その流体エネルギーによって周囲の気体を強力に引き込み圧縮・排気する真空ポンプです。

駆動蒸気がノズルの喉部(スロート)を通過する際に音速へ達し、続く広がり部で超音速流となってディフューザへと噴出します。

この超音速流が吸入室内のガスを巻き込みながらディフューザへ進み、喉部通過時に衝撃波を生じて広がり部で亜音速へと減速。この過程で運動エネルギーが圧力エネルギーへと変換され、急激に圧力が上昇(圧縮)して排出されます。

蒸気エジェクタの主な特徴と運用上のポイント
  • 可動部ゼロによる抜群の堅牢性: 回転部や摺動部といった動く部品が一切ありません。構造が非常にシンプルで機械的トラブルがほぼ発生しないため、ダストや腐食性ガス、可燃性ガスが混入する過酷な環境でも安定して稼働します。化学プラントや冶金業界で非常に広く採用されている理由です。

  • 多段配置による作動圧力範囲の拡大: 段数を増やすことで、大気圧付近から中真空領域まで幅広い圧力帯に対応可能です。

  • コンデンサ併用による負荷軽減と使用限界: 段間にコンデンサを設置して駆動蒸気を冷却水で凝縮させることで、後段へ送るガス量を減らし効率を高めます。ただし、システム内の圧力が冷却水の蒸気圧に近い領域まで下がるとコンデンサが使えなくなり、前段の駆動蒸気がそのまま次段の負担となる点に注意が必要です。

  • エネルギー効率面での考慮: 機械式ポンプと比較するとエネルギー効率はやや劣ります。そのため、プラント内に余剰蒸気や安価なユーティリティ蒸気が存在する環境で大きな経済的メリットを発揮します。

油拡散ポンプ

 

油拡散ポンプは、加熱・蒸発させた動作油の高速ジェット(油蒸気)を利用して気体分子を巻き込み、下流へと押し出す流体作動式の真空ポンプです。

水冷されたケーシングの内部に3〜4段の傘型ノズルが配置されており、下部のボイラーで油をヒーターにより約200℃まで加熱します。

蒸気圧30〜50Pa程度となった油蒸気が同心円筒状のチムニ内を上昇し、各ノズルから下向きに勢いよく噴射されることで、上部から入ってきた気体を巻き込んで下方へ排気する仕組みになっています。

油拡散ポンプの主な特徴と運用上のポイント
  • 優れたコストパフォーマンスと豊富なサイズ展開: 小型のものから超大型まで多様なサイズが製造されており、構造がシンプルで他の高真空ポンプに比べて比較的安価なため、工業用の高真空設備で非常に広く採用されています。

  • 補助ポンプとの組み合わせが必須: 自力で大気圧まで圧縮排気することはできません。そのため、常に排気側に油回転ポンプなどの補助ポンプを接続して運用する必要があります。

  • 起動までに一定の時間が必要(ウォームアップ): ボイラーで油を約200℃まで加熱して油蒸気流を安定させる必要があるため、起動から定常運転に入るまでに数十分以上の準備時間を要します。

  • クリーン真空にはコールドトラップが不可欠: 作動油を使用する構造上、吸気側へのわずかな油蒸気の逆流が避けられません。コンタミネーションを嫌うクリーンな真空プロセスで使用する場合は、油蒸気を冷却して捕獲するコールドトラップを併設する必要があります。

ターボ分子ポンプ

ターボ分子ポンプは、超高速で回転するタービンブレードによって気体分子を物理的に弾き飛ばし、排気を行う機械式の真空ポンプです。

内部には、傾斜した細かいスリットを持つ円板状の動翼と、逆方向に傾斜したスリットを持つ静翼が交互に何段も配置されています。これらが連動することで、気体分子を軸方向へと効率よく送り出します。

ターボ分子ポンプの主な特徴と運用上のポイント
  • 分子流領域での高速排気:

