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【計装】調節弁の主な付属品(アクセサリ)の種類と特徴について解説

今回の記事では調節弁の主な付属品(アクセサリ)について解説します。

調節弁の設計では、バルブのタイプ、材質、サイズの他に、設置個所の流体や目的に応じて付属品(アクセサリ)の要否についても検討します。

付属品の要否は計装設計部門と協議して決定することもありますが、P&ID作成時に調節弁の仕様をある程度決めておく必要があるため、計装エンジニアだけでなく、P&IDを作成するプロセスエンジニアも内容を理解しておく必要があります。

主な付属品は次の通りです。

調節弁の主な付属品(アクセサリ)

・電磁弁(ソレノイドバルブ)
・ポジショナ
・ハンドホイール
・リミットスイッチ
・エアセット
・ボリュームタンク
・ブースターリレー
・ロックアップ弁
・スピードコントローラー
・開度制限用ストッパー

上記の付属品の中で、電磁弁、ハンドホイール、リミットスイッチについてはP&ID上でも表記することが多いです。

次項からそれぞの付属品について解説します。

電磁弁(ソレノイドバルブ)

電磁弁は、ソレノイドバルブとも呼ばれ、電磁石(ソレノイド)の作用で開閉を行うバルブです。直接プロセス配管に取り付け操作させるタイプ(直動式)も存在しますが、ここでは調節弁の付属品として使用されるアクチュエータ駆動制御用のものについて解説します。

プラントに設置される調節弁はは空気圧で本体の開度調整を行うタイプが一般的なので、電磁弁はその駆動用空気の供給、遮断を切り替える目的で設置されます。

電磁弁は瞬時に開、閉を切り替えることができるため、プラントでは主に緊急遮断弁の付属品として使用されることが多いです。通常は一つの調節弁につき一つの電磁弁を設置しますが、調節弁の信頼性を高めたい場合は二つの電磁弁を設置(ダブルソレノイド)することもあります。

ソレノイドはコイルとブランジャ(コア)から構成されていて、励磁型、非励磁型の2 つのタイプに分けられます。

・励磁型:通電時(電圧を印加した時)にバルブが要求する方向(流路)に動作させる
・非励磁型:非通電時(電圧印加を解いた時)にバルブが要求する方向(流路)に動作させる

電磁弁のタイプ、ポート数、設置数は、調節弁のアクチュエータ型式(単作動か複作動か)やフェイルポジションなどから決定されますが、計装設計部門やメーカーと協議して決めることが多いです。

ポジショナ

ポジショナは、制御装置からの入力信号に応じて調節弁への開度出力を行い、その弁開度を検出して制御装置へのフィードバックを行うコントローラのことです。

そのため、運転パラメータ(温度、圧力、流量、液面など)に応じて弁開度を調整する空気式の調節弁には原則設置されますが、on-off動作のみを行う遮断弁には不要です。

ポジショナの種類は、入力信号が電気信号(DC 4-20mA)か空気信号(20-100kPa)かによって、電空(I/P)ポジショナと空空(P/P)ポジショナ等に大別されます。
※電空ポジショナは、補助空気源(計装空気)を利用して、操作信号として与えられるDC4~20mAを空気圧に変換して調節弁を所定開度に操作するタイプ

一般的に、ポジショナは以下のケースで設置されますが、後から追加するこのは大変なので、要否については計装設計部門と協議して決定します。

ポジショナを設置するケース

・弁前後の差圧が大きい場合
・応答遅れが問題となる場合
・制御精度が要求される場合
・複数の調節弁を1 つの信号で操作する場合
・標準スプリングと異なるスプリングレンジを使用する場合
流量特性の改善を図りたい場合

ハンドホイール

調節弁にハイドホイールを設置することで、現場において手動で調節弁の開閉を行うことができます。

一般に、ハンドホイールを設置するケースは以下の通りです。

ハンドホイールを設置するケース

・何らかの理由で調節弁のバイパス弁が設置できず、手動で調節弁の開度調整を行いたい場合
・試運転時や空気源、電源喪失時に、手動で調節弁の開度調整を行いたい場合
・設計レビューやHAZOP等で調節弁の手動操作が必要と判断された場合

ハンドホイールにはトップハンドルやサイドハンドルタイプがあり、トップハンドルの場合は開度制限ストッパとして用いられることもあります。

ただし、ハンドホイールは細かい開度調整ができないため、調節弁バイパスを削減する目的で設置するのは不適です。

また、ハンドホイールを設置することでインターロック(弁の緊急遮断など)が効かなくなるため、インターロックを設ける場合はハンドホイールを設置するのは避けるべきです。

リミットスイッチ

リミットスイッチは、バルブの開度の検出(全開/全閉など)に使用される付属品で、原則としてプラントの緊急遮断弁(OSBLやユニットをまたぐ配管や、危険物タンク、ドラムの縁切り用の遮断弁)に設置されます。また、開閉状態の表示用として、手動弁に対してもリミットスイッチを取り付けることもあります。

