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【配管】エロージョン速度とは?エロージョンを引き起こす配管流速について解説

今回の記事ではエロージョンの原因となり得る最大の配管流速(エロージョン速度)について解説します。

エロージョンは金属材料への機械的な摩耗・侵食のことを指しますが、プラントにおいては配管のエルボにおいて発生することが多いです。特に液体(特にボイラ給水などの高温の水)配管のエルボで発生しやすいと言われています。

出典:Research Gate

エロージョンは取り扱う流体が侵食性、腐食性を持たなくても発生します。そのため、どのような流体でも発生するリスクはあります。

エロージョンを厳密に解析をするためには、CFD解析などの流体解析が必要となります。しかし、プラントの基本設計段階で配管のサイジングを行う際、そのような流体解析を行ってエロージョン発生有無を確認しながら設計するのは現実的ではありません。

現実的なエロージョン発生有無の確認方法として、サイジングした配管径における流速が、エロージョン速度(エロージョンの原因となり得る最大の配管流速)を超えるかどうかで判定することが挙げられます。

配管流速は配管の圧力計算を行う際にも計算されるので、エロージョン速度の計算は手間ではありません。

エロージョン速度(Erosion Velocity)はAPI RP 14E(アメリカ石油学会規格)でも規定されている配管流速です。次項からこの規格に基づいたエロージョン速度の計算方法について解説します。

補足:API RP 14Eで規定されているエロージョン速度はやや保守的(エロージョン速度の閾値が小さい)とされています。実際の業務で計算される場合、この点にご留意下さい。

液体配管・二相流配管

水などの液体を取り扱う配管やスチームコンデンセートなどの二相流を取り扱う配管では、次の計算式でエロージョン速度を計算します。

<エロージョン速度の計算>

$$V_e=\frac{C}{\sqrt{ρ}}$$

Ve:エロージョン速度 [m/s]
ρ:密度 [kg/m3]
C:定数

配管のサイジングで求めた配管流速が、このエロージョン速度を上回っていなければ、エロージョンが発生するリスクは小さい(エロージョンを防止可能)と言われています。

エロージョン速度を計算する上で重要なパラメータとなるのが経験的定数(Empirical Constant)である「C」です。

「C」は取り扱う流体の性状や運転目的によって異なる値を使用します。

C 流体性状、運転目的
180~240 ・ 固体のないクリーンな流体
・ インヒビター(腐食抑制剤)などが使用されている配管
・ 連続運転
300 ・ 固体のないクリーンな流体
・ インヒビター(腐食抑制剤)などが使用されている配管
・ 間欠運転
120 ・ 固体を含む流体
・ 腐食性流体

計算例

計算例として常温(30℃)、大気圧で連続運転している水配管のエロージョン速度を計算します。

前提として、水は十分クリーンであると考えます。

密度 ρ:996 kg/m3
定数 C:240

$$V_e=\frac{C}{\sqrt{ρ}}=\frac{240}{\sqrt{996}}=7.6$$

となり、この水配管のエロージョン速度は7.6m/sと算出されました。つまり、配管流速が7.6m/s以下であればエロージョンが発生するリスクが小さいと言えます。

なお、C=180を用いるとエロージョンは約5.8m/sとなります。

ガス配管・蒸気配管

ガス配管、蒸気配管については、「ρv^2」の値で評価することが多いです。

前項で解説した算出式と形は異なるように見えますが、

$$V_e=\frac{C}{\sqrt{ρ}}$$

を式変形して、

$$C^2=ρ{V_e}^2$$

とすれば本質的には同じ意味であることが分かります。

ρv^2についても、密度と配管流速さえ求まれば簡単に計算するため、配管サイジングの際にρv^2を計算することは手間ではありません。

ガス・蒸気配管の「ρv^2」の一例としては次の表に挙げているものがあります。

圧力域 ρv^2 [kg/(m・s^2)]
低圧(~5 MPa程度) 6000~7500 (連続運転)
10000(間欠運転)
中圧(5~8 MPa程度) 10000(連続運転)
15000(間欠運転)
高圧(8 ~ 12 MPa程度) 15000(連続運転)
25000(間欠運転)
超高圧(12 MPa~程度) 20000(連続運転)
25000(間欠運転)

※蒸気配管はエロージョンのリスクが高いことから、最小のpv^2は15000とする

 

この表より、配管サイジングで求めた配管流速から計算される「ρv^2」が表中の数字を上回っていなければ、エロージョンのリスクは小さいとされています。

計算例

計算例として標準状態で間欠運転する空気配管の「ρv^2」を計算します。

密度 ρ:1.29 kg/m3
配管流速v:10 m/s

$$ρv^2=1.29×10^2=129$$

となり、この空気配管の「ρv^2」は129 kg/(m・s^2)と算出されました。上表からこの条件における「ρv^2」の閾値は10000 kg/(m・s^2)なので、エロージョンのリスクは極めて小さいと言えます。

逆に「ρv^2」の値からエロージョン速度を計算すると、

$$ρ{V_e}^2=1.29×{V_e}^2=10000$$

より、

$$V_e=\sqrt{\frac{10000}{1.29}}=88$$

となり、エロージョン速度は約88m/sとなります。

補足:この計算例ではエロージョン速度とサイジングで求めた配管流速との差異が多くなりましたが、高圧で密度の高いガスや蒸気の場合では、ρv^2は無視できない値となることもあるので要注意です。

まとめ

今回の記事ではエロージョンの原因となり得る最大の配管流速(エロージョン速度)について解説します。

プラントの基本設計段階で配管のサイジングを行う際、CFD解析のような流体解析を行い、エロージョン発生有無を確認しながら設計するのは現実的ではありません。

現実的な確認方法として、サイジングした配管径における流速が、エロージョン速度(エロージョンの原因となり得る最大の配管流速)を超えるかどうかで判定することが挙げられます。

配管流速は配管の圧力計算を行う際にも計算されるので、エロージョン速度の計算は手間ではありません。

この記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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