    動翼の外周スピードは約300m/s(ほぼ音速)にも達し、気体分子同士があまり衝突しない分子流領域において高い排気性能を発揮します。

  • 補助ポンプとの組み合わせが必須:大気圧まで自力で圧縮することはできません。また、圧力が0.1Pa程度より高くなると排気速度が急激に低下してしまうため、必ず後段に油回転ポンプなどの補助ポンプを設置する必要があります。

    (※近年では、より高い圧力域から作動できるようにネジポンプなどと一体化した複合分子ポンプも作られていますが、やはり大気圧までの圧縮には補助ポンプが必要です。)

  • コールドトラップ不要でクリーンな真空:油の蒸気などの分子量の大きい気体に対して非常に高い圧縮比を持つため、オイルの逆流を防ぐコールドトラップを取り付けなくても、極めてクリーンな真空が得られます。

  • 磁気軸受による完全オイルフリー化:最近では、軸受に油やグリスを一切使用せず、磁力でロータを浮上させて回転させる磁気軸受を採用したモデルが主流となっており、より一層クリーンな環境構築に貢献しています。

クライオポンプ

クライオポンプは、極低温に冷却したパネルに気体分子を「凍らせて(凝縮・吸着させて)」捕獲する、気体ため込み式の真空ポンプです。

気体の種類によって凝縮する温度(蒸気圧)が大きく異なる性質を利用し、ポンプ内部の温度帯を分けることで、多様なガスを効率よく排気する仕組みになっています。

気体を捕獲する3つのステージ
  • ファーストステージ(約70〜80K): 外部からの熱輻射を防ぐ役割を持ち、主に水分(H₂O)や二酸化炭素(CO₂)をここで凝縮させます。

  • セカンドステージ(約15〜20K): 内筒上部に位置し、より低い温度が必要なメタン(CH₄)、酸素(O₂)、窒素(N₂)、アルゴン(Ar)などを付着させます。

  • チャコールパネル(約15〜20K): 極低温でも凍結しにくいヘリウム(He)や水素(H₂)は、このパネルに配置された極低温の活性炭(チャコール)に吸着させて捕獲します。

クライオポンプの特徴と運用の注意点
  • 圧倒的にクリーンな真空: 油を一切使用しない完全なオイルフリー構造であるため、コンタミネーションを嫌うプロセスにおいて、極めてクリーンな高真空・超高真空環境を構築できます。また、排気速度が非常に大きいことも大きな強みです。

  • 定期的な「再生」が必要: 気体を外部へ排出するのではなく「内部にため込む」原理であるため、一定量以上の気体を吸着すると排気速度が低下してしまいます。そのため、定期的にパネルの温度を上げて捕獲したガスを放出し、ポンプの能力を回復させる再生工程が不可欠になります。

排気系の設計法・選定法

排気系を選定するためには、以下のように3つの項目に分類して考える必要があります。

処理時間に対する圧力変化を見ると、初期排気領域・ガス排気領域・最終排気領域に分かれる。

項目 考慮すべき事項
初期排気領域 容器の体積(V)、必要とする圧力までに達する時間(t)
発生ガス排気領域 吸入圧力(Ps)、ガス量(Qs・Gs)、温度(T)、種類(腐食性・爆発性・凝縮性・溶解性・塵埃の有無)
最終到達領域 最終的に必要とする圧力(Pf)

装置の用途によっては、上記項目のうち1つまたは2つの条件だけでよい場合があり、3つの条件とも必要な場合もあります。

容器の大きさは数リットルから5000m³程度まで、排気速度も数リットル/minから数10万m³/hの場合もあり、1バッチの時間も数秒から50時間程度まであります。

その他、必要な項目は次のとおりです。

排気系選定に必要なその他の項目

リーク量(Ql)、アウトガス量(Qa)、発生ガス量(Qw)、吸入配管のコンダクタンス(C)および容積(v)、真空のクリーンさ、

圧力コントロールの必要性、運転方法(連続・バッチ・手動・自動)、ユーティリティ(電源・冷却水・蒸気・圧縮空気・N₂等)、据付場所、重量、騒音、振動 等

真空ポンプの排気時間についてはこちらの記事でも解説しています。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 技術情報を200記事以上執筆、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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