今回の記事では安全弁と逃し弁の違いについて解説します。
プラントを保護する代表的な安全装置の一つとして「安全弁」が良く知られていますが、時折「逃し弁(リリーフ弁)」という記載で表現されることもあります。
「安全弁(Pressure Safety Valve)」と「逃し弁/リリーフ弁(Pressure Relief Valve)」とでは系内の圧力を開放するという本質的な目的は同じなので、両方を統一して「安全弁」と表現されることが多いものの、メーカーやエンジニアリング会社の思想によって使い分けられることもあり、P&ID上でも異なるシンボルやタグNo.が与えられることもあります。
例えばJISでは以下のように区別して表記されています。
JISにおける安全弁と逃し弁
・ JIS B 8210 安全弁
・ JIS B 8414 温水機器用逃し弁
使い分ける場合は、安全弁と逃し弁の設置目的やバルブの動作などによって区別されますが、具体的に何が異なるのか、次項から「安全弁」と「逃し弁」の違いについて解説していきます。
安全弁の作動原理や吹き出し圧力についてはこちらの記事を参照下さい。
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設置目的
安全弁
安全弁の設置目的は「圧力上昇による機器破損、人的・環境被害を防ぐこと」です。
つまり、プラントで発生し得る事故を防ぐための安全装置(最後の砦)が安全弁です。特に、ガスのような圧縮性流体は、過加圧により機器が破損した場合に爆発を起こし、人的・環境被害が甚大になることから、このような流体を扱う機器・配管に設置する圧力開放装置は「安全弁」と呼ばれます。
基本的に、安全弁が作動する時はプラントの異常時なので、通常運転の範囲で作動することは想定されません。
安全弁の二次側は大気開放やフレアー設備に接続されることが多いです。
逃し弁
一方、逃し弁の設置目的は「系内の圧力を所定の範囲内に制限すること」です。
圧力上昇による事故・トラブルを防ぐという点では安全弁と同じですが、安全装置の役割というよりは、圧力を制御しプラント運転を安定的に行うことを主目的にしている点で違いがあります。
逃し弁は、主に液体(非圧縮性流体)に適用され、特にレシプロポンプ(往復式ポンプ)の吐出側に設置される圧力開放装置を「逃し弁」と呼ぶことが多いです。
主目的が圧力制御であることから、逃し弁については、プラントの通常運転中でも作動することは想定されます。往復動圧縮機のスピルバック制御に近いかもしれません。
また、レシプロポンプの逃し弁のように、逃し弁の二次側はプロセス配管に戻すことが多いです。
バルブ動作
安全弁
主目的は安全装置
であるため、系内を迅速に脱圧するために安全弁は設定圧力に達すると直ちに作動して全開になります。
※実際には設定圧力から(最大)吹き出し圧力に達するまで、圧力のAccumulationがあります。
また、そのようなバルブの特性上、吹き始めてから吹き止まるまでの圧力差(吹下がり/ブローダウン)も逃し弁と比べて大きくなります。
逃し弁
主目的は圧力制御
であるため、逃し弁は設定圧力に達しても直ちに全開にはならず、圧力の増加に応じて開度が増加します。(動作は調節弁に近いイメージです。)
吹き出しにより系内の圧力が低下する場合でも、上記と同様、圧力の低下に応じて開度が減少し、吹き止まり圧力に達した時点で全閉となります。
このようなバルブの特性から設定圧力と吹き止まり圧力との差(ブローダウン)は安全弁と比較して小さくなります。
また、逃し弁の種類によっては、運転員によりバルブ開度を調整する場合もあります。
まとめ
今回の記事では安全弁と逃し弁の違いについて解説しました。
「安全弁(Pressure Safety Valve)」と「逃し弁/リリーフ弁(Pressure Relief Valve)」とでは系内の圧力を開放するという本質的な目的は同じなので、両方を統一して「安全弁」と表現されることが多いものの、メーカーやエンジニアリング会社の思想によって使い分けられることもあります。
使い分ける場合は、設置目的やバルブの動作などによって区別され、P&IDでも異なるシンボルやタグNo.が使用されることがあります。
今回の記事が役に立てば幸いです。ではまた他の記事でお会いしましょう。