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【計装】調節弁データシート作成方法の解説

今回は調節弁のデータシート作成方法について解説します。

調節弁の設計、データシート作成は、プラントの基本設計条項(Design Basis)プロジェクトスペックの情報、プロセス情報(PFD、マテリアルバランスP&IDのなど)、配管情報(配管仕様書など)を基に行われます。

データシート作成者は常にこれらの最新情報の入手に務める必要があります。逆にプロセス設計者やプロジェクト担当者は関係部門に対して常に最新情報を共有しておくことが重要となります。特に基本設計条項やプロセス情報が変更されると影響が大きいので、速やかに関係部署へ周知しなければなりません。

次項からデータシート作成手順について解説します。

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データシートの作成方法

調節弁のデータシートについて、記載すべき具体的項目を解説します。

基本事項

まずは基本事項です。これはプラント建設プロジェクトにおける基本設計情報プロジェクトスペックで規定される項目です。

基本事項

・Tag 番号
・P&ID 番号/配管番号
・サイジング方法
・電源、駆動源
・防爆構造
・塗装
・チュービング仕様
・騒音
・大気温度
・その他

基本情報は上記の通りですが、記入に迷いそうな項目について解説します。

Tag No.

調節弁によらず計器や機器のTag No,の決定方法はそれ専用のプロジェクトスペックが作成されるので、その基準に従って決定、記載します。

サイジング方法

Cv値計算規格や、計算Cv値と定格Cv値の基本比率を規定します。

電源、駆動源

電動機電源、電磁弁電験、空気源などのユーティリティ情報を規定します。

駆動源が空気の場合は最低操作駆動圧力を記載しておきます。

また、これらの接続仕様についても規定します。

防爆構造

防爆規格、等級を規定します。

防爆についてはこちらの記事を参照下さい。

塗装

塗装色や塗装仕様を規定します。塗装についてもプロジェクトスペックに従います。

チュービング仕様

ポジショナーなどに接続する空気配管用のチューブ仕様を規定します。

騒音

許容騒音値を規定します。こちらもプロジェクトスペックに従います。

大気温度

大気温度を規定します。プラントの建設場所によっては寒さが厳しい場所や暑さが厳しい場所もあるので、調節弁仕様に影響します。

大気温度もプロジェクトスペックに従います。

その他

適用法規、規格、単位系、検査基準図書、その他特記事項を記載します。

プロセス条件

必要なプロセス条件は以下の通りです。基本的にはプロセス情報を基に記入する項目です。

プロセス条件

・流体名称
・流量
・入口圧力、出口圧力
・入口温度
設計温度設計圧力
・流体/流体の相(ガス、液、蒸気)
・分子量
・比重
・粘度
・比熱
・飽和蒸気圧(液体のみ)
・その他

基本的にはP&ID情報、プロセス情報(PFDやマテリアルバランス)があれば記入可能ですが、もし移動物性、熱物性がマテリアルバランスの中で表記されていなければ、プロセスシミュレーションを用いて物性値を計算して記入します。

また、記入に迷いような項目について解説していきます。

流量

流量はそのプラントの最小、最大運転ロードにおける流量を記載します。

通常はターンダウンは60%ですので、最小運転ロードはnormal値(PFD上の流量)の60%の数値を記載します。

最大運転ロードはnormal値の110%とすることが多いです。

また、流量が異なる様々な運転モードがあり、それに応じたPFDが作成されている場合は、上記の計算で最も小さくなる数値をminに、最も大きくなる数値をmaxに記入します。

その他に特別な運転モードがある場合はその時の流量を記載します。

一方、調節弁の運転範囲はレンジアビリティ以内ですので、min流量とmax流量とであまりにも差が大きいと対応できる調節弁が無くなってしまうので、配管を分割して調節弁を分ける、といった検討が必要になります。

各調節弁のレンジアビリティについてはこちらの記事を参照下さい。

入口圧力、出口圧力

最小運転ロード、通常運転ロード(100%)、最大運転ロードにおける入口、出口圧力を記載します。

注意点としては、それぞれの運転ロードにおいて、圧力バランスが変わるため、入口、出口圧力が異なることです。それぞれの圧力バランスを計算して記載するようにして下さい。

その他

プロセス流体の腐食性の有無や禁油、禁水要求など、特殊な要求次項があればこの項目で記載します。

配管情報

調節弁のデータシート作成に必要な配管情報は以下の通りです。

配管情報

・配管サイズ
・スケジュール(厚み)
・保温情報

ボディ・ボンネット情報

バルブメーカーによって決定される内容も多いですが、一部は購入者側が規定する項目があります。

購入者側で規定する項目は以下の通りです。

ボディ・ボンネット情報

・ボディ形式
・接続方式
・仕上げ
・注油器、遮断弁要否
・潤滑油要否

付属品情報

調節弁の付属品の仕様に関する項目です。

付属品情報

危険場所情報
・電磁弁
・E/P変換器

駆動部情報

調節弁の駆動部の仕様に関する項目です。

付属品情報

・目的
・Fail action
・駆動用空気(油)供給圧
・ハンドホイール
・ロックアップバルブ要否

記入する際に迷いそうな項目について、解説します。

目的

その調節弁がOn-Offバルブなのか、連続調整用なのか明記します。

Fail action

調節弁の駆動源が消失した時のバルブの操作方向について記載します。

FC(Fail Close)、FO(Fail Open)、FL(Fail Lock)などがあり、プラントが安全な方向となるように、操作方向を決定します。

ハンドホイール

現場の手動操作でバルブの駆動部を調整することが想定される場合は、ハンドホイールが必要となるので、この項目で記載します。

その他

その他の仕様に関する項目です。

付その他

・ポジショナ要否
・リミットスイッチ要否
・リーククラス(弁座漏れ量)
・流量特性

リーククラス

リーククラスはI~Ⅵの6段階で指定します。数字が大きいほど漏れの量が小さいバルブであることを意味します。リーククラスについてはこちらの記事を参照ください。

まとめ

今回は調節弁のデータシート作成方法について解説しました。

調節弁の設計、データシート作成は、プラントの基本設計条項(Design Basis)プロジェクトスペックの情報、プロセス情報(PFD、マテリアルバランスP&IDのなど)、配管情報(配管仕様書など)を基に行われます。

データシート作成者は常にこれらの最新情報の入手に務める必要があります。逆にプロセス設計者やプロジェクト担当者は関係部門に対して常に最新情報を共有しておくことが重要となります。特に基本設計条項やプロセス情報が変更されると影響が大きいので、速やかに関係部署へ周知しなければなりません。

この記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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