リミットスイッチの種類には、、機械的に動作するレバー型のものや間接的(非接触)に検知する近接スイッチ等があります。

設置する場合の留意点としては、リミットスイッチはその機能に応じて調節可能かつ独立したものとすることです。例えば、調節弁の「開」と「閉」を表示したい場合は、リミットは「開」と「閉」のそれぞれに別のスイッチを使用する必要があります。

そのため、調節弁や遮断弁の数が多いプラントでは、リミットスイッチの数も多くなり、コストアップの要因となるため、要否はよく検討する必要があります。

また、屋外の調節弁にリミットスイッチを設ける場合は、設置現場の気象条件に応じて、カバーを設けるなどの対策が必要になる場合もあります。

エアセット

出典:Upmation

エアセットは、計装空気を調節弁に供給するラインに取り付ける付属品です。

主に以下の部品から構成されます。

減圧弁(レギュレータ) :ポジショナ・シリンダ他への空気圧力を設定
エアフィルター :計装空気の清浄化

エアセットは、原則としてそれぞれの調節弁に設置するように指定しますが、複数の調節弁に対し共用で設けることも可能です。どのように設置するかは、計装設計部門と協議して決定します。

ボリュームタンク

ボリュームチャンバーとも呼ばれ、計装空気のバッファータンクのような役割を担います。

これを設けることで、計装空気源が喪失しても調節弁のバルブ開度調整が可能で、遮断弁の開閉作動時間の短縮のためにも有効です。

タンクの容量は調節弁の想定操作回数や弁のストローク回数によって変わるため、どの程度見込んでおくかはプロジェクトの初期に計装設計部門と協議して決定する必要があります。

国内のプラントでは、ボリュームタンクの容量が大きくなると第二種圧力容器に該当してしまうことがあります。その場合は、安全弁圧力計の設置が必要となり、さらに労働安全衛生法等に従い申請・検査が必要となるので注意が必要です。

ボリュームタンクの手配所掌は、配管設計部門か計装設計部門のどちらかとなりますが、配管設計部門所掌の場合は必ずP&ID に記載するようにします。

一方、計装設計部門の所掌とされている場合はP&IDの記載を省略することがありますが、その場合は配管ルーティングとボリュームタンクの設置位置が干渉しないように注意しておく必要があります。

調節弁のアクチュエータ内のシリンダに小さなタンクを取り付けてあるタイプもあり、これもボリュームタンクと呼ばれています。このタイプにするか、上記のように独立設置とするかによって設置位置の調整が必要なので、関係部門とよく協議して決定します。

ブースターリレー

ブースタリレーは、大口径配管の調節弁でアクチュエータが大型、大容量の供給空気が必要な場合や、高速での動作(ストローク)が必要な場合に、計装空気の供給量を増幅させるために使用されます。

ブースターリレーを設置するケース

・大口径の調節弁
・高速動作が必要な調節弁
アンチサージ弁
・計装空気源(ポジショナの操作出力信号)から操作部(バルブ)までの距離が長い場合

ブースタリレーはできるだけアクチュエータ近くに設置する望ましいです。

ロックアップ弁

ロックアップ弁はアクチュエータの信号空気ラインに設けられ、計装空気喪失時にアクチュエータ内の空気圧を自動的に維持し、供給空気源が正常状態に復帰するまで弁開度をそのときの位置に保持したい場合に使用されます。
※P&ID上ではFL(Fail Lock)と記載

計装空気圧力が回復すると通常の制御状態に復帰するようになっており、ブースタリレーと同様、ロックアップ弁はアクチュエータの近くに設置する必要があります。

スピードコントローラー

スピードコントローラー(スピコン)はバルブの開閉時間を調整するための付属品で、あえて開閉時間を遅くしてウォーターハンマーを防止する目的に設置されることが多いです。

スピードコントローラーの要否はプロセス設計部門で検討、 指定する必要がありますが、コストアップの要因にもなるので要否は都度検討して決定します。

開度制限用ストッパー

調節弁に対し、機械的なリミットを設けて最低開度、最高開度を制限(全開、全閉にならないようにする)するための機構が開度制限用ストッパーです。

対象の調節弁が何らかの理由で全開、全閉になってしまうとプラントの運転、安全面に多大な影響を与えると判断される場合に設置されることが多いです。

その他

弾性シート材料(エラストマーなど)を使用するバルブには、静電気防止装置を取り付けるよう要求されることがあります。(API 6D:Specification for Pipeline Valves)

また、高差圧のサービスに使用される低騒音弁など、流体中のゴミが噛み込む恐れがある調節弁に対しては調節弁の上流側にストレーナーやフィルターを設置すること検討する必要があります。

  • この記事を書いた人

Toshi

プラントエンジニア/ 技術ブログでプラントエンジニアリング業務に役立つ内容を発信中 / 現在160記事、月7万PV達成 / 得意分野はプロセスエンジニアリング / 化学メーカーからエンジニアリング会社に転職 / 旧帝大化学工学専攻卒 / 海外化学プラント設計、試運転経験有。 保有資格:危険物取扱者(甲種),高圧ガス製造保安責任者(甲種化学),エネルギー管理士(熱)

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